小5特別活動「来年の1年生と交流会をしよう」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小5特別活動の指導アイデアです。12月は、<学級活動⑴「来年の1年生と交流会をしよう」>を紹介します。
最高学年となる来年度の自分たちの姿をイメージし、互いのよさを生かしながら協働してよりよい集団にしていこうとする気持ちを育てることを目指します。
執筆/滋賀県公立小学校教諭・忽那沙知
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
滋賀県特別活動部会顧問 元滋賀県公立小学校校長・鈴木靖彦
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 5年〇組の係を決めよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 地震のときの正しい行動の仕方
7月 学級活動⑴ 1学期がんばった会をしよう
9月 学級活動⑵ イ 互いのよさの認識
10月 学級活動⑴ 5年〇組の運動会のめあてを決めよう
11月 学級活動⑶ ウ 目指す自分になるための自主学習
12月 学級活動⑴ 来年の1年生と交流会をしよう
1月 学級活動⑶ ア 最高学年に向けて取り組むこと
2月 学級活動⑴ 6送会で感謝の気持ちを伝えよう
3月 学級活動⑴ 5年〇組の一年を振り返る会をしよう
1.5年生と5歳児の5・5(ゴーゴー)交流について
滋賀県では、来年度小学校に入学する5歳児と小学校5年生の子供との交流を「5・5交流」と呼んで、実施している学校がたくさんあります。これは5歳児が来年4月に小学校へ入学した際に、6年生に進級している5年生の子供たちとの異年齢交流活動で、年間複数回行う場合もあります。今回は、遊びや交流の内容について話し合う学級活動⑴の実践を紹介します。
5・5(ゴーゴー)交流のねらい
●幼稚園や保育所等にとっては
小学校への円滑な接続のために、入学前の幼児の不安を軽減させ、入学への意欲付けをする。
●小学校にとっては
地域の幼児との交流場面において、他者の役に立つことや社会に貢献することの喜びを実感し、高学年としてのリーダー意識を育てる。
自分たちで話し合って決めた幼児への関わり方を通して、自らの成長とともに、学級の友達のこれまで知らなかった優しさや面倒見などのよさに気付き、学級内の相互理解を深める。
2.【本時のねらい】3学期に向けて、学校に目を向けた活動を!
2学期の締めくくりとなる12月の学級会は、次年度の1年生となる幼児との交流を行うなかで、最高学年となる来年度の自分たちの姿をイメージし、学級や学校の一員としての自覚を高めて、互いのよさを生かしながら協働してよりよい集団にしていこうとする気持ちが高まるようにします。
3.【事前の活動】話合いの準備をする
<あらかじめ決まっている学校の行事等の取組を話し合う場合>
今回のように、学級活動⑴に関する内容には、「ウ 学校における多様な集団の生活の向上」として、「子供会など学級の枠を超えた多様な集団における活動や学校行事を通して学校生活の向上を図るため、学級としての提案や取組を話し合って決めること」があります。
このような場合にも「交流会があるから、次の学級会で話し合いましょう」と、先生が議題を決めて学級会を行うのではなく、子供たちが必要感をもち、計画委員会で議題として選定することが大切です。
その際も計画委員が「次の5・5交流が12月〇日です。前回の交流会は学年全体で交流したけれど、今回は学級ごとに交流するから、次の学級会では5・5交流の内容について話し合おうと思いますが、皆さんどうですか?」と、提案理由を説明しながら、学級みんなの納得を得て、議題を決定するようにします。
本校では、年度当初にも5・5交流を実施しており、年間の交流計画や分担を5年生の子供たちは理解しています。学年当初から交流の予定が決まっているため、予定表に記入して掲示しておき、子供たちが交流について見通しをもったり、5歳児との交流を楽しみにして、自分事として意識して過ごしたりすることができるようにしています。
本実践例の5・5交流などのような「学年単位での集会活動」は、学級が複数ある場合、交流内容などを学級で話し合って決めても他の学級と内容が重なってしまって修正が必要になったり、せっかく学級で話し合って決めたことが学年で採用されなかったりする場合が考えられます。集会活動のねらいに即して、事前に各学級担任と学級の代表の子供で話し合い、「活動内容を各学級で1つずつ話し合って決める」など、各学級での話合いが生かされるように範囲や分担について明確にし、共通理解を図っておくことで、それぞれの学級での子供たちの発意・発想を生かした活動となります。
⑴ 議題を選定する
学級会の1週間ほど前になると、計画委員会で、議題箱をあけて次の学級会に向けて準備を始めます。
今月は5・5交流があるから、そのときにすることを決めようという意見が入っているよ。
私たちのときも5年生が遊んでくれて楽しかったよね。
前回は学年での交流だったけれど、今回は各学級に分かれて交流するから、内容を工夫したいな。せっかく来てくれるのだから、次に交流するときにも覚えていてくれるようなことをしたいね。
5歳児さんにとっても、ぼくたち5年生にとっても、楽しい交流にしたいね。
交流の準備をするときにみんなで協力できれば、3学期に向けてもっと仲良くなれるんじゃないかな?
