小6特別活動「学級チャレンジ会をしよう」指導アイデア
2学期は運動会や音楽会、学芸会といった学校全体で取り組む大きな学校行事が行われている学校が多いのではないでしょうか。そのような学校行事を通して子供たちは、みんなで同じ目標に向かって取り組む楽しさや充実感、達成感といったものを味わっていると思います。ここでは、学校行事での経験を生かして、自分たちで設定した目標に向かって学級で活動することを通して、卒業まで残すところ100日余りとなった学級での生活をより楽しく豊かにし、学級としての一体感を味わうことを目的とした実践を紹介します。
執筆/熊本県公立小学校教諭・上萩原萌生
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
尚絅大学教授・平野 修
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級チャレンジ会をしよう
12月 学級活動⑴ 卒業文集を作ろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けて
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう
本議題のねらい
本時では、学級みんなで協力し、自分たちで立てた目標に協力し合ってチャレンジする取組を行うことで、学級の団結力を高め、学級内のよりよい人間関係を構築するための活動を行います。記録達成に向けて、事前に練習をしたり、工夫を話し合ったりすることで、楽しみながら互いを励ましたり、認め合ったりする関係性を構築し、卒業に向けてより学級の絆を深めていくことを目的としています。
事前の活動
議題の選定
輪番制で決まっている計画委員と提案者、先生が一緒になって計画委員会を開きます。計画委員会の話合いでは、いくつか出された提案の中から、①学級で話し合って実践可能なもの、②時期的に適したもの、③学級全体の生活の充実・向上につながるもの、といった観点から議題を選定していきます。今回は、「運動会で6年生として学校のために活動したり、学校全体で1つになって取り組んだりすることができてとても楽しかった。今度は自分たちのクラスで1つの目標に向かって記録にチャレンジすることで、学級の団結力をさらに高め、仲を深めたい」という思いから、「学級チャレンジ会をしよう」が選定されました。
卒業まであと約90日、さらにクラスの仲を深めて何か思い出をつくりたいな。
最後の運動会、6年生としてみんな頑張ったよね。
1つのことに学校全体で取り組めて一体感があったなあ。
そうだ、今度はクラスみんなで何か1つのことにチャレンジする会を開いたらどうかな?
議題は、計画委員会で選定した議題案について帰りの会などで学級全体にはかり、決定します。議題が決定したら、事前に「決まっていること」を踏まえて、「話し合うこと」について自分の意見をもつようにし、問題意識をもって話合いに参加できるようにします。
<学級会ノート例>
<学級会活動計画例>
今回の学級会ではあらかじめ事前のアンケートをもとに計画委員会で種目について検討し、原案を提示することにしました。原案については、事前にどのような種目なのかを説明やイラストとともに、背面黒板の学級会コーナーに掲示しておき、分からないことがあったら、事前に共通理解を図るようにします。
※原案を立てて、出し合う段階を省略する場合は、事前アンケートなどを活用し、くれぐれも「計画委員会で決めたことをみんなで実践する」ということにならないように留意し、「やらされる活動」にならないようにします。
本時の活動
話し合うこと① 何の競技をするか
【出し合う】
事前アンケートをもとに計画委員会で検討した競技の短冊を黒板に貼り出し、確認します。
【出し合う】
発表する内容については、各係の活動内容や工夫を生かした創意あふれるものになるようにしましょう。そこで話し合うこと①では提案理由に沿って発表会の形態に関する意見を出し合います。
ポイント①「原案を立てる」
今回の学級会のように、「何をするか」を決める学級会の場合、様々な意見が出されることが想定されます。また、今回の議題のようにすぐに意見を出すのが難しく、学級会の時間に出し合った場合、十分に案が出ないかもしれません。そのため、あらかじめアンケートやICTなどを活用してクラスの意見を集め、計画委員会で集約、整理しておくと時間をかけず、スムーズに学級会を進めることができます。
計画委員会で原案を立てるメリットとしては、①話合いの目的にあった決定につながりやすい②出し合う段階を事前に行うことで、話し合う時間が十分確保できるなどがあります。一方でデメリットとしては新たな発想が生かされなかったり、多様な意見が出にくかったりします。
※計画委員会で原案を立てる以外に、議題により、学級会ノートに書かれた内容を計画委員会で検討して、提示する意見を絞り、「出し合う」段階を省略することも考えられます。
ポイント②「原案は事前に共有」
事前に帰りの会の時間や掲示を活用して計画委員会で絞った競技案を、学級全体で共有しておくことが大切です。競技の内容や実践方法などを理解した上で話合いを始められるので、スムーズに学級会を進めることができます。
【くらべ合う】
今回の学級会では種目を出し合う段階は事前にアンケートにより行っているため、本格的に意見交流が始まるのはこの<くらべ合う>の段階からになります。<くらべ合う>段階では、提案理由や決まっていることを根拠に原案で示された案を比べ合い、どの案が学級みんなで取り組む「学級チャレンジ」により適したものであるかを話し合います。
司会は、改めて提案理由や話し合うこと、決まっていることを確認し、どれがよりよいかを考えて、出ている案を比べやすいようにします。
(司会)この中から、どの競技にチャレンジするか決めます。意見を出してください。
僕は、「空き缶積み」は、準備するものもないので、簡単に取り組めそうだから、空き缶積みがいいと思います。
私は、「空き缶積み」はグループではできるけど、全員ではできないと思います。だから、それよりもみんなで協力できる競技のほうが今回の提案理由に合っていると思います。
私は、「大縄まわし」や「長縄連続とび」は、目標記録を達成するためにみんなで練習するので、提案理由の「クラスみんなで協力できる」に合っていると思います。
僕は「リレーマラソン」は、みんなでバトンを渡しながら励まし合って走れば、42.195キロを走れるので、やってみたいです。
私は「リレーマラソン」は楽しそうだけど、1時間で終わらないかもしれないから難しいと思います。
僕は、「連続けん玉」はけん玉をやったことない人が多いし、けん玉を持っていない人が多いから難しいと思います。僕もけん玉が苦手なので、もし途中でつっかえてしまったら、申し訳ない気持ちになって楽しく挑戦できないと思うからです。代わりに「みんなでジャンプ」なら、すぐできるし楽しみながら協力できていいと思います。
私は、「空き缶積み」は、グループ対抗にして昼休みとかにすると楽しいと思います。全員でないとできない「みんなでジャンプ」に賛成です。
「みんなでジャンプ」と「連続とび」は、1時間で一緒にできると思います。
出された意見をもとに、まとめていきます。
(司会)話合いの状況を見ると、「みんなでジャンプ」と「連続とび」の賛成意見が多く、提案理由にも合っているので、クラスみんなで取り組む競技は、「みんなでジャンプ」と「連続跳び」に決めていいですか?
