新型コロナ対策は学校によって異なるの?【令和2年度新任教師のリアル】

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これは、2020年4月に小学校の先生の道を歩き始めた、小学校教諭・優花と美咲(仮名)の対談連載です。ともに1997年生まれ、学生時代から仲がよい2人が、毎月の出来事を振り返ります。1月のテーマは「新型コロナ対策と子供たちの成長」。公立小学校に勤務する優花は冬休みを挟み、子供たちに生活習慣が定着していることを実感。美咲は私立小学校ならではの“受験”の影響について、感じるところがあったようです。

コロナ対策は学校によって異なるの?【令和2年度新任教師のリアル】のイメージイラスト
写真AC

●優花(ゆうか)……東京都出身。大学時代は道徳教育の研究に力を注ぐ。某県の教員採用試験に合格し、現在公立小学校3年生の担任。

●美咲(みさき)…… 東京都出身。楽器の演奏、運動や体操が好き。学芸会や運動会など大きな行事の運営を研究。私立小学校2年生の担任。

受験とコロナ禍の影響で校内にザワつきが…

―― 3学期が始まると同時に、二度目の緊急事態宣言が出されました。子供たちの様子はどうでしょうか。

優花・ 日々の生活に真剣に向き合っていると感じます。冬休みを挟んでから子供たちに接すると、とても成長していることがわかりました。例えば、発言をするときは、「はい」と返事をし、起立する、椅子を閉まってから意見を述べるなど、細かい生活習慣部分で、規律が身に付いていたと感じました。

礼儀正しさが、よい授業につながっていくと感じたようです。これは私が、1~2学期にしつこく言い続け、お互いの努力が実ったと感じます。

美咲・ それはとても大切。できる子とできない子がいると、教室の空気が乱れてしまう。ウチは新型コロナ対策に追われると同時に、受験が始まって、1日があっという間に終わってしまっていた。

優花・ 新型コロナ対策って、給食はだまって食べるとか、手洗い・消毒をするとか?

美咲・ ウチの学校は、保護者の意識が高いこともあり、鬼ごっこなど接触系の遊びは禁止、ボールなどの共有物も使用禁止、歌も歌えないし、おしゃべりも極力禁止など、かなり厳しい。

優花・ それは大変だね。休み時間に遊べないじゃない。ウチはそこまでではないかな。屋外でボールは使っているし、外遊びもしているよ。

美咲・ そうなんだ!? 学校によって違うんだね。かなり厳しく規制しているのと、進級にまつわるザワザワした気持ちが上級生から伝播するのが重なって、荒れる子供が出てきて、その対応に追われた1か月だったよ。

優花・ 友達とも遊べない、学校内に不安な気持ちが覆っているとなると、子供にはきついね。どんな状態になるの?

美咲・ まず、多いのは家で「学校が楽しくない」と言う子が増えて、保護者からの電話、問い合わせが増えたでしょ。あとは、落書きとか、掃除道具を破損したりする、意味のないいたずらが増えた。乾かしてあったモップや雑巾が、便器の中に入っていたり、トイレの床にホースで水が撒いてあったり……。

優花・ 子供たちがそんなことをしたら、心が折れそうになるよ。

美咲・ 私もかなり落ち込んだんだけど、先輩の先生たちが「コロナと受験が重なると、こうなるよね」と、励まし合った。対策のために、体を接触しない遊びを考えて、休み時間に率先して行っていたら、止まった。

優花・ 子供たちなりにフラストレーションが溜まっていたんだね。犯人探しのようなこともしたくないし 。

美咲・ そうなの。トイレの床に水を撒かせないように、バケツを撤去したり、先生が見回ったりして、ちょっとものものしい雰囲気になっていたのよね。そういうのも不安を誘発したようで、別のトラブルが起こったり。

優花・ 攻撃的になる子が増えそう。私立校は自分を律して、難関を突破した子がそろっている。そういう子たちの抱える悩みや問題も出てくるよね。

美咲・ 優秀だからこそ、大人にバレないよう、大事にならないような“ギリギリ”を攻めてくる(笑)。今は解決したから笑えるけれど、渦中は大変だった。

チーム力を実感したある出来事

優花・ そうだよね。受験はどうだったの?

美咲・ 私はノータッチだったけれど、おそらく今後は何らかの形で関わっていくと思う。今年は新型コロナ対策で、合格発表の掲示がなかったけれど、例年通りだったら、合格しなかった親子の様子を目の前で見ることになる。

これは、辛かっただろうな。まあ、どの学校に行っても、その子自身が、人生を開拓していくとわかっているんだけどね。

優花・ そうだね。今、私たちは低学年の担任だけれど、これから高学年の担任になる可能性もあるから。私の場合は、中学受験を目指す子を見守ることかな。

美咲・ 私の学校なんてさ、態度や成績次第では「中学校に進級できません」と伝えなくてはいけないんだよ! 毎年、何人かそういう子がいるから。私、できるかな……。

優花・ できるよ。それもその子の成長につながるんだから。人生はいいことばかりではないんだし。ところで、授業はどう?

美咲・ それどころではないくらい、トラブルが頻発していて、保護者対応と、子供たちのケアに追われてしまったよ。あるお母さんが、LINEグループで、「学校でいじめが起こっている」などと一斉送信してしまい、不安になった保護者が学校見学に来たこともあったの。

子供の話を真に受けて、事実無根なことも書かれてあって、納得いただくのが大変だった。これもすべて、学年の先生が一丸となって、対策をしていて、つくづくチームで仕事をしているんだと思ったよ。

教材研究がとても重要だということに気が付いた

優花・ チームか……私の学年もそう。同じ学年の先生の研究授業があったのね。算数だったんだけれど、学年全体が進みを合わせることがポイントだったから、それぞれが教材を研究し、ワークシートなどを考えて、ブラッシュアップしていったの。

すると、「なぜこのワークシートにこの項目が必要か」とか「掲示物の表現はこれで伝わるのか」など、普段考えないことが見えてきたんだよね。

美咲・ 思考が整理され、無駄がそぎ落とされていく。

優花・ まさにそうなの。その教材を使って、授業をしたら、子供たちが目を輝かせて、授業についてきてくれた。先生たちと子供たちがチームになって、授業を完成させたという実感があってよかったよ。

美咲・ トラブル対応に追われて、そんな時間さえなかった(笑)。でも一つの“課題”を乗り越えると、空気はすごくよくなるよね 。

優花・ そうだね。子供たちの規律についても、学校全体で取り組んだところがあって、それが身に付いたから、感染対策をしたうえで、同じエリアにある工場の社会科見学をしたり、「六年生を送る会」や卒業遠足を計画したりしている。保護者も協力してくれているみたい。

美咲・ 規制はあってもできることはたくさんあるね。私も何かをやってみようという気持ちになった。

優花・ あと、2か月間、どんな状況下でも、できることはたくさんあるから、私たちが率先して楽しんでいこうね!

取材・文/前川亜紀

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