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通知表所見クレームゼロの法則

2019/12/3

残業ゼロ、しかも保護者からのクレームもゼロになる通知表所見を書くコツを伝授!現代の教師が身を守るための「誰にどう読まれても誤解されない」「次学期への意欲につながる」記述スキルを丁寧に解説。よくある質問Q&Aも紹介します。

執筆/神奈川県通知表研究会

通知表の悩みイメージイラスト

通知表所見は勤務時間内に書き終えると決める

教員の業務は多忙化を極める一方です。休日出勤や残業など、教師の善意を大前提にしなければ、通知表の所見は仕上がらないものなのでしょうか。だとするならば、今の時代、私たち一人ひとりが通知表所見に対する考え方や書き方を改めていかねばなりません。

本稿は、通知表所見について、(残念ではありますが)かつてのように、時間と労力を惜しまず書く、そんな時代ではなくなった、という考え方をしています。子どもへの愛情や熱意が、誤解され、曲解され、クレームとなって返って来る悲しみ。クレームを恐れて添削に添削を重ねた所見の、姿かたちが変わってしまった虚しさ。当初伝えたいと思っていたことは、伝えることができなくなったと感じている先生も多いのではないでしょうか。

それならば、貴重な時間を所見を仕上げるためばかりに使うのではなく、日々の授業や教材研究、子どもと向き合う時間に使うべきではないでしょうか。通知表の所見は勤務時間内にサッと終わらせようではありませんか!

残業なしの通知表所見作成

通知表は魔法の手紙ではない

まず、以下の大前提があります。

通知表は、担任ではなく校長が出すもの。校長がダメと言えばダメ。

通知表は校長名で出しています。すばらしい所見が書けたと担任が自画自賛しても、校長がダメと言えばダメ。学級担任が校長の代わりに書いている、というのがリアルなのです。

通知表は魔法の手紙ではないので、悪いことは書かなくてよい。

通知表に悪いことを書いたからと言って、保護者や子どもが素直に受け取り、反省し、改善されるというケースは、まずありません。むしろ、火種となる場合のほうが多いのです。

通知表はデジタルが主流に。ラブレターのように書くのは、たいへん危険。

手書きによる温かさや優しさ、ちょっとしたニュアンスは、デジタルの所見では伝わりません。「所見はラブレターのように、愛情を込めて書け」と言われた時代がありましたが、今の時代はいろいろな誤解を生むだけとなります。

子どもが好きで、教壇に立つことに喜びや幸せを感じて教師になった人も多いでしょう。しかし今の時代、通知表は教師の熱い思いを子どもに伝えるツールではなくなっているのです。

「△」がつく子が出始める二学期の通知表

一年生の一学期の通知表は、否定的なことを書く機会も、書く必要性もほとんどなかったかと思います。学習面は、「全員全部○」だったり、「○や△の評価は二学期から」という配慮のある学校も多いのではないでしょうか。しかし、二学期の場合、学習内容が急に難しくなるので、結果として、学習面の到達度評価で「△」(「がんばろう」「もう少し」の欄に「○」も同様の意)のつく子が出てしまうのではないかと思います。

通知表の所見欄についても、「学校に慣れてきた二学期だから、ここは一つ、子どもにとって都合の悪いことを書いておこう。そこは保護者にしっかり伝えたほうがいい」と思ったこともあるかもしれません。しかし、だからこそ、ここでもう一度、立ち止まってじっくり考えてもらいたいのです。

保護者は1ミリでも批判されると傷つく

「自分のことは悪く言われても構わない、しかし、家族のことを悪く言われるのは許せない」

保護者やきょうだいのことを誰かに批判された経験はありますか? 保護者と口論したり、きょうだいげんかをして、ついひどいことを言ったこともあるでしょう。しかし、第三者から自分の保護者やきょうだいのことを同じように言われたとき、「そんなことはわかっている。でもあなたに言われる筋合いはない!」とばかりに、なぜか反発した、家族を守ろうとした、そんな経験はないでしょうか。

