「職員室にいたくない」と思ってしまうあなたへ

連載
古舘良純の「つぶやききれなかったこと」【月1回不定期更新】

岩手県公立小学校教諭

古舘良純

自らの体験に裏打ちされた教育哲学と再現性の高いスキルをTwitter(@YoshiJunF)で発信し、若手教師を励まし続ける古舘良純先生が、Twitterではつぶやききれなかった思いを綴る連載。
仕事はできても職員室の居心地が悪いという先生はいませんか? 古舘先生が、自らの経験から「職員室を大切にする」ことで得られた貴重な体験を語ります。

執筆/岩手県公立小学校教諭・古舘良純

Photo by Antonio Janeski on Unsplash

「学級王国」と言われて

若い頃、「学級づくり」に励んでいました。「どうしたら楽しい学級をつくれるだろうか」と考えていました。しかし、頑張れば頑張るほど「古舘先生が持った子どもたちは持ちにくい…」と言われたり、「学級王国じゃダメなんだよ」と叱責されたりしました。

当時の私は、「学級王国」という言葉の意味がわかりませんでした。「じゃあ、どうしたら持ちやすくなるの?」と純粋に考えました。ただ、「あまり良く思われていないんだな」ということだけは確かに伝わってきました。次第に、周りの先生方が敵に見え、不信感を抱くようになっていきました。

だからと言って、「教室」で手を抜くわけにはいきません。明日の授業に向けて教材研究に取り組んだり、子どもたち同士をつなぐようなゲームをたくさん取り入れたりして、子どもたちと向き合っていました。向き合っていたつもりでした。

職員室に居られない

何年か経ち、大きな校務分掌も与えていただけるようになりました。しかし、自分の考えた提案が通りにくいことが多々ありました。職員室での「立ち位置」や「振る舞い」を間違えていたからです。

どれだけ事務仕事を早く終える力があっても、文書作成が早くても、なんだか「味気ない仕事」が続いたように思います。

その理由は、「他の先生方のことを考えていなかった」からでした。子どもたちのことは考えていても、一緒に指導していく職員室の先生方のことを考えていなかったのです。

私は、「子どもたちのためなんだからやってください」と、強引に正論を振りかざしていました。それは結局「自分自身の主張を通したい」という自己中心的な考えだけでした。

気づけば、教室で仕事をする日が増えていました。丸つけも、コメントも、ノートへ目を通すことも教室で行いました。きっと、「職員室に居られない」という居心地の悪さを感じていたからです。

心の中が曇っていた私は、子どもたちとの良好な関係性の裏側で、モヤモヤした気持ちを抱えながら毎日過ごしていました。先生方と話すことが怖くなっていました。

先輩から学んだ会議提案時の5つの視点

ある先生が転任してきました。穏やかな方でしたが、強い思いをもって進まれる芯の太い先生でした。職員会議の後、その先生との立ち話の中で放たれた一言が今でも忘れられません。

「俺が提案するときはさ、どうやったら先生方が動いてくれるかも考えて提案するようにしてるんだよ。やってもらえなかったらさ、結局子どもたちのためにならないじゃん?」

私にとって、それまで考えたことがなかった視点でした。もしかしたら、その先輩は、このような言い回しによって私に「間違い」を気付かせようとしてくれていたのかもしれません。

それまでの私の提案は、

① 子どもたちにどんな力を身につけさせたいか
② そのために、どうやって内容をスリムにするか
③ 昨年度の提案にどのような改善点を加えたか

だけを考えていたように思います。それは、私の思いだけで突き進む形になっていました。

しかし、

④ 先生方にどのように動いてもらうか
⑤ どうすれば先生方が動きやすいか

という視点まで考えることはありませんでした。考えようともしませんでした。

相手を大切にする・相手を知る

それから、関係する先生方や、管理職の先生方に相談してから提案文書を練り直すようにしてみました。「こう考えているのですが、どうですか?」「先生は、この担当でも大丈夫ですか?」「この内容で、不都合はありませんか?」と聞いて回ったのです。かなり勇気が必要でした。

すると、「こうした方がいいんじゃないか?」「これだと…ちょっと動きにくいかも…」「もう一人いたほうが助かる!」「○○先生とチェンジしてもいい?」など、前向きな意見を出していただきました。

さらに、先生方の意見を取り入れるたびに、自分自身の考えていた提案内容がより明確になっていく感覚がありました。まさに「みんなでつくりあげる感覚」でした。

さらに、先生方の個性を知ることができました。「この先生が大切にしていること」「あの先生のアイディア」など、先生方の一言一言に新しい発見がありました。

職員室での学びが学級も変えた

若い頃の自分は、「ネタ」ばかりに頼っていたり、「一発屋」的な発想で授業をしていたりしました。教師が、子どもたちを喜ばせようとしていました。

しかし、職員室での先生方との対話を通し、人の話を聞き、考え方を尊重するようになってから、子どもたちへも「どう思う?」「どうしたい?」「何か意見ある?」などと聞いて、「一緒に考える」「一緒につくりあげる」ようになっていました。

言い換えれば、「子どもたちのことを信じる」ということだと感じます。「子どもたちを頼っていいんだ」と思えました。子どもたちも、私の問いかけに必死に応えてくれました。

きっと、「これは『学級王国』とは違う」と思えました。そして、子どもたちの頑張りや成長を職員室で話すことができるようになっていきました。

今の自分やこれまでの自分が、「良い教室」をつくってきたかどうかはわかりません。しかし、私の中で「職員室を大切にしてみた」という経験が、学級への良い影響を及ぼしたことは事実です。

「職員室っていいな」「先生方って素敵だな」と思えました。それが、「学級っていいな」「子どもたちって素敵だな」という考えにつながったのです。

今こそ職員室にプラスのストロークを

皆さんは、毎日の仕事が楽しいですか? 学校が辛い場所になってはいませんか? 私は、毎日が「楽しい」と思えます。それは、「楽しい」を口癖にしているからです。

「楽しい」と発してから、「何が」を考えるようにするのです。「楽しい」と先に言ってしまえば、ある一つの事実を意味づけするだけで、それが「楽しい事実」に変わります。

楽しそうに仕事をする人には、楽しそうな人が近づいてきます。笑顔の人には笑顔の人が近づいてきます。私はそう信じて職員室で振る舞うようにしています(疲れのピークではできない時もあるが…)。

私の周りには、楽しそうに学級のことを話してくれる先生方がいます。笑顔で吹き飛ばしてしまう先生方がいます。だからきっと、私自身も毎日笑って過ごせるのだと思っています。

そうしたプラスのストロークを職員室に生み出していけば、自然に教室も素敵になり、明るくなっていくのです。

こうした社会状況で、学校教育活動に制限がかかり、「今まで通り」が通用しません。学級のことに加え、学校全体のことや雑務なども行われていると思います。

だからこそ、職員室を大切にし、子どもたちを大切にし、その中で自分自身も大切にできる人になりたいです。

古舘良純先生
古舘良純先生

古舘良純(ふるだて・よしずみ) ●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞

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