そろそろ準備をしないと間に合わないよね。
では、次の学級会の議題は、「5・5交流をしよう」で、みんなに提案してみましょうか。
いいと思います。賛成してもらえたら、他に出ていた案は係でしてもらえるか聞いてみようよ。
<朝の会や帰りの会で>
(計画委員)次の5・5交流が12月〇日にあるので、次の学級会では5・5交流について話し合おうと思いますが、どうでしょうか?
いいと思います。
(計画委員)では次の学級会は「5・5交流をしよう」の議題で、みんなで話し合います。今回は学級ごとに交流します。
前の交流会のときよりも、もっと仲良くなりたいな。
⑵ 計画委員会で学級会の準備をする(計画委員会・提案者)
議題が決定したら、学級会に向けて計画委員会を開きます。計画委員会では、提案理由を深めたり、話し合うこと、話合いのめあて・決まっていることなどを決め、学級会ノートにまとめて、学級のみんなに配ります。
①提案理由を深める
提案理由は、合意形成をはかる際のよりどころとなるものです。提案者の思いを大切にしながら、共通認識できるように子供たちの言葉でまとめます。
提案理由(例)
もうすぐ5・5交流で、来年1年生になる5歳児が〇〇小学校にまた来てくれます。私は、保育所の頃は小学校に入学するのはちょっと不安だったけれど、小学校でたくさんのお兄さんやお姉さんと遊んでもらって安心できたことを覚えています。
前回は学年で5・5交流会を行って、楽しく過ごせました。今回の交流会は、学級ごとの交流だから、5歳児が喜んでくれる遊びをしたり、入学が楽しみになるようなことを一緒にしたりして、前よりもっと仲良くなりたいです。
そして、みんなで来年の1年生のために、力を合わせて準備をすれば、3学期に向けて学級のみんながもっと仲良くなり、協力し合う仲間になれると思って提案しました。
②「話し合うこと」「話合いのめあて」「決まっていること」を決め、学級会ノートを作成する
⑶ 議題に対する問題意識を高める
朝の会や帰りの会等を利用して、学級会ノートを配付し、今回の議題や提案理由について計画委員と共に説明をします。日時や場所など決まっていることがある場合は、条件としてこのときにきちんと伝えておく必要があります。
(司会)次の学級会の話合いのめあては、5・5交流会で来年1年生になる5歳児さんと、もっと仲が深まる交流の内容を決めようです。
来年の1年生が喜んでくれることを考えたいけれど、何をすればいいかな?
