指導と評価の一体化を図る手順は?【田村学流 単元づくり・授業づくり#22】

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田村学流「単元づくり・授業づくり」
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評価と見とり方特集

國學院大學人間開発学部教授

田村学
指導と評価の一体化を図る手順は?【田村学流 単元づくり・授業づくり#22】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

指導と評価の一体化を図る手順について

前回、指導と評価の一体化を図ることの意義についてお話をしていきました。そこで、今回はどのように指導と評価の一体化を図っていくのか、その手順についてお話をしていきたいと思います。さらに評価規準を明確にしたうえで、指導と評価の一体化を図る意味についてもお話をしていきたいと思います。

単元計画に評価計画をはめ込み、単元計画自体を見直す

指導と評価の一体化、つまり単元計画(指導計画)と評価計画の一体化を図るための手順は、ざっとご説明すると、次のようになると思います。

ある単元計画(と評価計画)を作成していくときには、まず育むべき資質・能力を明確にし、それを実現したときのゴールとなる子供の姿をイメージしながら、評価規準をシャープに設定していきます。それは、♯13~♯17でご説明した通りです。そのゴールを実現するために、♯5~♯7でご説明したように、導入を工夫し、展開を構成して、単元計画を作成していくわけです。その単元構成によって、子供たちがどの場面でどんな力を働かせていくかが明確になるわけですから、その力(資質・能力)が評価できる場面でどのように評価するか、活動に沿って評価方法を明確にしていけば、評価が可能になるわけです。つまり単元計画をつくって、そこに評価計画がはまってくるという感じですね。

このように、単元計画に評価計画がはまってくるときに、評価規準がきちんと言語化できておらず、あいまいな形のままだと、最初に考えた単元計画が適切かどうかを吟味できません。しかし、育成を図る資質・能力に沿って具体的かつシャープに言語化できていれば、そもそもの学習活動が適切かどうかを吟味し、議論することができるので、単元計画に評価計画をはめ込んだところで、当初の単元計画を見直し、より精度の高いものにしていくことが可能になるのです。

これが以前にお話をした、評価規準がシャープに言語化できていれば、事前に指導の精度を上げることができるということになります。さらに言えば、単元における評価規準の言語化の精度を上げていけば、単位時間の目標やめあての精度も上げることにもつながっていきます。

ゴールを明確にするからこそ、柔軟に変えられる

このように、一定の指標となる評価規準を定めて、指導計画と評価計画を一体のものとして単元をデザインしていくことは、よりよく子供の姿を捉え、評価していくことにもつながりますし、より質の高い指導改善につながります。

ところが評価規準を定めることは、形式化や形骸化につながるとか、限定されたゴールを子供に押し付けることになってしまうと考える人たちもいます。先にも少し触れましたが、そういった人たちが言うのは、先にゴールイメージが明確になると、ゴールを外してはいけないとか、達成しなければならないというようになる。その結果、先生の一方的な指導に陥ってしまうのではないかというわけです。

しかしゴールをあいまいにした状況では、どこに到達すればよいかは分かりません。当然、学習の過程でも、子供たちの状況がどこにあるのかを的確に判断することもできないでしょう。ですから、評価規準を定めることは必要だと思うのです。ただし定めたうえで、子供の実態などに応じて、「定めたものが適切ではなかったな」と思ったら、柔軟に変えていく姿勢が担保されていればよいと思うのです。もし、このゴールが明確でなければ、何をどういう理由でどう変えたのかをたどり、次時に向けた適切な修正を図ることも難しいでしょう。

明確なゴールイメージがあるからこそ、子供の姿も的確に評価できるし、必要に応じてゴールを変えていくこともできる。
明確なゴールイメージがあるからこそ、子供の姿も的確に評価できるし、必要に応じてゴールを変えていくこともできる。

以前、学校の先生とお話をしていたときに、日本人が色認識をするときに、外国の方よりも多様な言葉をもっているとお話をされていました。同じ赤色の仲間でも、朱色、紅色、茜色、梅色など多様な言葉があるからこそ、同じ赤の仲間でも識別ができるし、そこに豊かさがあるのだというわけです。それと同様に、より具体的な言葉で評価規準を設定することで、子供の状況をより豊かに見とることができるのだと思います。

少し変なたとえになりますが、朱色をゴールだと思っていたけれど、もっと濃い紅色までいけそうだと思えば、ゴールを変えることがあってもいいし、逆に紅色をめざしたけれど、この実態では朱色に留めておいて、次の学習のときに紅色をめざそうということがあってもいいということです。

同時に最初に朱色なのか、紅色なのかという指標がなければ、状況を的確に判断できないということでもあります。

つまり、より具体的かつシャープなゴールが設定できていれば、子供の実態を見ながら柔軟に変更することもできるし、その過程や結果を適切に評価できるということなのです。

編著書『探究モードへの挑戦』刊行特別インタビュー【田村学流 単元づくり・授業づくり#00】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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