【相談募集中】完全教科担任制が導入されて疲弊しています
来年度から完全教科担任制が拡充されるという先生から、「みん教相談室」に相談が寄せられました。学級経営をする時間が削られ、先生としてのやりがいもなくなってきて疲弊しているとのこと。この悩みにアドバイスしてくれたのは、子どもたちの自主性を引き出す斬新でユニークな実践が話題の沼田晶弘先生です。その回答を、こちらでシェアします。
目次
Q.完全教科担任制で学級経営の時間もなくなり、疲弊しています
うちの小学校は5、6年教科担任制です。完全教科担任制のため、空き時間の差、欠員や欠席したときの調整が本当に大変でした。今年度は、ほとんどの職員が反対しましたが、3、4年生にも拡充されました。
学級経営する時間もなく小学校の先生としてのやりがいもどんどんなくなっていくことも訴えましたが、返ってきた言葉は「学級経営なんかいらない、教師の個性はいらない、子どもの学力だけを考えろ」でした。塾のような校内の体制で職員が疲弊しています。
(小学校教諭先生・女性・40代)
A.時代の流れを感じながら、この制度を味方につける方法を考えていきましょう
ボクの学校も、3年前から教科担任制になりました。もし今の校内体制で職員が疲弊してしまっているのだとしたら、現場から訴え続けていくしかありませんが、こうなった背景を考えてみると、やっぱりメリットもあるから導入されたはずで、そこに目を向けることもありだと思います。
例えば、小学校の先生としてのやりがい、という面から考えると、確かに、教科担任制にしたことにより、子どもとの関係が希薄になるかもしれない面がある一方で、学級担任時代には話せなかったような様々な子どもと話す機会も増えたのではないでしょうか。
最近では、ボクが授業を教えていない子どもたちまでボクのホーム(教室)に入ってきて、ボクといろいろ話すようになりました。ボクがどの教室にも出入りしているので、教室に入ってきやすくなったのだと思います。もちろん、過去にはボクのクラスになったけれど、ボクのことが苦手だった子もいたでしょう。そういう子も教科担任制であれば、学級という見えない縛りから解放されたのではないかと思います。
ただ、「教師の個性はいらない」という管理職の言葉は残念ですね。子どもの個性を生かすのだったら、教師の個性だって生かさなければ話が違います。「チーム学校」と言うのならば、違う持ち味のあるキャラクターを適材適所に配置してほしいと思います。一人一人、得意なことも苦手なことも違っていて、それを補い合う関係(『ONE PIECE』の麦わらの一味のような)こそ強いのではないでしょうか。そうしたら、現状に疲弊している先生たちを少しでも楽にできるのに、と思います。
会社では、営業が得意な人もいれば、編集が得意な人もいるし、人付き合いは苦手だけど校閲が得意という人もいて、それぞれが得意分野で力を発揮しています。それと同じように、学校も、この人は校務分掌は苦手だけれど、外の研究活動は得意だなと思ったらどんどんやらせてその情報を周りに知らせてもらうとか、ICTの講習会を全員に受けさせて同じことができるようにするのではなくて、高度なことは得意な人に任せてしまうとか、そうやって補い合えるチームづくりをしてほしいと思います。
そのために現場教員としてできる第一歩は、「同僚のあの人はこれが得意」ということを、よく知ることだと思います。まずはこんなふうに現場の先生同士がお互いの能力を知り、助け合っていけたらいいですね。一緒に頑張りましょう。
取材・文/やまだまい
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。