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47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業 #4 地域への「批判的愛着」を育む ~魅力度と幸福度のギャップから始まる新しい郷土愛の形~ 

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北海道公立小学校教諭

藤原友和
連載「47都道府県縦断!全国オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業」バナー

全国各地の「ひと・もの・こと」を教材化し、子どもたちの感情、思考、価値観を大きく揺さぶる道徳授業を提案。さらにそれらを集めてアーカイブ化しようという野望に満ちたリレー連載です。今回の執筆者は、北海道函館市の長澤元子先生です。

編集委員/藤原友和(北海道函館市立鍛神小学校教諭)
執筆/長澤元子(北海道函館西高等学校教諭)

はじめに

こんにちは。日本の坂百選に選ばれている函館市の八幡坂の頂上に位置する北海道函館西高等学校の国語科教諭、長澤元子(ながさわ もとこ)と申します。 

非常に眺めのいい学校で、校舎からは津軽海峡と函館湾を一望できます。函館の観光イベント「はこだてクリスマスファンタジー」の時期には、校舎から綺麗な花火を見ることもできます。少子化と人口減少の影響で2019年に函館稜北高校と統合しました。函館西高校は進路多様校で、大学から就職まで幅広い進路選択をする子どもが在籍している1学年6クラスの単位制普通科高校です。
今回は、人口減少が進む地域だからこそ必要な、新しい形の「地域道徳」について提案したいと思います。もっとも、これは「現代の国語」の授業開きとして行われた単元で、道徳の授業ではありません。グローカル型のスクールミッションを掲げる函館西高校だからこそこの授業が生まれました。 

地域の課題から目を逸らすことなく、むしろそれらと正面から向き合いながらも、地域への愛着を深めていく地域に対する「批判的愛着」という私が考えた概念に基づいた授業です。 

従来の「郷土愛」の研究では、地域や場所に対する情緒的な愛着が強調されてきました。地理学者イーフー・トゥアンが1974年に提唱した「トポフィリア」(注1)は、人と場所との間の愛情的な絆を表す概念です。また、環境心理学では「場所アイデンティティ」(注2)という、場所が自己のアイデンティティの一部を構成するという考え方も提示されてきました。しかし、過度な地域愛着は課題を見過ごす「批判なき愛着」に陥る危険性も指摘されています。近年では、海外でも国内でも、愛と批判の両立が重要だという認識が広まってきました。こうした流れを踏まえ、私は地域の現実と矛盾を直視しながらも愛着を深める新たな枠組みとして、「地域に対する批判的愛着」という概念を提案します。 

この授業は後発で行われる「総合的な探究の時間」の地域人材とのつながりを深めるフィールドワークとの接続を意識し、それに先行する形で4月に行われた授業です。 

従来の郷土愛が地域の良い面だけに焦点を当てがちだったのに対し、地域に対する「批判的愛着」は地域のプラスの側面と地域の課題の両面を受け入れながら、「それでもこの地域を自分たちの力で良くしていきたい」という建設的かつ主体的な関与の意志を持った子どもに育てることを目指します。 

 2 人口減少時代に求められる新しい地域愛 

全国各地で確実に失われつつある地域コミュニティ。そんな時代だからこそ、子どもたちが自らの住む地域を知り、健全な愛着を持てるような道徳的教育が重要になってきています。 

しかし、従来の「郷土愛」の概念だけでは、現代の複雑な地域課題に対応しきれないのではないでしょうか。 

例えば、私たちの住む函館市は、観光魅力度ランキングでは全国1000市区町村で1位を獲得する一方で、幸福度ランキングでは48中核市中45位という大きなギャップがあります。このような現実を前にして、「函館は素晴らしいまちです」とだけ教えることに、どれほどの教育的意味があるでしょうか。
まして、私が接しているのは高校生です。街のキラキラしたところだけを教えるわけにもいきません。さらに、高校生ともなると、すでに「この街は空き店舗がどんどん増えているな…」とか「路面電車から見える店舗は五稜郭と駅前以外は空き店舗が多いな。空洞化が進んでいるぞ…」といった登下校の観察からわかる事実や、「〇〇商店会が解散したって」などといった地域のニュース、あるいは、「お母さんの出身校は、小中高全部閉校しちゃった…」といったような家族との会話から、「この街、人口が毎年4000人減っているし、かなり衰退しているのでは?」といったことに気づきます。
そして、その一方、彼らの登下校では毎日のように路面電車の停留所にあふれかえる観光客を見ます。また、学校のある八幡坂が観光客で渋滞している姿を見て、「何か変だな…」と子どもたちも気づいています。  だから、単純な郷土愛ではなく、現代にむしろ必要なのは、次の四つです。

