ぬまっちがコロナ休校中に出した宿題は?|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
新型コロナウイルスの影響で休校が長引いている学校が多い中、子供たちの学びを止めないために、試行錯誤を重ねている学校も多いと思います。
子供の自主性を伸ばす教育で注目を集める「ぬまっち」こと沼田先生に、「コロナ休校中、どんな宿題を出しましたか?」という質問に答えていただきました。
目次
漢字の先取り学習で、再開後の授業時間を確保
ボクは、たくさん読書もさせたいし、自分の興味のある科目の先取り学習も進めてほしいんだけど、課題として圧倒的にいいと思うのは、漢字だよ。
漢字学習帳などを使えば一人でも取り組みやすいはずだから、休校期間中にできるだけ多くの漢字学習を家庭で進めておきたいよね。漢字を進めておくだけでも、学校が再開してから、漢字学習の時間を削って他の学習に充てることができるから。
ボクの学年では、4月の段階で、「5月末までは緊急事態宣言解かれないだろう」と考え、「5月中に一年間で学習する漢字の半分は終わらせる」という宿題を出した。
本来ならば、意味調べにも取り組ませたかったけど、意味調べの方法をきちんと教えていなかったのと、一人ひとり辞書を持っているかどうかの確認が取れていなかったから、まずは漢字の書き取りのみを宿題に出している状況だよ。
タイピングゲーム「寿司打」でローマ字を復習
さらに、休校が決まった段階でボクが子供たちに出した課題は「タイピングゲーム」。
オンラインで行う「寿司打」というタイピングゲームは、これまでも4年生でローマ字の学習が始まると常に子供たちに取り組ませていたゲーム。難易度は高めなんだけど、ゲームの面白さで、子供たちはあっという間にタイピングが上達してスピードも速くなったよ。
そしていま、学年を問わずこのタイピングゲームに取り組ませたいと思っているのには、理由がある。
ひとつは、ローマ字を学習したはずの子も、意外に忘れてしまっていることが多いから。
また、今後もし ZoomやGoogle Meetなどを使ったオンライン授業に切り替えることがあれば、タイピング技能が非常に役に立つと思うから。
タイピングのスキルはオンライン授業で活きる
例えば、ボクは最近よくZoomを使ってオンラインで飲み会をするんだけど、ちょっと面倒だなと思うのが、二人同時に話し出すと二人とも音声が消えてしまうこと。
もし30人のクラスでZoomを使ってオンライン授業をすることになり、みんなが同時に話し出すと考えると、ちょっと頭が痛くなるよね(笑)。
Zoomでは、ホストである教師が全員の音声をミュートにして、発言する子だけのミュートを解除するということもできるし、子供たちが声を発せずに、「手を挙げる」というサインを送るシステムもある。
でも、発言させる子だけミュートを解除し、その後すぐにミュートに切り替えるのは意外に手間がかかるし、「手を挙げる」サインを送ったけれど発言できなかった子供たちが手を降ろすのを待つ時間も必要になる。
一番問題だなと思うのは、全員ミュートしていると、言いたいことがすぐに言えない状況が生まれてしまうこと。
もちろん、言いたいことを我慢して先生や友達の話を聞くことが大事なときもあるけれど、わからないことを質問したいときや、「音が聞こえない」といった不具合をすぐに伝えたいときにはやはり不便だよね。
なによりも、子供たちには伝えたいことがあるのに、それを表現できないというストレスを抱えさせるのは教師としてやっぱり辛い。
そんなときに便利なのがチャット機能。
Zoomでは、マイクを使わずとも、チャットで書き込み文字として共有できる機能があるんだけど、このチャットを使うときに必要になるのがタイピング。
タイムリーにタイピングができるようになると、チャットも使いやすくなるし、音声に頼らず、迅速に伝えたいメッセージを送りやすくなる。
今こそオンライン授業の研究を
ただ、チャットには気を付けるべき課題もある。
どうしても先生だけに伝えたいことがある場合には、先生にだけチャットを送る方法もあるけれど、そうした機能に慣れると、先生に気付かれないように、特定の友達同士でチャットを楽しんで授業を聞かなくなるという問題も出てきてしまうかもしれない。
また、パソコンではなく、スマホやiPadを使ってZoomを見る場合は、チャット機能を見るときにページを切り替えないと見ることができないので、そこでタイムラグが生まれてしまう可能性もある。
そうした課題があることも含めながら、 ZoomやGoogle Meetなどのオンライン授業をする場合に、上手に子供たちとコミュニケーションを取れる方法をボクなりにいろいろと考えているところなんだよね。
簡単な質問をしたり、アンケートを取るときに便利かもしれないと思っているのが、カードによる伝達方法。
例えば、赤・青・緑など、いろいろな色を名刺サイズに切ったカードを使って、「今日の朝食にパンを食べた人は緑、ご飯を食べた人は赤、それ以外は黄色、食べていない人は青のカードを見せて」と伝えてみる。これなら子供たちが出した紙の色を見れば、子供たちの回答が一目見て分かるよね。
さらにその紙を見ながら、気になる子に、「Aさん、今日のご飯詳しく教えて」などと具体的な質問をし、対話をし、みんなで共有するのもよいかもしれない。
いろいろ手探りの状態だけれど、長丁場になりそうな今回のコロナ禍ではオンライン授業を研究していくことは必要だと思ってる。今後の課題としては、全員がYES・NO以外で自分のことを表現できる機会をできるだけたくさんつくりながら、子供たちとちゃんとつながれる授業を目指していきたいなと考えているところだよ。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
取材・構成・文/出浦文絵