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個別最適化時代だからこそ、知っておきたい児童の学びを深めるフィードバックの力<KPとKR>

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

若手教員として、授業を進めるうちに、発問や板書に追われて、児童の「今」の学びにしっかり反応できていないことはありませんか? 授業をただ進めるのではなく、児童一人ひとりに即座にフィードバックを与え、その学びを深めることで主体的な学習者を育てることができます。ソーンダイクの理論を基にしたフィードバック方法を、具体的な事例とともに考えてみます。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

KPとKRのイメージ

1 KR理論・KP理論とその基本概念

KR(Knowledge of Results)とは、行動主義心理学者エドワード・ソーンダイクが提唱した学習理論で、学習者が自分の行動の結果を知ることが、学習を深める上で非常に重要だという考え方に基づいています。
この理論によると、学習者は自分の行動がどのような結果をもたらしたのかを素早く知ることで、次に取るべき行動が明確になり、その結果を強化して学習を深めることができるとされています。

たとえば、算数の問題で児童が正解を出した場合、
「正解だね!」
といったフィードバックを受けることで、その結果が強化され、児童はその方法やアプローチを次回も使うようになります。これがKRの基本的な考え方です。

KRの効果的な活用として、授業中の児童の行動に対する即時のフィードバックが重要です。しかし、KRだけでは不十分です。学習者がただ結果を知るだけでは、次に取るべき行動に深みが出ません。ここで登場するのが、KP(Knowledge of Performance)です。
KPは、「パフォーマンスの知識」とも呼ばれ、学習者がどのように行動したか、その過程に関するフィードバックを提供します。つまり、児童が行った行動のプロセスを明確にし、どの部分が良かったのか、どこを改善すべきかを示すことが、学びを深める鍵となります。

初任者や若手教員は、授業を進めることに必死になり、時間内に内容をカバーすることに意識が向きがちです。このように「授業の流れ」を重視するあまり、児童一人ひとりの反応に十分に目を向けていないことが本当に多いです。授業中、児童がどのように理解しているのか、どこでつまずいているのかを常に観察し、その学びのプロセスに即時に反応することが大切です。例えば、全体に向けて進行している授業の中でも、個々の児童の反応に注意を払い、その反応に基づいたフィードバックを行うことが、学びを深めるための鍵となります。

2 KRとKPを組み合わせたフィードバックの重要性

授業中におけるKRとKPの使い分けをさらにみていきます。
一例ですが、算数の授業で児童がある問題を解いたとき、その結果が正解の場合、まずはその結果に対するフィードバック(KR)を行います。これにより、児童は自分の行動が正しかったことを確認し、次回の学習に自信を持って臨むことができます。
しかし、KRだけでは深い学びにはつながりません。次に、どのようにその結果に至ったのか、行動の過程(KP)に注目すること重要です。この段階でのフィードバックは、児童が次に取るべきアクションを明確にし、次回の学習につながっていきます。
シンプルに考えると以下のようなシーンです。

KRの事例

児童が算数の問題を解いた結果、
「正解!」
というフィードバックを受け取ったとき、その正解が強化され、次回も同じアプローチを使用する意欲が湧いてきます。これにより、児童は自分の成功を再現しようとします。こうして学習効果が高まります。

KPの事例

「どうしてその方法を使ったの?」
「この部分は少し見直してみようか?」
という過程に関するフィードバックは、児童が自分の思考プロセスを振り返り、どこでうまくいったか、どこで課題があったのかを理解するための助けになります。

たとえば、計算の際に間違いを見つけた場合、
「なぜその答えを出したのか、考えてみよう」
といった質問を投げかけることで、児童は自分の思考の中で改善点を見つけることができます。

このように、KRとKPを組み合わせたフィードバックは、学びをより効果的に促進するために不可欠な要素となります。

3 水泳のフォーム例とKPの活用

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