保護者を批判しないイメージイラスト

まして保護者にとって、自分の命よりも大切な、目に入れても痛くないわが子のことです。わが子について、何が欠けているのか、足りないのか、どんなことが弱点なのかは、おおよそわかっているつもりです。しかし、頭ではもちろんわかっていても、心の準備ができていても、第三者から悪く言われると、やはり自分のこと以上に傷つくものです。それが保護者です。わが子を守るために反発し、烈火のごとく、校長室や教育委員会に怒鳴りこんでくる場合もあるでしょう。

通知表の所見は励みとなるものであって、決して相手を傷つけるものではありません。10個ほめて、最後に1つだけ悪いことを書いても、そのたった1つに対し、敏感に反応します。

「どうひねくれて読んでも、悪いように解釈することができない所見を書く力」

今の時代に求められているのは、このようなスキルです。

前学期の所見は宝の山

二学期の所見は、一学期よりもはるかに速く、簡単に仕上げることが可能です。それは、一学期を経て、校長の所見に対する思いや傾向、スタンスがわかっているからです。

・校長が所見について話した(書いた)メモ等を読み返す。なければ、同僚に確認する。

・校長が書いた学校だより等を読み込み、校長の考え方を再確認する。

・校長が赤で直した所見の箇所を確認する。

・校長に許可をもらい、同僚にもお願いしたうえで(「勉強のため、先輩の書き方などを参考にしたいのですが」などとお願いする)、校長室の金庫に保管されている同学年や異学年の一学期の所見を見せてもらう。

こうしたことを行えば、今年度の所見の書き方のコツが改めて見えてきます。とくに、一学期の同学年・異学年の所見は、校長の厳しいチェックに合格した「宝の山」です。その学校だけの「地産地消」の所見ですから、より鮮明で具体的で説得力があります。しっかり心に焼きつけましょう。

要チェック!~こんな表現をしていないか~

校長によりさまざまな判断のある所見ですが、それでも人権的視点は欠かせないでしょう。以下、仕上げた所見をチェックしてください。

女子には「○○ちゃん」男子には「○○くん」と表記していないか

自認する性と反対の呼称で表記することがないようにしましょう。そのためには、「~さん」で統一するのがよいでしょう。二学期からでも間に合います。もちろん、一年生の時点では本人も保護者も意識していない場合がほとんどです。しかし後になって本人が通知表を読み返し、傷つく場合もあり得ます。「~さん」で表記することで、性的マイノリティについて、校長や担任は理解し、配慮しているということを、子どもや保護者に伝え、安心感を与えることができます。

「一学期は▲▲だったが、二学期はできるようになった」という表記をしていないか

一学期にできなかったことが今はできるようになったと、担任は成長を喜び書いたつもりです。もちろん悪意がありません。ところが保護者は、できなかった部分に注目し、そんなふうに見られていたのかと担任に不信感をもちます。過去を持ち出して比較せず、今だけを手放しでほめましょう。

「○○については三学期の課題ですね」というように、上から目線で書いていないか

保護者はわが子について、どんなことが苦手かということくらいわかっています。それなのに、同じ目線に立たず、上からの物言いをすると、「それを指導し、できるようにするのが教師の仕事でしょう!」と反発します。通知表は書けば課題を克服できる魔法の手紙ではありません。書かなければ済むことです。

よくある質問 Q&A

Q なぜ悪いことを書いてはいけないのか? よいことばかりではなく、悪いことでも伝えなくてはいけないことは、伝えたほうがよいのでは?

A 証拠として残りやすい「紙」に残してはいけない、ということです。こちらは意図していないのに曲解され、誤解だけが一人歩きすることがあります。どうしても悪いことを伝えたい場合、誤解を避けるべく家庭訪問や電話で伝えるのがよいでしょう。

Q なぜ通知表の所見は、学校や校長によって、こうも違いがあるのでしょうか?

