小学校のオンライン授業:子どもが集中する4つの型【新型コロナ対策】
長引く休校の中、経験のない遠隔授業に取り組んでいる先生たちがいます。そこで見えてきたのは、通常の学級での授業と同様に、オンラインの空間における授業づくりのスキルが必要だということ。物理的な距離を越えて主体的な学びを促すためにはどうしたらいいのか? 京都教育大学附属桃山小学校教諭の樋口万太郎先生に解説していただきました。
執筆/京都教育大学附属桃山小学校教諭・樋口万太郎
【関連記事】樋口先生の学校では、ロイロノートを使った遠隔授業を行っています。詳しくはこちらの記事をお読みください → 小学校オンライン授業実践例:使うツールは?保護者への連絡は?
目次
オンライン授業は教科書通りの流れでは厳しい
私たちの学校では、現在ロイロノート(授業支援ツール)を使ったオンライン授業を行っています。平日は毎日行っており、一コマ45分の授業を1日3コマ行うようにしています。1コマの授業の流れですが、学校で行うような、
「問題提示→見通しを持つ→自力解決→集団解決→まとめ」
という流れでは基本的に行いません。これでは子どもたちが45分間集中して、取り組むことが難しいからです。
もし、この流れで動画を撮影し、配信をしたとして、全て見る子はどれほどいるでしょうか? この流れであれば、まとめが最後にきますので、「まとめだけ」を見る子がいるかもしれません。それ以外の時間、違うことをしてしまうかもしれません。そのため、教科書通りの流れでは厳しいということになります。
そこで、教科書を使用する場合には
■問題の解説を行う
■教科書のページを指定しておき、事前に取り組んでおく。そして、オンライン授業の時には、わからないことや質問などを交流する
ということを行います。教科書を使用する以外にも、
■探究的な課題を与える
(教師から「身の回りにある線対称で点対称なものを探そう」という課題などを提示したり、夏休みの自由研究のようなものを子ども自身が考えたりします)
ことで、子どもたちが自宅で探究的な学習を行うようにしています。
オンライン授業の基本の4型
私はオンライン授業を作るときには、基本的には、
【1】 課題提示→一人で取り組む→途中段階で提出→友達の考えを見ながら自分の考えをアップデートしていく→振り返り
(例)詩の音読をした動画を提出するように課題を提示 → 子どもたちが音読動画を撮影して提出 → その動画を子どもたち同士で見合い、自分の音読をアップデート→ 再度動画
【2】 小さな課題→小さな課題→小さな課題
(例)国語で説明文の段落をはじめ・中・終わりにわける → 中の構成について考える → 再度、はじめ・中・終わりにわけることを考える
【3】 1時間ずっと課題に取り組む
(例)新聞づくりに取り組む
【4】 動画を見る→課題に取り組む
(例)NHK for schoolを見て、課題に取り組む
という4パターンをベースに使い分けています。
1コマの授業は、1話完結にするというより、連続ドラマのような形で単元を構成していくことで、子どもたちの興味をひきつけられます。
動画には力を入れすぎない
オンライン授業で教師側から動画を提供する場合があると思います。
動画は、何も今から新しく撮影する必要はないと思います。既存のコンテンツ(NHK for schoolなど)で優秀なものはたくさんあります。まずは、あるものを有効活用することが大切です。
ただ、そういった動画を見て終わりではなく、その後に動画を見てわかったことをまとめるといった活動を必ずセットしていきたいものです。
ちなみに私は、授業冒頭に1時間の流れを説明したり、解説したりするときに動画を作るのですが、自分で作るときには「カンペキ」を求めすぎないように作成しています。
動画には基本的に台本もなく、一発録り。あとでスマホで編集して作成しています。作成時間は6分くらいです。
普段の授業でも、台本を用意しません。動画だからと身構えてしまうかもしれませんが、先生が普段のように話をしている様子や先生が言葉を噛んでいる様子などに安心感を持つ子が多いのではないかと考え、あえてこのように取り組んでいます。そして、動画は3分未満でおさめるようにしています。
私はyoutubeを毎日見ています。見過ぎて、家で叱られることもあるぐらいですが(笑)、長い時間の動画は飽きてしまうんです。さらに、「カンペキ」ではなく、演者の「素」を見せてくれる動画に魅力を感じます。だから、真似をするようにしているのです。
メリット、デメリット、変わらないこと
オンライン授業は、子どもたちの自主性を伸ばす、休校中でもクラスの子どもたちに教育の機会を作れる、お家の方にとっても生活にリズムを作れるなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、もちろん通常の授業に比べればデメリットもあります。
例えば、オンライン授業をしていると、「子ども達のリアルタイムな反応がわからない」ということです。これは、想像以上にかなり困惑します。ビデオ機能を使う場合には、また少しは変わってくるのかもしれませんが。それでも、教室で行うのとではやはりだいぶ違うでしょう。
また、オンライン授業はリアルの授業よりも活動に時間がかかってしまうこともわかりました。
オンライン授業を作るときに、普段の授業で自分がいかに「内容を盛り込みすぎていたか」「自分が話をし過ぎていたか」に気づきます。そこで、オンライン授業を作るときには、活動時間を確保するために、できる限り指示や活動の内容を少なくしたりと、シンプルに作る必要性を感じています。
子どもたちにとっては、「教材との対話・自分との対話」をしている時間が増え、そこに楽しさや苦労を感じている子も多いようです。自分で学んでいけるようにするためのサポートが、オンライン授業を成功させる鍵となりそうです。
その一方で、教室での授業と変わらないこともあります。それは、使うツールは違っても、教師の課題の提示や問いによって、「やってみたい」「考えてみたい」などと子どもの心に火を付けることが重要ということです。
これまでと同様に子どもたちの学ぶ意欲を高めるための教材研究に取り組むと同時に、オンライン授業ならではのスキルも身につけていきたいものです。
樋口 万太郎●1983年大阪府生まれ。京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子供に力がつくならなんでもいい!」がモットー。教科書「小学校算数」(学校図書)編集委員。近著『子どもの問いからはじまる授業!』(学陽書房)の他、著書多数。
Twitterアカウントは@boseteacher
いかがでしたか?
オンラインならではの授業づくりのノウハウがたまるまでには、まだ教育現場全体として経験値が足りない状態ですが、これから全国の取組が共有されていくことで、新しい時代のオンラインの授業名人が多数生まれてくるかもしれませんね。