前回は一緒に歌ったり、じゃんけん列車をやったりしたんだよね。今はどんな遊びが好きなのかな。
幼稚園や保育所の先生にみんながどんな遊びをしているか手紙で聞いてみるのはどうですか。
私は妹が保育所にいるので聞いてみます。
ぼくの弟は幼稚園児なので、聞けそうです。
私はこども園へのお迎えにいつも付いて行っています。そのときに見たり、聞いたりしてきます。
幼稚園や保育所、こども園に妹や弟のいる人は、今、どんな遊びをしているのか聞いてきて、みんなに教えてください。
⑷ 司会グループで学級会の活動計画を作成する(学級会の前日までに)
教師も一緒に、学級会の計画を作成します。みんなからはどんな意見が出ていて、どんな話合いになりそうかについて確認するようにします。このときICT端末を利用して、学級の友達の意見を見られるようにしておくと把握しやすく、話合いの流れを検討しやすくなります。
4.【本時の活動】学級会をしよう
⑴ 話し合うこと1 「5・5交流会で何をするか」
①出し合う
「出し合う」段階では、学級会ノートをもとに「5・5交流会で何をするか」について考えてきたことを、理由を付けて発表します。事前に短冊を用意して、出された意見の分類・整理をしながら貼るようにしていくと分かりやすいです。
私は、いす取りゲームがいいと思います。幼稚園や保育所の人たちは小学校のいすに座れるとうれしいと思うからです。
ぼくは、ハンカチ落としゲームがいいと思います。音楽があって、盛り上がるからです。
私は一緒に工作をするのがいいと思います。作りながら仲良くなれるし、作ったものを持って帰ると思い出になるからです。
③くらべ合う
「くらべ合う」の段階では、「出し合う」で出てきた意見について、「賛成」や「反対」を、理由をつけて話し合います。考えを深めていくためには反対意見も必要ですが、反対ばかりでは、学級の雰囲気が悪くなってしまいますし、よりよいものに決まりません。反対意見については、必ず改善策や代案を出し、どのようにすればよいかを話し合うようにし、建設的な話合いとなるように助言しましょう。
私は、いす取りゲームがいいと思いました。幼稚園に弟のお迎えに行ったときに、友達と楽しそうにしていたので、5歳児さんも楽しんでくれると思うからです。
ぼくは、ハンカチ落としに賛成です。妹が好きだと言っていたからです。
私は、いす取りゲームに賛成です。小学校のいすに座ってもらうと1年生になったみたいな気持ちになって、提案理由にあるような入学が楽しみになると思うからです。
ぼくも小学校のいすに座る経験ができることはよいと思うけれど、いす取りゲームは鬼になってしまうと見ているだけでつまらないと思うので反対します。それに、幼稚園や保育所の子には、1年生のいすは少し高いかもしれないと思いました。フルーツバスケットのほうが、楽しく仲良く遊べるのでいいと思います。
○○さんの意見を聞いて、ぼくも、フルーツバスケットがいいなと思いました。フルーツだけよりも、なんでもバスケットのほうがもっと楽しいと思います。だから、合体させてフルーツなんでもバスケットにしたらどうでしょうか。
私もフルーツなんでもバスケットのほうが、5歳児さんも私たち5年生も楽しく遊べて互いのことを知れると思うので賛成です。
ぼくもフルーツなんでもバスケットに賛成です。フルーツのほうが分かりやすい子もいると思うし、なんでもバスケットだけよりもフルーツもあったほうが小さい子も楽しくできると思います。
(司会)フルーツなんでもバスケットに賛成の人が多いので、遊びの1つ目はフルーツなんでもバスケットに決めてもいいですか?
賛成です。いいと思います。
(司会)それではもう1つの遊びについて、意見のある人はいますか?
私は、宝さがしをしたらいいと思います。見付けた宝をプレゼントしたら、5歳児さんが喜んでくれそうだからです。
ぼくは、工作がいいと思います。妹や弟は、いつも家で何かを作って遊んでいるから5歳児さんも喜んでくれると思います。それに、思い出になります。
私は、工作に反対です。工作は時間がかかるので、フルーツなんでもバスケットと一緒にするのは難しいと思います。思い出はあるとよいので、プレゼントを持って帰ってもらうのはどうですか?
④まとめる
「まとめる」では、「くらべ合う」で出た賛成・反対意見を基に、何をするのかみんなで決めていきます。「くらべ合う」と「まとめる」の段階は、明確に分かれるものではなく、一連の流れの中で工夫して合意形成を目指します。この学級のように「くらべ合う」の中でも合意形成ができた意見は先に決めておくこともよいでしょう。
(司会)2つめの遊びは、宝さがしとプレゼントを組み合わせて、宝さがしの宝をプレゼントにするとまとめてもいいですか?
私は宝をプレゼントするのはいいアイデアだと思うけれど、それだと誰に当たるか分からないので、5歳児さんそれぞれがほしいプレゼントにならないと思います。私はこれまでペアでお世話してきた○○ちゃんにプレゼントを渡したいです。
私も同じです。ペアの○○くんに折り紙でメダルをプレゼントしてあげたいです。
ぼくは、それでは宝さがしにならないと思いますが、どうですか?