  • 地域の現実を直視する勇気 
  • 複雑性や多様な視点を受け入れる寛容さ 
  • 課題を見つけても諦めない建設的な関与への主体性 
  • 地域の未来への責任感

 これら四つを統合した「批判的愛着」こそが、現代の子どもたちに必要な地域愛の形だと私は考えます。 

 3 「魅力度1位・幸福度45位」から始まる道徳的授業の実際

授業の導入(5分) 

前提:授業者の自己紹介と簡単な授業ルールの確認。NGな表現(悪口やバカにしたり誰かを下に見たりする表現)とOKな表現の事例紹介。(図1) 

図1 NG表現例とOK表現例のリスト
図1 NG表現例とOK表現例のリスト

練習の発問1:「今年1年、よろしくお願いします。ご挨拶をお願いします。」 
練習の発問2:「なんで西高を進学先に選んでくれたの?」 
練習の発問3:「あなたの今までの国語の授業のイメージは?」(図2) 

これらの問いに各1〜2分ずつ使い、デジタル上の付箋にまるでノックのように次々と答えていきます。Googleスライドの上部に発問を書き、子どもたちは下に人数分用意されている付箋に匿名かつリアルタイムで書き込んでいきます(スライドの付箋が次々に埋まっていく様子はなかなか壮観です)。

図2 「あなたの今までの国語の授業のイメージは?」という問いに対する生徒たちの答え
図2 「あなたの今までの国語の授業のイメージは?」という問いに対する生徒たちの答え

授業の展開1(30分) 

引き続き、基本的にGoogleスライドに付箋で書き込んでいく形式で授業は進みます。この間、子どもたちは発話なく、基本的に無言のまま進んでいきます。とは言っても笑い声や「まじかー」などの呟きは聞こえてきますが…。 

  • 発問1:「函館のいいところは?」 
  • 発問2:「函館の残念なところは?」(図3) 
  • 発問3:「魅力度ランキングを見てどう感じた?」(図4) 
  • 発問4:「魅力度ランキングを見てどう考えた?」(図5) 
  • 発問5:「『感じた』と『考えた』はどう違う?」(図6) 
  • 発問6:「二つのワークシート(PMIシート・SWOT分析シート)のどちらかに、最低一つ、なにか書き込もう」(図7・8) 
図3 「函館の残念なところは?」という問いに対する生徒たちの答え
図3 「函館の残念なところは?」という問いに対する生徒たちの答え

発問3、4では下の図4、5を見るとわかる通り、中には既にこの後の展開をある程度理解しているような書き込みをしている子どももいます。 

図4 「魅力度ランキングを見てどう感じた?」という問いへの生徒たちの答え
図4 「魅力度ランキングを見てどう感じた?」という問いへの生徒たちの答え
図5 「魅力度ランキングを見てどう考えた?」という問いに対する生徒たちの答え
図5 「魅力度ランキングを見てどう考えた?」という問いに対する生徒たちの答え

発問5は、深い思考を導くメタ的な問い「『感じた』と『考えた』の違い」になっています(この時は、それまでの質問の中で回答に一番時間がかかっていました)。この問いは、この単元でこの後に続く、教科書教材(野矢茂樹「考える技術——考えさせない時代に抗して」)に入るための伏線です。 
発問6ではPMIシート(Plus〈良い点〉」「Minus〈悪い点〉」「Interesting〈興味深い点〉」の三つの視点から評価・分析するシート・図7)とSWOT分析(強み〈S〉・弱み〈W〉という内部環境と、機会〈O〉・脅威〈T〉という外部環境を4軸で分析すること・図8)のワークシートを使います。
上に項目と1〜2個の例を書いてあるだけで、子どもたちは説明を受けなくてもワークシートの趣旨を理解し、2枚のワークシートへの書き込みがどんどん増えていきます。付箋が貼ってあるだけのワークシートより少し時間をかけて、子どもたちは考えながら書いていきます。  

