学年末、子どもたちのサプライズ計画に担任は!?【4年3組学級経営物語24】

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学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
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3月① 「来年度の飛躍に向かって」レッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。いよいよ学級じまいの3月。子どもたちはソワソワ。担任に気づかれないよう、裏で内緒の作戦が進められているようです。まだまだ未熟な渡来先生は、子どもたちの作戦に気づくのでしょうか!?

(3月の回は、新作書き下ろしです)

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。
大和川強

大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。

新任研修で担任不在の学級

「頑張っていたぞ、子どもたちは。新任研修で担任が留守でもな…。ああ了解…、お疲れ様」

放課後の職員室。長い電話を終えた大河内巌先生が、葵ゆめ先生と大和川強くんに呟きます。

「最後の新任研修会なのに、学級を気にしてグズグズと…。研修は教師の義務だと出張させたが、次は心配して長電話だ。渡来くんらしいな」

クスッと笑った後、真顔で質問をする葵先生。

「で、3組の子たちが…、『感謝の気持ちを渡来先生に伝えたいから、自習時間にサプライズの方法を話し合わせてほしい』と頼んできたのですか?」

「担任出張中の今日がチャンスだったんですよ。自習課題は、必ずやり遂げさせますので!」

子どもたちのサプライズにかなり肩入れをする大和川くんに、大河内先生は温かな視線を向けました。

イワオジの目にも涙

「あの話をしたんだな…、3組の子どもたちに」

更衣室でジャージを脱ぐ大河内先生。傍らで着替える大和川くんが真顔で答えます。

「ずっと考えていたんですよ、あの子たち。渡来先生に感謝の想いをどう伝えるかを…。だから、僕たちのサプライズの思い出を語りました」

「あれは、卒業式前日の帰りの会だったな。私の話が終わった瞬間、君たちが『ありがとうイワオジ』の替え歌を歌い出した。…嬉しかったぞ」

イワオジの目に涙

「イワオジの目にも涙…、今でも覚えています」

「そんなこともしゃべったか。プライバシー侵害だ」

帰り支度を済ませ、ニヤッと笑う大河内先生。

「創造は模倣から始まる…。大和川流のサプライズから創られていく活動を見守っていこう」POINT

【既習事項の活用について】
創意工夫の基盤は、これまで獲得した知識や経験等です。つまり、習ったことや体験したことをどう効果的に「活用」するかが、創意工夫を充実させるポイント。教科だけでなく、領域や日常の体験を有機的に関連させた「カリキュラムマネジメント」が重要です。

トップ・シークレットを守れ

翌日、学年会が早く終わったので新任研修のレポートを仕上げようと席を立つ渡来勉先生。

「時は金なり。学年末にトライだ!…です」

何故か雑談を始める大和川くんと葵先生を振り切り、放課後の教室に急ぎます。

教室のドアを開けると、驚くマリたちの姿が目に入りました。申し合わせたように手元の画用紙を隠します。

「えっ、何をしてるんだ? …その画用紙は?」

『ああ…、サプライズの準備が。・・・バレちゃう!』

心の中で悲鳴を上げるマリたち。不思議そうに近づいてくる渡来先生。…内緒で準備しているのに、絶体絶命のピンチです。POINT

その時、葵先生が、突然教室に入ってきました。

「お願いした掲示物、描いてくれているかな?」

目配せする葵先生、その意図に気づいたマリ。

「あ…、はい。今、描いています。葵先生!」

『救いの女神だ…』と、心の中で手を合わせるマリたち。

「みんな、ありがとう。…もう下校時刻よ、正門まで送るわね」

ポカンとする渡来先生を残し、3組の子たちは教室を抜け出します。

正門近くで葵先生が立ち止まりました。

「バレなくてよかったね、…サプライズの準備」

「知ってたの! ゆめ先生、最高にカッコいい」

マリのニコニコ顔を、嬉しそうに見る葵先生。

「素敵な笑顔だね…。マリはすごく成長したよ」

「トライだ先生のお陰よ。そのお礼がしたいの。でもね…、ゆめ先生にもいい事があるんだよ!」

不思議そうな葵先生に別れを告げるマリたち。

そして、三学期は瞬く間に過ぎていき…、学年末のお楽しみ会の日になりました。

【自治的活動範囲について】
子どもたちの自主的な活動でも、「活動場所」や「活動時間」等は安全性や学校全体の予定を考慮して教師が決めます。自主的活動の目的を達成されるよう、見通しを持ち次のように調整、指導していきます。(サプライズのような活動も、例外ではありません。適切な方法で見守っていく必要があります)

1 自主的活動の目的を達成するために、教師が適切に調整
 ・教育課程や施設・設備の利用の変更に関わる問題
 ・人権、健康・安全等に関わる問題、等
2 子どもたちの自治的活動の範囲外であることを指導
 ・金銭の徴収や物品の授与等に関する問題
 ・学校のきまりに関する問題、等

(3月②につづく)

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