人間関係と生産性を高める、「非公式」な最適解~インフォーマル・コミュニケーションのすすめ~

「無駄話をしている暇があったら、やるべきことをしなさい」。勉強や仕事の合間に、仲間と楽しくコミュニケーションしていたら、そんなふうにたしなめられた経験が、みなさんにも必ずあると思います。それは非効率なことだと思う人が大半ではないかと思いますが、実は生産性や効率を最大限に高めるためには、こうした非公式な関わり合い=インフォーマル・コミュニケーションが必要だということが分かってきています。今回、詳しく見ていきましょう。
執筆/株式会社電通総研 研究員・慶應義塾大学SDM研究所 研究員・元横浜市公立小学校教諭
岡田芳樹
シン・コミュニケーション#5
目次
あなたは「学習性無力感」を感じてませんか?
「頑張るのはだるいなぁ」「どうせ誰も認めてくれないよな」「私何のために働いてるんだろう」…。
これらは「学習性無力感」と呼ばれます。
自分のこれまでの経験から、「どうせ努力しても報われない」と思い込み、自発的な行動を諦めてしまう心理状態のことです。
この定義を聞いてドキッとした人は多いのではないでしょうか。
実は、日本人は遺伝子的に不安感受性が高い※ことが判明しており、遺伝的観点から学習性無力感を抱きやすいのではないかと考えられます。
また、学校教育では減点方式で成績をつけることが当たり前であり、教師と児童や、部活動などでの先輩・後輩関係など、上下関係を重視する格式ばった人間関係を体験することが多いために、日本人は子どもの頃から精神的に疲弊しやすい下地をもっていると言えます。
こうして幼少期から学んできた人間関係の延長線上に社会があるわけですから、日本人に学習性無力感に陥っている人が多いというのは、否定しようがない現状です。
学習性無力感はその人から生産性、創造性や自主性を奪い、結果としてメンタルダウンに陥らせる大変危険な思考ですので、私としては立派な社会課題だと認識していますし、その解決に国や自治体は尽力すべきだと考えています。
では、これには大規模な制度を使うような、社会改革が必要でしょうか?
いいえ、私は意外にもコミュニケーション、とくに個々人を発信源とするインフォーマル・コミュニケーションと言われるものがこの解決の切り口になるのではないか、との仮説を立てています。
古くから言われてきた『一隅を照らす』です。あなたの小さな行動をきっかけに、この厄介な思考から脱し、周りの人間関係も変えていけるかもしれない…。
というわけで、今回はこの聞き慣れない「インフォーマル・コミュニケーション」について論じたいと思います。
※=日本人の約7割が、セロトニントランスポーターSS型という、不安を感じやすくストレスに弱い傾向を持つと言われています。同時に、奥ゆかしく集団の和を大切にする、日本人の国民性とも関係があるのではないかと言われています。
インフォーマル・コミュニケーションって何?
「インフォーマル・コミュニケーション」。それは社会におけるコミュニケーション領域の中で、近年特に注目を集めているものです。
直訳すると「非公式会話」で、前回まで論じてきた「雑談」も、この中に含まれます。
雑談は業務や授業などの公式な場で、息抜きのようにして挟まれることが多いのではないでしょうか。インフォーマル・コミュニケーションは仕事以外の場、つまり休憩時間や放課後などに交わされるコミュニケーションを指します。
一見して仕事や学業とは関係ないと思われる「ただの無駄話」が、なぜ、近年注目されているのでしょうか。
それは、このコミュニケーションによって、チームメンバー同士が積極的に関わり合い、健全な組織風土をつくり、生産性向上やイノベーションにも大きく影響を与えることがわかってきたからです。
これは、人間が感情の生き物であることを立証する事実です。人と人が共感し、友情や心理的絆を結ぶことが大事、ということです。これは仕事の業務伝達や形式的な会話などからは絶対に生まれません。そして、どれだけAIが発達しようとも、この社会が人間社会である以上、人の感情の重要性は変わらないでしょう。
