体育の新型コロナ対策②:「接触しない鬼ごっこ」と「グループ交代制」

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愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

3つの密、道具の共有、熱中症、休校による運動不足⋯新型コロナの影響下で体育の授業を実施するには様々な配慮が必要です。授業計画も一苦労ですが、制限のある中で少しでも良い授業を、と考えられている先生方も多いのではないでしょうか。今回は、感染リスクを避けながら体育の授業を充実させることのできるアイデアを紹介します。

「ウルフ鬼」(イラスト)

執筆・イラスト/愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦

タッチなしで楽しめる!「ウルフ鬼」

今も昔も大人気の鬼ごっこ。場をほぐすために授業のはじめに行うこともあるでしょう。しかし、相手に近づいたり、接触したりする姿を見ると、実施してもよいのかと不安に感じてしまいます。そこで、そんな心配を一切することなく、子供たちがより楽しめる鬼ごっこ「ウルフ鬼」を考案しました。

人気のゲーム「人狼(じんろう)」をモチーフとしたこの鬼ごっこでは、ガムテープに書かれたキーワードを読み取られないようにひっそりと逃げ回る「ウルフ」とキーワードを探す「探偵」に分かれて行います。

『ウルフ鬼』の手順&ルール

  1. 全員を座らせ、目を閉じた状態で待機させる
  2. キーワードが書かれたガムテープを何人かの子供に配る(全体の3分の1程度の人数が「ウルフ」になり、残りは「探偵」になる)
  3. ガムテープを渡された「ウルフ」は、それを着ている服のどこかに貼る
  4. 合図で全員が目を開けて、ゲーム開始!(「探偵」は「ウルフ」を探してキーワードを読み取る/「ウルフ」はキーワードを読まれないように逃げる)
  5. ゲーム終了! 全員集合して「探偵」が見つけたキーワードを挙げていく(すべてのキーワードが挙げられたら「探偵」の勝利、1つでもキーワードを隠せたら「ウルフ」の勝利)

まず、全員をその場に座らせ、目を閉じた状態で待機させます。その間に教員は「リンゴ」「チーズ」などの簡単なキーワードが書かれたガムテープを、何人かの子供に渡します。全体の3分の1程度がおすすめです。

ここで、ガムテープを渡された児童が「ウルフ」となります。「ウルフ」になった児童はこっそりと目を開け仲間を確認します。そして、そのテープを着ている服のどこかに貼ります。

テープが貼れたことを確認したら、開始の合図を鳴らします。全員目を開け、ゲームのスタートです。「探偵」は「ウルフ」を探し、テープに書かれたキーワードを読み取ります。逆に「ウルフ」はキーワードが見られないように逃げ回ります。手などでテープを隠すのは禁止です。

時間になったら全員を集め、見つけたキーワードを順に言っていきます。すべてのキーワードが言えたら「探偵」の勝利、言われなかったキーワードが1つでもあったら「ウルフ」の勝利です。

走るのが好きな子にも、あまり走ることが得意ではない子にも活躍の機会があるのが、この「ウルフ鬼」の良さです。タッチをする必要がないため、休校で体力がまだ戻っていない児童も、軽く走ったり、その場で目を見張ったりしながらキーワードを探すことができます。

また、意図的にウルフを指名することで運動量を調整したり、参加意欲を高めるきっかけを作ったりすることができます。

ルールの説明は教室で

密集を避けるため、近くに児童を集めて説明をすることができなくなりました。広がっている児童に声を届かせようと思うと、大きな声を出して話さなければなりません。マスクをしていれば尚更で、自分も早々に喉を傷めてしまいました。また、この炎天下で児童を座らせ、声を張りながら説明をしてもあまり高い効果は望めません。

そこで、思い切って活動の大まかな説明や、ポイントの解説を教室で行うようにしました。たくさんの内容を覚えておくことは難しいかもしれませんが、流れやポイントを授業の前に伝えておけば、運動場での指示を減らすことができます。

また、教室ではプロジェクターを活用することができます。動画や写真を見ながら、コツを見付けたり、練習の計画をしたりする時間を設けたところ、フォームや体の使い方を意識しながら練習に取り組む姿が見られるようになりました。

詳しいルールは教室で説明する(イラスト)

グループ交代制で密を避ける

活動場所が限られる体育館などでは、全員で一斉に運動すると、密が避けられなくなる場合があります。

そこでグループ制度を導入し、運動するグループと、仲間の動きを観察するグループの2つに分けるようにしました。観察するグループの児童は、ワークシートに仲間の動きの良いところやアドバイスを記入します。合図が鳴ったら役割を交代し、観察をしていた児童が今度は運動を、運動を行っていた児童は自分へのアドバイスを読んでから、仲間の観察を始めます。

グループ制度で入れ替える(図)
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長い間観察することは難しいかもしれませんが、短い時間で区切り、こまめに入れ替わるようにすることで、やる気を継続させることができます。全員で一斉に取り組んでも、その分待ち時間が長くなるため、一人ひとりの運動量にそう変化はありません。このグループ制度を設けることで、コロナ禍によって失われていた、仲間と協力して運動に取り組む経験をさせることができます。

いつもと違う学校生活に、子どもたちもストレスを抱えています。体を思いっきり動かすことのできる体育の授業の役割は今まで以上に大きくなることでしょう。仲間と一緒に楽しく体を動かす機会を失わないためにも、今できる工夫を考え続けていきたいです。

・タッチしない「鬼ごっこ」で、接触を避けて楽しむ
・体力に合わせて運動量の調整をする
・ルールの説明を教室で行うことで、密集と炎天下での負担が軽減する
・2つのグループに分けて交代することで、密集を避ける
・活動に制限がある中でも、仲間と協力して運動に取り組む工夫をする

佐橋慶彦先生
佐橋慶彦先生

佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。教職9年目。教育実践研究サークル「群青」主催。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。

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