図6 「『感じた』と『考えた』はどう違う?」という問いに対する生徒たちの答え
図6 「『感じた』と『考えた』はどう違う?」という問いに対する生徒たちの答え
図7 PMIシートへの生徒たちの書き込み例
図7 PMIシートへの生徒たちの書き込み例
図8 SWOT分析シートへの生徒たちの書き込み例
図8 SWOT分析シートへの生徒たちの書き込み例

授業の展開2(10分) 

ここで本授業の核心であるランキングを子どもと共有します。 

初めに提示するのは、ブランド総合研究所が毎年行っている『地域ブランド調査2024』の「都道府県魅力度ランキング2024」と「市区町村魅力度ランキング2024」です。 

この調査を提示した子どもたちを見ると、嬉しそうな子もいますが、困惑している子も多くいます。
ここでも、「どう感じた?」(図4)と「どう考えた?」(図5)の質問をします。図にあるような意見の他に、他のクラスでは「誰を対象にして調べているのか? 少なくとも函館人を対象にしてなさそう」などといった意見もありました。 

まとめ(5分) 

さて授業時間もあと5分です。まとめの時間です。 

しかし、この授業は、まとめの時間にまとめません。あえていうなら、学びを開きます。
「あなたは函館西高校で、何をどんなふうに学びたい?」という、私からのメッセージです。 

ここで、一般財団法人の日本総合研究所が2年に一度行っている48中核市の幸福度ランキングを見せます。これは、六つの基本指標と、5分野33指標の合計でランキングが出るのですが、なんと、その指標では、函館は48中核市中45位と低迷しています。その指標を見た子どもたちは、困惑します。もっとも、子どもたちが「この差は何なの?」と思うのは当然です(大人もそう思う結果ですよね…) 。

  • 発問7:幸福度ランキングを見て…「ねえ、今どんな気持ち?」 

さて、ここでも同じように感じたことを書いてもらいます(図9)。子どもたちが書くのは本当に率直で素直な意見ばかりです。結構衝撃が大きいので、初見での意見は本当に「ひとこと」で済ませている子が多いです。絶句、とはまさにこのことを指すんでしょうね…。 

ここで、この授業と単元は終わりです(この単元に限っては、振り返りもしません)。  この答えの続きを、各教科の授業で探していくのです。授業開きが、函館西高校のグローカル(をはじめとする)探究の入り口になっているのです。 

図9
図9 「ねえ、今どんな気持ち?という問いに対する生徒たちの答え

批判的愛着が育む四つの道徳的価値 

この授業を通じて、子どもたちは、以下の四つの道徳的価値を学びます。 

 (1) 誠実さ— 現実を直視する勇気 

「函館は魅力度1位」という輝かしいデータだけを見せて、「いい街だね」と言うのは簡単です。しかし、それは教育として誠実でしょうか。幸福度45位という厳しい現実も同時に示すことで、子どもたちは地域の「光と影」の両面を知ります。そして、その複雑さから目を逸らさない誠実さを学ぶのです。 

以下は、子どもたちの反応の一部です。 

「誰を対象にして調べているのか?少なくとも函館人を対象にしてなさそう」 
「オーバーツーリズム化が進んでいる。自分が住んでいるところから比べると都会に感じるけど田舎だと思う」 
「観光客が多くて市電に乗れない時がある」 

彼らは、統計の裏側を読み、自分の生活実感と照らし合わせて考え始めています。これこそが、誠実に現実と向き合う姿勢です。 

 (2) 寛容さ— 多様な視点を受け入れる心 

Googleスライドでの匿名での意見交換は、多様性を学ぶ絶好の機会です。 

この授業でデジタル付箋を使う理由は、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を大切にする土壌づくりです。おとなしい子も、声が大きく元気な子も、等しく付箋に感じたことや意見を書く。これが民主的で寛容な土壌となります。普段の授業では、声の大きな子、発言が得意な子の意見が中心になりがちです。しかし、発言が苦手でも、深く考えている子はたくさんいます。むしろ、そういった子どもたちの方が、個性的で建設的な意見を持っていることも少なくありません。デジタル付箋を使うことで、すべての子どもの意見が可視化されます。そして、子どもたちは自分とは違う視点の存在に気づきます。 

