小1国語「さあ はじめよう」京女式板書の技術
今回の教材は、「さあ はじめよう」です。単元の学習内容は、「学習態度や学習の仕方、そして知識及び技能に関わることなど」幅広いものです。一つ一つを丁寧に指導することが1年生の始まりとして大切です。そのため、学習内容を分かりやすく示す板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子
教材名 「さあ はじめよう」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全12時間)
1・2 1ねんせいのこくご 「へんじのしかた」「こうちょうせんせいのおはなし」
3・4 おはなしききたいな
5・6 なんていおうかな
7 かくことたのしいな
8・9 どうぞよろしく
10・11 こんなものみつけたよ
12 うたにあわせてあいうえお
板書の基本
〇「さあ はじめよう」という呼びかけで、1年生の国語科の勉強が始まります。指導内容は、学習態度や学習の仕方、そして知識及び技能に関わることなど、幅広くあります。一つ一つを丁寧に指導することが1年生の始まりとして大切になります。板書で大事にしたいことは、学習内容を分かりやすく示すことです。
〇入門期の板書に絵やカードを活用する場合、次のことをあらかじめ考えておくと効果があります。それは、学習態度やしつけに関わることです。姿勢や鉛筆の持ち方、手の挙げ方については、写真や絵で示すと分かりやすくなります。また、「おねがいします。」「ありがとうございます。」のように話し言葉や語彙に関わる板書はカード(短冊カード)にしておくと必要なときに再度活用できるという効果があります。
板書のコツ(1/12時間目)
板書のコツ①
黒板の両端に貼っている「おねがいします。」「ありがとうございました。」は、国語の授業の始まりと終わりに使う「あいさつ」の言葉として指導したものです。最初の時間は、言葉(話し言葉)で指導し、次の時間は、文字(カード)にしました。その後の授業では、カードを黒板に貼って使用しています。
板書のコツ②
「えんぴつのもちかた」は自分の名前を書くという学習活動です。自分の名前を書く学習活動を通して、「文字の書き方」にかかわる子供の実態を知ることを目的としています。書かれた文字を見て、大きさや形・整い方についての実態を把握し、これからの学習活動に役立てます。
板書のコツ③
「返事の仕方」は、入門期の国語科の授業として大事にしている学習内容です。
①「はい」と普通に返事をさせます。(緑のカード)
②「はあい」と教師が手本を示します。(黄色のカード)
③小さい声で「はい」と返事をする手本を示します。(青のカード)
④「はい。」と上等の返事を手本として示します。(ピンクのカード)
カードごとに返事の練習をした後、①②③④の中から「気持ちのいい返事」を選ばせます。指導が上手にできると、全員の子供が④のカード「はい。」を選びます。これからの返事は、④のカードにすることを決めて、④のカードを残し、①②③のカードは黒板から取り外します。①のカードと④のカードの違いは、「はい」と「はい。」で、句点「。」の有無です。このようにして、句点を意識させます。
板書のコツ(2/12時間目)
板書のコツ①
「あ・い・う・え・お」の勉強の始まりです。教科書を音読し、口の形を勉強した後、ひらがな指導で使用する正方形の板書シートに「あ・い・う・え・お」を書いて、黒板に貼りました。
この日は、全校朝礼で校長先生から「あ・い・う・え・お」のお話がありました。私立小学校なので、建学の精神に関わることや全校でがんばってほしいことを話されました。早速、その内容を授業の指導内容にしました。
板書のコツ②
「『あ』でどんなことを覚えていますか。」と質問しようと思って、子供の表情を見たところ、すでに他のことに関心が向いていることに気が付きました。そこで、校長先生のお話の大体をまとめ、大事な言葉として白いチョークでキーワードを書きました。話を聞いている過程で、「全校朝礼」のことを思い出すことができたようで、「あいさつ」「ありがとう」などの文字を語のまとまりとして読めるようになりました。
板書の意図である「あ・い・う・え・お」が読めることと、文字のまとまりが語となることも理解できたという手ごたえを得ました。
下段に書いた言葉の「あ・い・う・え・お」に赤丸を付けたことで、「うきうき」「えんぴつ」を語として読める子もいました。
板書のコツ③
1年生の授業は、子供が集中できる学習活動が大切になります。そのためには、教師が何を指導するかという目標をしっかりと決めておくことが必要だと思っています。
この板書では、次のようなことを学習成果として考えています。
①教科書の「あ・い・う・え・お」を音読し、ひらがなの学習に興味をもたせたこと。
②「あ・い・う・え・お」に親しませることを目標にしていたので、教科書の内容から「こうちょうせんせいのおはなし」に話題を切り替えて、新しさに目を向けさせたこと。
③子供の記憶に頼らず、多くの言葉を示しながら、「知っている」「覚えている」という1年生の発達段階に配慮して語句を示したこと。
授業の終わりの段階では、「あ・い・う・え・お」の文字から始まる言葉集めにつながる授業になりました。
初めて国語の勉強をしたような気分で黒板を読み返している子供たちの姿が印象的でした。言葉の力は子供と共につくっていくものだという感想をもちました。板書は、子供の意欲と指導内容をつなぐ大切な役割を果たしています。
構成/浅原孝子