いいと思います。
話し合うこと② クラスのまとまりを高め、仲が深まる工夫
(司会)それでは「クラスのみんなの仲が深まり、みんながまとまる工夫」について、何か意見はありますか?
僕は練習をするときのかけ声があるといいと思います。かけ声があると頑張ろうという気持ちになるし、跳ぶタイミングもつかみやすいと思うからです。
私は、いつ練習するのか計画を立てて、みんなで練習したらいいと思います。休み時間は委員会の仕事などもあるから、計画を立てておくと練習が進むと思います。
僕は、練習のときに音楽をかけるといいと思います。音楽に合わせて気持ちを合わせて跳ぶことができると思うからです。
私も音楽をかけると跳びやすい感じがするから、練習だけじゃなくて集会のときも音楽をかけたらいいと思います。
私はせっかくチャレンジするのだから、目標を立てたらいいと思います。
僕も目標に賛成です。目標があると挑戦するときに気持ちが高まるからです。僕はこれまで30回くらいしか続いたことがないので、100回は跳びたいと思います。
私も目標に賛成です。せっかくチャレンジするのだから、6年×100=600回にしたらどうでしょうか。
(司会)今出た工夫については、どれもできそうなので決定していいですか?(学級全員の了解のもと)
次に、必要な役割について話し合います。みんなの学級会ノートには、このような役割が書かれていました。(黒板係が短冊を貼る)
他に何か必要な役割がありますか?(新たに出された場合はそれを加える)
それでは役割分担をしましょう。
話し合うこと③ 必要な係
工夫について話し合った後は、必要な係について話し合い、役割分担をします。事前に学級会ノートに書かれたものを計画委員会で検討し、短冊に書いておきます。学級会当日は、他に付け加えたい係についてだけ聞くようにすると、スムーズに決めることができます。
役割分担の際、日ごろ一緒にいる仲の良い友達と同じ係を選んでしまう子供も見られます。何のための集会なのか、いろいろな人と関わることが大切である、ということを確認するようにしましょう。
また、1人の係がないようにすることも大切です。「学級全員で分担した仕事を協力してやり遂げる」経験が、自己有用感の向上やキャリア形成につながっていきます。
ポイント③ 名前カードを活用して時短
黒板に名前カードを貼っていくと、時間をかけずに役割分担をすることができます。
事後の活動
活動に向けた事前準備
【決まったことや役割分担の掲示】
学級会で決まったことや役割分担などを学級会コーナーに掲示します。一人一人の役割を明確にしたり、カレンダーを活用して当日までの流れを可視化したりすることで、子供が見通しをもって活動に取り組むことができます。また、教師が子供たちの進捗状況を把握し、必要に応じた支援をしやすくなります。
※何の競技に取り組むかによって、どのくらいの期間で挑戦するかは変わってきます。競技の内容や学級の実態に合わせて期間を設定するとよいでしょう。
実践期間中
ポイント④ スモールステップを大切に
活動の中でうまくいかない場面も出てくるでしょう。その場合は、その都度学級全体で話合いをする場を設け、どうすればよかったのかを考えるようにします。初めから高い目標を掲げるのではなく、スモールステップを大切にし、振り返りと話合いを繰り返しながら、少しずつ改善していくことが大切です。また、そのような子供たちの協力の場面を写真や動画に残しておくと、よさや頑張り、成長を認めるときに活用することができます。
活動の振り返り
実践後の振り返りは、子供たちが互いのよさや頑張り、成長を感じたり、次の活動に生かしたりするための大切な時間です。事前の準備から活動までの一連の活動を振り返ります。課題などにも気付かせ、次の活動に生かせるようにします。
【振り返りの視点】
○提案理由に沿った振り返り
・クラスで団結してできたか
・みんなで協力して活動することができたか
○自分の頑張りやよかったところ
○自分の役割について
○友達の活躍やよかったところ
○次の活動に向けて生かしたいこと
※目標の回数をめざして協力して頑張る経験はとても大切ですが、子供たちの中には苦手な子供もいますから、「目標回数を達成できなくてこのチャレンジは失敗だった」と子供たちが考えてしまうことがないように留意します。
「前よりタイミングよく跳べるようになった」「音楽に合わせてリズムよく跳べるようになった」「目標回数にはあと一歩だったけれど、目標に向けてみんなの気持ちを1つにして頑張ってよかった」など、努力や過程を大切にし、「みんなと頑張ってよかった」「また今度頑張りたい」といった、前向きの気持ちをもつことができるようにし、必要に応じて教師が学級全員にそうした声かけをするようにするとよいでしょう。
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106