魅力度ランキングへの反応一つとっても、「嬉しい」「誇らしい」という肯定的な意見もあれば、「住んで体験することと、観光で来ることは違う」という批判的な意見もあります。どちらも正しく、どちらも函館を思う気持ちから生まれた意見です。 

この多様性を受け入れることこそが、寛容さであり、批判的愛着の基盤となります。 

 (3) 主体性— 建設的な関与への意志 

「この街の問題は、誰かが解決してくれるもの」ではなく、「自分たちも当事者として関わるべきもの」という意識の転換が、この授業の意図する核心です。 

Googleスライドで「函館の残念なところ」を書き込む活動では、子どもたちは遠慮なく率直な意見を出します。 

「道が狭い」「映画館が少ない」「遊ぶ場所が少ない」「若い人が少ない」「空き地が多い」「観光客が多い」……。 

これらは、決して批判のための批判ではありません。「自分たちの街だからこそ、良くしたい」という思いの裏返しです。そして、授業の最後に幸福度ランキングを見た時の反応もまた、彼らの素直な気持ちです。 

「救いたい」「強く生きていきたい」「残念だな。でも、まだ救いあるっしょ」「上っ面の探究活動じゃなくて現実を知るべき」 

諦めや失望ではなく、「何とかしたい」という主体性が、ここには芽生えています。 

 (4) 責任感— 当事者として関わる意志 

単に課題を指摘するだけでなく、「自分たちがこの地域の未来を担っている」という当事者意識を持つこと。これが批判的愛着が育む責任感です。 

子どもたちが後に書くOREREO型論文(Opinion-Reason-Example-Reason-Example-Opinion=主張‐理由‐例‐再主張のフォーマットで書く論文のこと)では、この責任感が具体的な形として表れます。例えば、以下のような内容が書かれています。

「函館の教育に読書の楽しさを伝える工夫が必要」
「若者の流出を防ぐには地元で夢を実現できる環境を」
「ゲームを活用した世代間交流の場づくりを」 

―――これらすべてに共通するのは、「自分」という主語であり、「地域のために自分が何かをする」という思いです。 

地域の未来を、他人事ではなく自分事として捉える。この責任感こそが、批判的愛着によって育まれる重要な道徳的価値なのです。 

そしてこの後、国語の授業では野矢茂樹の「考える技術」を読み、「考えること」「問い続けること」の意味を深く理解していきます。「感じた」と「考えた」の違いを問われた子どもたちは、この後の教材で、思考することの本質に触れていくのです。 

「批判的愛着」を言語化する—OREREO型ミニ論文 

単元の後半では、子どもたちにOREREO型のミニ論文を書いてもらいます。テーマは二つ。 

課題A:「私が西高で学びたいこと」 
課題B:「函館の課題とそれにどのように向き合うか」 

この論文執筆のプロセスで、子どもたちは自分の中にある批判的愛着を言語化していきます。ある子どもは次のように書きました。

「私は、函館の教育には『読書の楽しさを伝える工夫』がもっと必要だと考えます。函館には優れた図書館や文学にゆかりのある場所が多いのに、それらを十分に活用した授業や取組が少ないように感じます。だからこそ、本の面白さに気づくような授業づくりや地域の読書資源を活かす取組が必要だと思います。」 

また別の子どもは、次のように書きました。 

「私は、若者の流出を防ぐには、『地元で夢を実現できる環境』を整えることが最も重要だと考えます。若者が地元に留まる・戻るためには、『夢を描き、実現できる仕組み』と『暮らしやすさの保障』が欠かせません。函館もまた、若者が自らの未来を託せる場所となるよう、多角的な施策を展開するべきだと私は考えます。」 

さらに別の子どもは、自分の趣味を通じて地域貢献を考え、このように書きました。 

「私は対戦型のゲームを活用して、函館の世代間交流や教育支援に役立てたいと考えています。函館の公民館や学校で、例えば『スプラトゥーン』のような協力型の対戦ゲームを使ったチーム対抗戦を企画すれば、年齢を問わず楽しみながら人との関わりを学べる場になります。」 