A 通知表は国の法律で定められた出席簿や指導要録とは異なり、学校任意の記録だからです。そうなると、地域や学校長の意向が強く反映されます。また、校長判断で発行しないと決めている学校もあります。

悩ましい通知表イメージイラスト

Q どういう順番で書いていくとよいですか?

A ポイントは、出席番号の1番から順に書くだけではないということ。10秒考えて思いつかない場合、それ以上考えてもすぐには出ません。出席番号の最後の子から書く、似たような内容になる子を書く、ハッと思い浮かんだ子を書くなど、すぐに書ける子へと随時移りましょう。

Q 平日の勤務時間だけで仕上げるコツは?

A 二学期の金庫には、他クラス・他学年の通知表が入っています。許可をもらって、それを見せてもらいましょう。現校長がOKを出した所見は、洗練された、その学校オリジナルの文例です。これらを参考にするのがもっとも早道だと言えます。また、所見を仕上げるのが学校でいちばん速い先生の文例を参考にするのも手です。速い先生は、「所見は力のかけどころではない」と割り切って、淡々と書いている場合があります。

Q 所見欄の下書きは、後々のため取っておいたほうがよいでしょうか?

A 通知表は指導要録と違い、保存期間がありません。学校で決まりがあるのならば、それに従いましょう。なお、時代や価値観の変化とともに所見の書き方も変わっていきます。したがって、取っておいたからといって、後々使える日が来るということはほとんどないと思います。

Q 通知表について、保護者にどのような説明をすればよいでしょうか?

A 保護者会などで、学校だよりや学年だよりをもとに説明します。通知表の「○」や「△」は特定の一部分の評価にすぎないこと、人の評価ではないこと、二学期は学習が難しくなり、「△」がつく子も多くなるかもしれませんが、到達度評価であり、「△」であっても、あくまで現時点において「もう少し」であることなどを説明するとよいでしょう。

Q 通知表を配る際、全体でどんな説明をするべきでしょうか?

A 人と比べっこをしないこと、○や△の数で本当の評価はできないこと、誰にでも得意なことと苦手なことがあることなどを伝えます。

例えば、金子みすずの「私と小鳥と鈴と」を紹介するのもよいでしょう。鳥や魚にも、それぞれ得意なことと苦手なことがあり、同じ鳥や魚の中にも、飛べない鳥や泳ぎの苦手な魚がいることを教えます。それぞれに違いがあり、その違いがすばらしいのだと、一年生にわかるよう、絵や言葉で説明するとよいでしょう。

Q 通知表は、どういう順番で渡していったらよいでしょうか?

A 出席番号順の逆から配る方法や、現在の席順で配る方法、班ごとに配る方法もあります。大切なのは、本人への誤配付や家庭への誤配付を防ぐことです。

Q 通知表は、ただ配るだけですか? それとも子どもに中身を見せながら配りますか?

A 一年生の場合、漢字が多く使われている所見を読むことが難しいので、開いて説明したり、読んで聞かせたりするとよいでしょう。励みになりますし、自分の通知表だということがわかります。一年生は、隣の席の子の通知表や友達の通知表を誤って持ち帰ってしまうことがあるので、自分の通知表であることを認識させるのは大事なことです。

読んで聞かせて渡しているイメージイラスト

Q 通知表を子ども同士、見せ合わないようにするにはどうすればよいでしょうか?

A 他人の通知表について、見るなと言われるほど、人は見たくなるものです。ですから、注意をそらしたほうが効果的です。配っている間、面白い課題を与えておくとよいでしょう。しかし、どんな指導をしても、見る子は見るもの。誰かに見られて困るようなことを書かないという、こちらの姿勢が問われています。

イラスト/the rocket gold star

『小一教育技術』2017年12月号より

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