「コグトレ」でコミュニケーション力を育てよう〔段階式問題解決トレーニング(あなたならどうする?)〕#23ダウンロードプリント付


23回目の今回は、対人関係がからんだ問題解決のスキルを養う「段階式問題解決トレーニング」のなかの〔あなたならどうする?〕にチャレンジしましょう。「コグトレ」とは、宮口幸治先生たちが開発した「コグニティブ(認知)機能」に着目したトレーニングのことで、身体面、学習面、社会面の3方面から包括的にトレーニングする特徴があります。本連載では、社会面のトレーニング(認知ソーシャルトレーニング)を基に、感情を上手にコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりするコミュニケーション力などを高めるトレーニングを紹介します。ダウンロードプリントを活用して、ぜひ試してみてください。
監修/立命館大学教授・宮口幸治
目次
認知ソーシャルトレーニングとは
コグトレの認知ソーシャルトレーニングは、感情を統制する、危険を予知する、対人スキルを高める、問題を解決するなど、社会で生きる力を養うトレーニングです。以下の表のように「段階式感情トレーニング」「危険予知トレーニング」「対人マナートレーニング」「段階式問題解決トレーニング」など、4つのトレーニングから成り立っています。
今回は、「段階式問題解決トレーニング」のなかから、〔あなたならどうする?〕の課題を紹介します。
このトレーニングは、実際に起こり得る問題に直面した際に、自分の力で考えて解決できる問題解決の力を養います。困った問題に対し、どうなるのがよいのかという目標を決め、解決策、その予想される結果まで考え、最適な解決策を考える力を鍛えます。
〔あなたならどうする?〕にチャレンジ!
ねらい
ここでは目標が決まっていない困った例について、目標と解決策、その予想される結果まで予想し、最適な解決策を考えます。段階式問題トレーニングの最終段階です。
進め方
① シートの上段に困った場面を含んだ短い物語やイラストがあります。まず、どうなったらよいか目標を決めます。
② 次にその目標に対してどう解決していけばよいかを考え、それぞれの結果を想像します。
③ 最後にどれを選ぶか、理由とともに考えてみましょう。
※問題解決のためにいかに多くの解決策を出せるかが大切です。そのため、最初から適切な解決策を求めるのではなく、思考を柔軟にして思い付いた順に解決策を書いてもらいます。
※子どもによって、問題の解決策は様々です。もし、非現実的な方法や不適切な解決策が出てきても、それらを否定しないことが大切です。解決策自体を否定すれば思考を固くする恐れがあります。非現実的な方法や不適切な解決策が出た場合は、それを実行すればどうなるかを考えさせるようにしましょう。
課題シート
回答例:
(1)万引きしないで、仲間に入れるようになる。
(2)
1 万引きしない。→ 仲間に入れない。
2 万引きをする。→ 仲間に入れるけど、自分が犯罪者になってしまう。
3 万引きしないように説得する。→ 説得できないと思う。
4 万引きを断って、グループに入らない。→ 犯罪者になるなら、グループに入らないほうがよい。でもそのグループからいじめられるかもしれない。
5 先生に相談する。→ ちくったと言われ、いじめられるかもしれない。
(3)5
(4)
犯罪をするのは絶対にいけないと思う。万引きをするようなグループには入りたくない。でも1人はさびしいので、先生に相談してみる。
授業の進め方
進め方は以下の手順を参考にしてください。※詳しくは『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館)をご覧ください。
宮口幸治(みやぐちこうじ)
立命館大学教授 一般社団法人日本COG-TR学会代表理事
京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、子どものこころ専門医、日本精神神経学会精神科専門医、臨床心理士。著書『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)が大ベストセラーになる。
取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ、荻野琴美(オーデザインチャンネルズ)
出典:『社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング②対人マナートレーニング/段階式問題解決トレーニング編』(三輪書店)

著/宮口幸治 ・神島裕子
新書判 192ページ
逆境に苦しんでいる子への支援のヒントが満載
どの親のもとで生まれたかによって子どもの人生が左右される現実をカプセルトイにたとえた「親ガチャ」という言葉。 『ケーキの切れない非行少年たち』の著者と気鋭の哲学者が、全ての人が幸せを追求できる社会のあり方を考えながら、逆境を乗り越えるための心の持ち方、人生を切り開く力のつけ方を、哲学・精神医学・心理学の観点から具体的に提唱する。

『子どもの認知能力をグングン伸ばす! マンガコグトレ入門』(小学館)
著/宮口幸治
A5判 224ページ
教室を舞台にしたマンガでコグトレの進め方を楽しく具体的に紹介しています。「コグトレを取り入れたいけれど、何からどのように始めたらよいかわからない」という方にもピッタリの1冊です。「コグトレ」の代表的な50種のトレーニングのねらいや進め方・ポイントなどを、マンガを交えてやさしく解説。紹介する課題のワークシートはすべてダウンロード可能。