私は、それなら宝はみんなからのプレゼントにして、最後に折り紙のメダルをペアの子にあげればいいと思います。
賛成します。いいと思います。
(司会)もう1つの遊びは、ペアになって宝探しをして、最後にペアの子に折り紙で作ったメダルを渡すに決めていいですか?
いいと思います。
⑵ 話し合うこと② 「必要な役割と分担はどうするか」
司会:それでは、来年の1年生と5年〇組で交流会をするために必要な役割を提案してください。司会、はじめの言葉、おわりの言葉、プログラムは、これまでの集会活動でも必要な係だったし、みなさんの学級会ノートにも書かれていたので決定にして、それ以外で必要な係を言ってください。
私はゲームの説明をする係が必要だと思います。
ぼくは、2つの遊びは、それぞれにチームをつくって準備したらいいと思います。
私も賛成です。そうすれば協力してできるからです。
質問です。宝は誰がつくるのですか?
宝をつくる係が必要だなと思います。それから、飾り付けをする係もあったほうが、幼稚園や保育園の子が、教室に入ったときに楽しい気持ちになってくれると思います。
賛成です。いいね。
(司会)では、ゲームは2つのグループに分かれて全員が担当して準備すること、それ以外に宝と飾りをつくる係や司会役などに決まりました。それでは決まった役割をタブレットで見ることができるようにしますから、自分がやりたい役割に自分の名前を入れてください。
<ICT端末の活用>
「何をするか」が決まっていないと役割は考えにくいので、これまでの集会活動の経験から必要だと考えられるものを事前に示しておき、それに加えて必要な役割について、ICT端末を利用して意見を募る方法も考えられます。また、やりたい役割に名前のマグネットを貼る代わりに、端末上で行うと時間がかからず効率的です。
★学級会での先生の役割は?★
学級会中は、基本的には教師は子供たちの話合いを見守ります。ねらいや提案理由からそれていきそうなとき、意見が対立しているときには、教師から「話合いのめあては何だったかな?」「提案理由を思い出してみようか」などと声をかけます。このとき、話合いは学級全員で行うものですから、司会だけではなく、学級全員に向けて伝えます。
5 事後の活動
⑴ 役割に分かれて準備をする
学級会で必要な役割について話し合い、分担が決まったら、協力して準備をします。お互いのがんばりが見えるように、進捗状況を掲示したり、朝の会や帰りの会などで報告をする時間を設けたりすると、学級みんなでつくる集会活動として一体感を感じることができます。
⑵ 来年の1年生(5歳児)を招待して、実践する
教師は子供たちが話し合って決めた交流のプログラムなどを幼稚園や保育所などの先生との打合せで伝えて共通理解を図っておきましょう。会の途中で子供たちが困ったときもできるだけ係や友達と助け合って会を進められるようにし、必要に応じて支援します。
⑶ 活動の振り返りをする
実践が終わった後は、なるべく早く振り返りを行います。
この会を通して「5年〇組のみんながもっと仲良くなって、協力できるようになりたい」と考えていたけれど、お互いのがんばりを見付けられましたか?
ぼくは、宝探しチームで、折り紙が苦手だったけれど、○○さんがとても上手でびっくりしました。
私は、飾りチームだったけれど、司会チームの人たちが手伝ってくれて、とても助けられました。うれしかったです。
私のペアの子が、宝がなかなか見付からなくて泣いてしまって困っていたら、○○さんが一緒になだめてくれました。○○さんは、年下の子にとても優しかったです。
私は、宝探しチームでしたが、準備をみんなが手伝ってくれて、5年○組が1つになった気がしました。みんなでがんばれてうれしかったです。
ぼくは、司会グループで、今日緊張してセリフがなかなか出てこなくて途中で止まってしまったけれど、みんなががんばれと言ってくれたから、安心できました。
私は、交流の準備をするときに最後に間に合わなくなりそうで慌てていたから、はじめから計画的にできるようにしないといけないなと感じました。
学級のみんなで、これまでの経験や得意なことを生かして協力し合って交流会を行うことができましたね。3学期はいよいよ6年生からバトンを受け取ります。今回のように、みんなで力を合わせて、すてきな高学年を目指しましょう。
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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