校務のデジタル化【わかる!教育ニュース#40】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
わかる!教育ニュース

先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第40回のテーマは「校務のデジタル化」です。

公立小中学校の95.9%が、業務でファックス使用

GIGAスクール構想の進展で、学びのデジタル化が進んだ、と言われます。でも、職員室にはまだアナログな部分が残っているようです。

文部科学省が行った校務のデジタル化の状況調査で、公立小中学校の95.9%が業務でファックスを使っていることが分かりました。送り先で最も多いのは、民間事業者(70%)。次いで教育委員会(58%)、給食センター(32%)です。

調査は2023年9~11月、学校や教委に実施。計52項目のチェックリストを基に自己点検してもらい、学校2万6364件、教委1690件の回答をまとめました(参照データはここをクリック)

根強い「紙文化」は、保護者などとのやりとりにも見られます。押印や署名が必要な書類がある学校は、87.2%に上りました。内容は通知表、修学旅行への参加申請、進路希望調査などです。欠席や遅刻、早退の連絡で、全くデジタル化していない学校は34.8%。給食費など保護者からお金を集める際に、口座振替やネットバンキングを全く使わない学校も17.3%ありました。

機器の有無やネット環境は家庭によって違うため、保護者相手のやりとりを、全面的に変えるのはむずかしいかもしれません。ただ、学校の中での手続きにも、紙文化が残っていました。95.5%の学校で、教職員に給与支払口座の登録や、休暇や在宅勤務の申請などで、書類での提出を求めていたのです。

ファックスでの連絡や押印を2025年までに廃止する方針

校務のデジタル化を議論した文科省の有識者会議は、2023年3月に出した提言で、教職員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保するために、校務全般をデジタルで効率化する必要があると説き、これからの方向性を示しました。同年12月、政府のデジタル行財政改革会議でも、ファックスでの連絡や押印を2025年までに廃止し、26年には全学校でクラウド環境を校務に徹底活用する方針を打ち出しました。

文科省も今後3年を集中取組期間と設定。改善策の具体的な資料やオンラインの学習機会の提供、国費でのアドバイザー派遣などを進めていく構えです。ファックスや押印を求める民間事業者や教委には、国から相手に見直しを働きかける考えも示しました。

ただ、文科省の調査では、ちぐはぐな実態も浮き彫りになりました。学校便りやアンケートをパソコンで作るけれど、子供に紙で渡す。出勤したら、ICカードリーダーで読み取りをした上で、紙の出勤簿に押印。校務支援システムで作った指導要録を紙に打ち出し、学校印を押して保管。デジタル機器を使っていても、二度手間になっているのです。 他者とのやりとりや仕事には、デジタルが向かない部分もあるでしょう。それでも、必要なところでうまく活用して無駄を省き、教員が本来するべき仕事に打ち込めるようにしなくてはなりません。単に機器やソフトを導入すればよいわけでもなく、目的にかなう使い方が大事です。

【わかる! 教育ニュース】次回は、2月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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