コロナ禍での小五・小六「2学期の通信簿」所見作成のポイント

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新型コロナ禍という現状を踏まえながら、高学年にふさわしい2学期の通信簿の考え方やポイントを紹介します。

監修・執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育委員・西国際大学兼任講師・稲垣孝章

コロナ禍での小五・小六「2学期の通信簿」所見作成のポイント

2学期の所見作成上のポイント

新型コロナ禍における新たな学校生活での所見の作成は、困難な面も多いのが現状です。

しかし、所見を作成する際には、子供のよさを適切に見取り、他との比較をしない「個人内評価」を重視することに変わりはありません。

特に、2学期の所見は1学期とは異なり、1学期に作成した所見を踏まえて、取り上げる観点や内容等を見直していく必要があります。

特に、1学期と異なる所見を書くためには、次のような視点をもつことが求められます。

1学期と異なる内容(例)

新型コロナ禍での1学期には手洗い等を取り上げたので、2学期は友達との交流を取り上げよう。

1学期は、日直としての努力を記載したので、2学期は清掃での努力の様子を取り上げよう。

ぞうきんがけしている子

1学期からの成長の様子(例)

2学期後半から自信をもって取り組んできた持久走の練習について取り上げよう。

1学期から課題としていた音読の学習に積極的に取り組んできたことを取り上げよう。

音読をしている子

多様なよさを取り上げる際のポイント

子供たちの多様なよさを見取るには、どのような場面があるのでしょうか。

①授業中の学習に取り組む様子(例)

「ノートに書く文字が丁寧で、模範となる〜」
「友達の発言をよく聞き、つないだ発言を〜」
「大きな声でしっかり発表することができ〜」
「手をピンと伸ばした挙手は、学習意欲の〜」
「国語では、説明文の文章構成を考えて〜」
「社会科の歴史学習では、資料を活用して〜」
「算数では、文章問題の解き方を工夫して〜」
「理科の実験では、実験の結果を予測して〜」
「福祉問題についての学習では、施設での〜」

②授業外での学校生活の様子(例)

「朝、登校したら進んで教室の窓を開けて〜」
「縦割り活動では、下学年のよきリーダー〜」
「係活動では、レク係として友達の考えを〜」
「清掃では、自分の分担箇所だけでなく〜」
「給食当番では、自分の担当以外の仕事も〜」
「クラス遊びの時には、男女を問わず誰に〜」
「帰りの会では、進んで友達のよさを発表〜」

子供のよさを見取るためには多様な場面を把握することが大切です。

課題のある子の所見作成上のポイント

課題のある子の所見を書く時に、配慮することは何でしょうか。

「友達に対する言動が乱暴な子」「集団に適応しにくく、孤立しがちな子」「身のまわりの整理整頓ができない等の基本的な生活習慣が定着していない子」「集中力に欠け、学習意欲に乏しい子」等、学級には様々な課題のある子が存在するものと思います。

また、現状では、通常学級にも在籍しているケースが見られる「発達障害のある子」について、所見の書き方には十分配慮しなければなりません。特に、課題のある子供の所見を作成する際は、次のようなポイントを押さえておくことが求められます。

  1. 課題となる項目の記載は最小限とし、その子なりのよさから取り上げます。
  2. 課題は、今後の具体的な指導の手立てと、保護者と共に取り組んでいく内容を伝えます。
  3. 課題は、その子の以前の状況から、少しでも進歩している様子を伝えることを主とします。
  4. 課題の克服に向けた努力により、その子に内在する力を発揮できるような記載にします。
  5. 課題の克服に向けた挑戦が、前向きで希望のもてるような内容となるように配慮します。

所見を作成する際の手順のポイント

よい所見を作成するためには、どのような手順を踏んだらよいのでしょうか。

(例)清掃活動によく取り組んでいる子

①事実としての「よさ」を取り上げます

『清掃活動によく取り組んでいました。』

☆よい所見にするために…

矢印

②「具体的な事実」を取り上げます

『進んでぞうきんがけを行い、後片付けも責任をもって成し遂げていました。』

☆さらによい所見にするために…

矢印

③事実だけでなく教師の考えも盛り込みます

『進んでぞうきんがけを行い、後片付けも責任をもって成し遂げる姿は、クラスの模範となり感心しました。』

所見を作成する際の表記上のポイント

所見を作成する際に、表記上、配慮することは何でしょうか。

  1. 所見の文章表記は、子供向けでなく、保護者向けの表現にします。
  2. 専門用語はできるだけ避け、分かりやすい平易な文章表現にします。
  3. 他の子供との比較ではなく、その子なりのよさを取り上げます。
  4. 学級担任の主観で、独断や偏見とならないように情報を収集して記載します。
  5. 課題の記載には十分に配慮し、次への意欲を高める文章表現にします。
  6. 課題は、教師の指導不足ととらえ、子供や保護者の責任にしないようにします。
  7. 誤字や脱字、文章の主述の歪みなどがないように管理職等への起案をします。

多くの子供の所見を作成していくと、ミスが出てしまうこともあるものです。そのために、互審会をしっかり行い、管理職を含めた多くの目で検閲してもらうことが大切です。

そうか、「よさ」と表記する時は、他との比較ではないので、ひらがなで書くということなのか。

ちょっと気を付けたい文章表記
『〜しているところがすばらしいです』

現在、丁寧の助動詞として「です」は、かなり幅広く使われています。しかし、本来は、「です」という助動詞は、体言やそれに準ずるものに接続する助動詞で、断定の助動詞「だ」の丁寧語版という役割となり、このような表現に違和感を覚える人も多く見られます。

イラスト/やひろきよみ 横井智美

『教育技術 小五小六』2020年12月号より

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