低学年の折り返しリレーはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #65】

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平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

低学年は、個々のタイムが伸びることより、直接対決で相手チームに勝った、負けたを楽しむ発達段階です。今回は、子どもたちが生き生きと思考しながら全力で走ることができる、さらに中学年の小型ハードル走につながる「意地悪リレー」を紹介します。このリレーは名前の通り、どのように障害物を置けば対戦チームが走りにくいかという「意地悪」な思考から始めて、最終的に走りやすい障害物の置き方を見つける学習です。

執筆/千葉県公立小学校教諭・渡邊知子
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川譲

1 場の設定

意地悪リレーは2チーム対抗戦で行います。図のように、真ん中のコーンを中心に、リレーの直線コースを用意します。中央のコーンにリングバトンをかけて勝敗をつけるので、アンカーが衝突しないように、ゴールするときの走路のラインを点線矢印のように書きます。

図表1

2 ルール・用具

①1チーム7人程度でチームをつくる。
※両チームの50m走のタイムの合計がほぼ同じになるようにする。
②アンカー以外、1人30メートル走る。
③毎回アンカーを変える。
④アンカーは30メートル走った後、真ん中のコーンまで走り、リングバトンをコーンにかける。
⑤ミニハードルは1台ずつ越える。

<アンカー以外が走るコース>

図表2

<アンカーが走るコース>

図表3

意地悪リレーではリングバトンを用います。リングバトンは、筒状のバトンよりも低学年の手に合うので落としにくい上、イラストのようにコーンにリングバトンをかけることで、子どもたちが自分で勝敗を判断することができるという利点があります。色が6色あり、40人学級でも1セットあれば対応できます。

図表4

図表5

3 学習の流れ

おおまかな学習の流れは以下の通りです。20分×5回程度で行います。

図表6

2チーム対抗の折り返しリレーの方法、少しリードしてバトンをもらうことを理解したら、意地悪リレーを行います。「どこにミニハードルを置いたら、走りにくいと思う? チームで相談して相手チームが走るところに置いてごらん」と問い、考えさせます。話し合う時間は1分程度です。相手チームが置いたミニハードルは1つずつ跳ぶ(またぐ)ことを確認して競走をします。
1回目の対戦を終え、勝敗を確認したら、走りにくかった場所や置き方について確認します。

【意地悪な置き方】
①スタートラインの前後
②コーンが置いてあるカーブの所
③3つの間隔を狭くする

そして、走りにくいコースを一生懸命走ったことを褒めます。共有した情報をもとに、もう一度相手チームにミニハードルを置き、競走をします。
2回競走をした後に、どこに、どのように置くと走りにくいのかをまとめます。すると、図の色がついているところ、つまり、スタートライン側とコーンの周りに狭い間隔で置くと走りにくいことに気付きます。

図表7

図のようにまとめると、スタートラインの反対側にミニハードルを置くと走りやすいことがわかります。第4時には、自分たちのコースに走りやすいようにミニハードルを置いて競走をします。すると、子どもたちは、等間隔に置くようになります。実際に走ってみて、どの間隔で置けば走りやすいかを試すチームも出てきます。
子どもたち一人一人の歩幅や走力に違いがあるため、その間隔を統一しにくいこともありますが、そのような場合は、「誰の歩幅に合わせると一番よいか」と問うとよいでしょう。みんなが楽しみながら競走できる環境を考えることは、仲間のことを考えて運動することにつながります。

「仲間に意地悪をしてはいけないよ」と指導する学校生活の中で、「意地悪な置き方を考える」学習活動は、クラスの人間関係がうまくいっていることが前提条件となります。「意地悪な考え」から「走りやすい置き方」を考えることで、等間隔に障害物があると走りやすいことを学習し、中学年の小型ハードル走にもつなげることができる「意地悪リレー」をぜひ実践してみてください。

【参考文献】
渡邊知子(2016)「活動量と思考のバランスを考慮した体育の授業づくり~2年生『意地悪リレー・思いやりリレー』の実践」教育研究6月号 P54-57

イラスト/佐藤雅枝

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渡邊知子教諭

執筆
渡邊知子
千葉県公立小学校 教諭
兵庫県神戸市生まれ。校内で使える6か年体育科プランを作成し、だれでも簡単・手軽で「動ける体つくり」ができる授業づくりに取り組んでいます。体育を専門としない先生方も対象とした自主研修を地域や校内で実践中。「『資質・能力』を育成する体育科授業モデル」(共著)(学事出版)


平川譲教諭

監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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