陸上運動につながる運動遊びのアイデアはありませんか? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #61】
「遊び」という言葉からは、子どもの発想に任せて遊ばせる活動が思い浮かびます。これも確かに面白いのですが、授業では教師の意図が必要です。
走・跳の運動遊びから陸上運動へ。子どもが熱中して遊ぶ中で、陸上運動につながる動きを繰り返し経験できるそんな遊びがあります。それが昔から親しまれている「ジャンケングリコ」です。遊びながら陸上運動につながる動きを子どもの間に広げていきましょう。
執筆/東京都公立小学校教諭・箕浦秀一
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川譲
目次
1 ジャンケングリコのルール
基本的なルールは皆さんご存じの通りです。
① 2人1組をつくる。
② 「グリコ」の掛け声でジャンケンする。
③ グーで勝ったら「グ・リ・コ」の3歩、チョキで勝ったら「チ・ョ・コ・レ・ー・ト」の6歩、パーで勝ったら「パ・イ・ナ・ッ・プ・ル」の6歩進む。
(負けたらその場で待ちます。)
※②と③を繰り返す。
2 体育授業での行い方
体育授業では、図のような場を準備して行います。
●片方のラインにペアごとに両手間隔で並びます。
●向かい側のラインに向けてジャンケングリコを行い、ラインを踏んだら折り返します。
●制限時間内にラインを何回踏めるか、目標(例:2分で5回)を決めて競い合います。
こうすることで、子どもは、自然と速くそして大きく動こうとします。
3 陸上運動につなげるために
陸上運動では、より速く走ることや、より遠くへ跳ぶことが求められます。ジャンケングリコの中で、これらのことにつながる動きを価値付けていきます。
具体的には、以下のような動きです。
大股ではずむように進んでいる。
歩数が限られている中でより遠くまで進もうとすれば、一歩を大きくする必要があります。その上で制限時間を意識すれば、時間をかけずにどんどん進みたいという思いが子どもの中に生まれます。この思いから、一歩ずつはずむように進む動きになっていき、走ったり跳んだりする動きにつながります。
最後の一歩が一番大きく、両足で着地している。
急いでいる中で一歩を大きくしようとすると、最後の一歩でぴたっと止まれないで、勢い余って何歩か余分に進んでしまうことがあります。このようなことが続くと、子どもの中から「ずるい」という声が上がります。そこで最後の一歩で体が流れないように、両足で着地することを確認します。
多くの子が両足で着地できるようになってきたら、同じ歩数で距離を稼ごうとすると、最後の一歩を一番大きくするとよいことに気付かせます。この動きは、走り幅跳びにつながります。
これらの動きを、教師がやって見せてもよいのですが、できれば子どもの動きの中から拾い出したいところです。両足着地が自然とできている子どもを、大きな声で称賛したり、どこに注目するかを提示した上で運動を観察したりして、どんな動きを目指せばいいかを全員で共有します。
制限時間と目標を決めると、一つ一つの動きが雑になりがちですが、こうして運動のポイントを確認して、量と質を保障していきましょう。
ジャンケングリコは、低学年のうちから先を見通して取り扱いたい運動遊びですが、中学年以降でも、陸上運動の単元に入る前に扱うことで、子どもの動きを高めておくことができます。ぜひ、ちょっとした時間に扱ってみてください。
イラスト/佐藤雅枝
※連載「ブラッシュアップ体育授業」について、メッセージを募集しております。記事に関するご感想やご質問、テーマとして取り上げてほしいことなどがありましたら、下の赤いボタンよりお寄せください(アンケートフォームに移ります)。
執筆
箕浦秀一
東京都公立小学校 教諭
1984年岐阜県関市生まれ。子どもたちとともに、体育で何をどのように学ぶのかを追究しながら実践を積み重ねている。大切にしているのは、体の動きと心の動き。体が動けば、心も動く。
監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。