これらの論文を読むと、子どもたちが決して地域を見捨てていないことがわかります。むしろ、課題を直視しながらも、「自分なりのやり方で貢献したい」という強い意志を持っているのです。読書、若者支援、ゲームを使った交流―――アプローチは多様ですが、根底にあるのは「函館を良くしたい」という思いです。これこそが、批判的愛着の具体的な表れなのです。 

 AI時代だからこそ、人間の「問い」が大切 

この論文作成の際、私は子どもたちにChatGPTなどの生成AIを「壁打ち相手」として活用することを推奨しています。 

ただし、AIの使い方には明確なルールがあります。

  • AIは「答えを教えてくれる存在」ではなく「思考を深める対話相手」 
  • 批判的思考を常に働かせ、AIの回答を鵜呑みにしない 
  • 自分の意見を明確にしてから、AIと対話する 
  • たくさん案を出させて自分で選ぶ

AI時代だからこそ、「どんな問いを立てるか」「どう考えるか」という人間にしかできない部分が重要になります。AIに丸投げするのではなく、自分の頭で考え、AIを使いこなす力を育てることが、これからの時代には不可欠なのです。 

 評価の視点— 数値化できない成長 

この授業の成果を、従来のテストの点数で測ることはできません。しかし、子どもたちの変化は確実に起きています。 

授業後の振り返りからは、以下のような声が聞こえてきます。 

「内容もとても面白く自分の興味を引きました」 
「色々な側面から考えることで函館を捉え直すことができた」 
「新しい発見があった」
「興味がわきました」 
「とても楽しかった」 
「積極的に探究したいと思いました」 

これらの言葉から、子どもたちが地域に対して主体的に関わろうとする姿勢、つまり「批判的愛着」を育み始めていることが読み取れます。 

また、この授業を通じて育まれる力は、函館西高校が掲げる「五つの力」とも深く結びついています。 

  • 自己開示力: 自分の考えや感情をGoogleスライドで表現 
  • 課題発見力: 魅力度と幸福度のギャップから地域課題を発見 
  • 段取力: 限られた時間の中で思考を整理し、論文にまとめる 
  • 思考力:「感じた」と「考えた」の違いを理解し、批判的に思考する 
  • 発信力: OREREO型論文で自分の意見を論理的に発信 

これらの力は、テストでは測れませんが、子どもたちがこれから生きていく上で、何よりも大切な力なのです。 

 3年後の彼らへ— 批判的愛着が導く進路選択 

この授業から3年後、子どもたちは卒業を迎えます。その時、彼らは函館に残るかもしれないし、出ていくかもしれません。しかし、どちらを選んだとしても、彼らの心には「批判的愛着」が根付いているはずです。 

函館に残る子は、地域の課題を知りながらも「だからこそ、ここで何かをしたい」という思いを持って、地域の未来を担う人材になるでしょう。函館を出る子は、「いつかこの街に恩返しをしたい」「遠くからでも応援したい」という思いを持って、函館の応援団として活躍するでしょう。そして、一度出てから戻ってくる子もいるかもしれません。外の世界で学んだことを持ち帰り、新しい風を吹き込んでくれるでしょう。そのとき彼らは、函館西高校の学校経営方針(図10)が示す「Landing」と「Support」の意味を、深く実感しているに違いありません。 彼らが将来どの道を選んでも、その選択は「逃げ」ではなく「選択」になる。それこそが、批判的愛着が育む最大の力なのです。 

図10 図10 函館西高校の令和7年度学校経営方針
図10 函館西高校の令和7年度学校経営方針

【注釈】
(注1)Tuan, Y. (1974). Topophilia: A Study of Environmental Perception, Attitudes, and Values. Prentice-Hall.
(注2)Proshansky, H. M., Fabian, A. K., & Kaminoff, R. (1983). Place-identity: Physical world socialization of the self. Journal of Environmental Psychology, 3(1), 57-83.

参考文献 
『地域ブランド調査2024』 株式会社ブランド総合研究所 (2024).
https://news.tiiki.jp/05_research/survey2024
『全47都道府県幸福度ランキング 2024年版』 
一般財団法人 日本総合研究所 (編) / 株式会社 日総研出版 2024  

※この連載は毎回執筆者が交替し、原則として毎週公開します。どうぞお楽しみに!

編集委員・藤原友和先生による共著・編著、好評発売中です。

単行本「オリジナル地域教材でつくる!「本気!」の道徳授業」カバー
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