学年末、子どもたちのサプライズ計画に担任は!?【4年3組学級経営物語24】
3月① 「来年度の飛躍に向かって」レッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。いよいよ学級じまいの3月。子どもたちはソワソワ。担任に気づかれないよう、裏で内緒の作戦が進められているようです。まだまだ未熟な渡来先生は、子どもたちの作戦に気づくのでしょうか!?
(3月の回は、新作書き下ろしです)
目次
<登場人物>
大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。
新任研修で担任不在の学級
「頑張っていたぞ、子どもたちは。新任研修で担任が留守でもな…。ああ了解…、お疲れ様」
放課後の職員室。長い電話を終えた大河内巌先生が、葵ゆめ先生と大和川強くんに呟きます。
「最後の新任研修会なのに、学級を気にしてグズグズと…。研修は教師の義務だと出張させたが、次は心配して長電話だ。渡来くんらしいな」
クスッと笑った後、真顔で質問をする葵先生。
「で、3組の子たちが…、『感謝の気持ちを渡来先生に伝えたいから、自習時間にサプライズの方法を話し合わせてほしい』と頼んできたのですか?」
「担任出張中の今日がチャンスだったんですよ。自習課題は、必ずやり遂げさせますので!」
子どもたちのサプライズにかなり肩入れをする大和川くんに、大河内先生は温かな視線を向けました。
イワオジの目にも涙
「あの話をしたんだな…、3組の子どもたちに」
更衣室でジャージを脱ぐ大河内先生。傍らで着替える大和川くんが真顔で答えます。
「ずっと考えていたんですよ、あの子たち。渡来先生に感謝の想いをどう伝えるかを…。だから、僕たちのサプライズの思い出を語りました」
「あれは、卒業式前日の帰りの会だったな。私の話が終わった瞬間、君たちが『ありがとうイワオジ』の替え歌を歌い出した。…嬉しかったぞ」
「イワオジの目にも涙…、今でも覚えています」
「そんなこともしゃべったか。プライバシー侵害だ」
帰り支度を済ませ、ニヤッと笑う大河内先生。
「創造は模倣から始まる…。大和川流のサプライズから創られていく活動を見守っていこう」POINT
【既習事項の活用について】
創意工夫の基盤は、これまで獲得した知識や経験等です。つまり、習ったことや体験したことをどう効果的に「活用」するかが、創意工夫を充実させるポイント。教科だけでなく、領域や日常の体験を有機的に関連させた「カリキュラムマネジメント」が重要です。
トップ・シークレットを守れ!
翌日、学年会が早く終わったので新任研修のレポートを仕上げようと席を立つ渡来勉先生。
「時は金なり。学年末にトライだ!…です」
何故か雑談を始める大和川くんと葵先生を振り切り、放課後の教室に急ぎます。
教室のドアを開けると、驚くマリたちの姿が目に入りました。申し合わせたように手元の画用紙を隠します。
「えっ、何をしてるんだ? …その画用紙は?」
『ああ…、サプライズの準備が。・・・バレちゃう!』
心の中で悲鳴を上げるマリたち。不思議そうに近づいてくる渡来先生。…内緒で準備しているのに、絶体絶命のピンチです。POINT
その時、葵先生が、突然教室に入ってきました。
「お願いした掲示物、描いてくれているかな?」
目配せする葵先生、その意図に気づいたマリ。
「あ…、はい。今、描いています。葵先生!」
『救いの女神だ…』と、心の中で手を合わせるマリたち。
「みんな、ありがとう。…もう下校時刻よ、正門まで送るわね」
ポカンとする渡来先生を残し、3組の子たちは教室を抜け出します。
正門近くで葵先生が立ち止まりました。
「バレなくてよかったね、…サプライズの準備」
「知ってたの! ゆめ先生、最高にカッコいい」
マリのニコニコ顔を、嬉しそうに見る葵先生。
「素敵な笑顔だね…。マリはすごく成長したよ」
「トライだ先生のお陰よ。そのお礼がしたいの。でもね…、ゆめ先生にもいい事があるんだよ!」
不思議そうな葵先生に別れを告げるマリたち。
そして、三学期は瞬く間に過ぎていき…、学年末のお楽しみ会の日になりました。
【自治的活動範囲について】
子どもたちの自主的な活動でも、「活動場所」や「活動時間」等は安全性や学校全体の予定を考慮して教師が決めます。自主的活動の目的を達成されるよう、見通しを持ち次のように調整、指導していきます。(サプライズのような活動も、例外ではありません。適切な方法で見守っていく必要があります)
1 自主的活動の目的を達成するために、教師が適切に調整
・教育課程や施設・設備の利用の変更に関わる問題
・人権、健康・安全等に関わる問題、等
2 子どもたちの自治的活動の範囲外であることを指導
・金銭の徴収や物品の授与等に関する問題
・学校のきまりに関する問題、等
(3月②につづく)