入学・卒業式、研究会、職員会議…。シチュエーション別の、上手なスピーチのコツ!

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GKC(がんばれ教頭クラブ)
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入学式特集:挨拶文例、式の準備から学級開きまで
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

教員になると、行事や会議、イベントなどで、ちょっとしたスピーチをすることが多いですよね。ただ、校長のように一定の時間を与えられるわけではありませんので、短い時間でバシッと決めなくてはいけません。新年度が始まり、式のときにひと言を…とか、是非司会進行を…と頼まれる方も多いのではないかと思います。どんな準備をし、どんな心構えをしていけばいいのでしょうか。

【連載】がんばれ教頭クラブ

スピーチのキホンは「かきくけこ」!

いかなる会においても、スピーチを考えるための起点になることは、以下の5つに集約できると思います。「かきくけこ」の基本姿勢です。

:「感」のつく言葉を大切に。
感謝、感激、感動、感銘、感恩など、「感」のつく言葉を基盤にしていきたいです。学校は教職員だけでは維持できません。来賓としていらした方々、保護者の皆様に支えられてこその学校であるということを意識したいです。また卒業証書授与式では、卒業生たちの成長ぶりや学校行事での感動的なシーンなどを思い起こしながら気持ちを込めていきたいです。

:決まり文句は外さず。
「これから、令和○年度□□小学校卒業証書授与式を挙行いたします」
「これをもちまして、令和○年度□□小学校入学式を終わります」
これらは分かりやすい例ですが、会によって、必ず言うべき「決まり文句」というものがあると思います。これらを忘れずに盛り込むことが必要です。

:口数は少なめに。そのために繰り返し何度も練習。
どうせ言うことは少ないし、ぶっつけ本番で大丈夫…。そんなふうに思ってませんか?
「開式」というべきところを「開会」と言い間違えたり、とっさに人物の名前が出てこなかったり。そんなことがよくあります。「えーっと」「あのー」などの場繋ぎ表現が出てしまうと、短い話でも冗長な印象を与えます。たった1行、ひと言だとしても、小声でおさらいしておきましょう。

:謙虚に。主役を引き立てるように心がける。
スピーチを行う人は、その会の主役をもり立てる脇役であると言えます。謙虚な姿勢で、会の主役の良さ、素晴らしさを引き立てるような言葉を盛り込むように心がけていきたいですね。

:声のトーンに気をつける。
行事の性質によって、明るくまたは荘厳に、など声のトーンを変えていきます。荘厳であるべき儀式的行事、楽しくポップな学校イベント、誠実な協議が望まれる各種会議では、まったく違います。声のトーン一つで参加者の意識も変わってきます。

入学式なら「あいうえお」

入学式では、次の「あいうえお」を考えていきたいです。

:あいさつは笑顔で
:いつもより大きな声で
:うなずきながら児童を見渡す
:エネルギッシュに話す
:お礼の気持ちを伝える

【開式】
「みなさん、こんにちは! 入学おめでとうございます! この日を迎えることができて、私たちはとてもうれしいです。新しい学校生活が始まるということで、ワクワクしていることでしょう。これから…」

「まず初めに、新しく○○小学校に入学されるみなさん、そして保護者の皆様、本日は入学式にお越しいただきありがとうございます。私たちはとてもうれしく思っています。ただ今から…」

【閉式】
「新入生のみなさん、こんにちは! 今日から○○小学校の1年生、学校で最初の一歩を踏み出します。みなさんが新しい友だちと出会ったり、せんせい方といっしょに楽しい時間を過ごしたりすることで、きっとすてきな学校生活が待っています。これをもちまして…」

「新しく仲間入りする1年生のみなさん、心から歓迎します。これからいっしょにたくさんのことを学んでいきましょう。そして、保護者の皆様にも、子どもたちを温かく見守りながら、共に学ぶパートナーとしてお力をお貸しいただきたく思います。これをもちまして…」

「本日はたくさんの方々にご参列いただきまして、ありがとうございます。これから児童とともにすてきな時間を過ごしていくことを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。これをもちまして…」

卒業式なら「たちつてと」

卒業証書授与式では、次の「たちつてと」を考えていきたいです。

:多少の緊張感を醸し出す
:地に足をつけて堂々と話す
:つまずかないように流ちょうに話す
:丁寧に一つ一つの言葉をはっきりと話す
:とにかく明るく希望に満ちあふれたトーンで話す

【開式】
「卒業生のみなさん、本日は素晴らしい日です。みなさんの凜々しい出で立ちを誇りに思います。みなさんの成長や努力に心から感謝し、この大切な瞬間を共有できることをうれしく思います。これより…」

「卒業生のみなさん、おめでとうございます。この日を迎えることができました。今日は、皆さんの努力と成長をたたえる日です。感慨深い瞬間を大切にしていきましょう。これから…」

【閉式】
「卒業生のみなさん、本日は感動的な瞬間を迎えました。卒業証書を手にし、新たな一歩を踏み出すみなさん、これからの未来がみなさんにとって輝かしいものであることを心より願っています。これをもちまして…」

「卒業生のみなさん、卒業証書を手にするみなさんの笑顔は、私たち学校に勤める者にとって最大の喜びです。これからもみなさんの成長と成功を期待しています。またどこかでお会いできることを楽しみにしています。これをもちまして…」

職員会議は「まみむめも」

職員会議では、次の「まみむめも」を考えていきます

:真心を込めて話す
:みんなでつくり上げることを意識してもらう
:難しい課題があるからこそ、の会議であることを強調する
:目を見て、参加者の全員に目配りをしながら話す
:目的や目標を提示して話す

【開会】
「本日はお集まりいただいてありがとうございます。みなさん、新年度もよろしくお願いいたします。新たな気持ちでこの学校をつくっていくんだという気持ちで、真摯に協議いただければと思います。みなさんの御協力をお願い申し上げます。これから…。

「本日の職員会議は、主として○○という困難な課題に向けて、多面的な視点から議論していただくことが目的です。この課題を乗り越えるためにみなさんの協力が必要です。どうぞよろしくお願いいたします。これから…。」

【閉会】
「本日は、みなさんのご協力のもと、新年度のスタートを切ることができました。これからですね。手を携えてチームとして学校運営を進めていきたいです。これで…。」

「今日は、みなさんのご協力で困難な課題について真摯に議論ができました。みなさんのご尽力に感謝します。決まったことはきちんと実行する! これが大きな力になります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。これをもちまして…。」

校内研究会では「さしすせそ」

校内研究会議では、次の「さしすせそ」を考えていきます

:最後の挨拶は和やかに
:視線を合わせて話す
:スムーズに話す
:センスのよいジョークやユーモアを入れる
:そのために…を大切にする

【開会】
「本日は校内研究会議にお集まりいただき、ありがとうございます。有益な議論ができることを期待しています。校内研究の場はフラットな場です。立場やキャリアを超えて、真摯にテーマに向かって議論していきましょう。これから…。」

「みなさん、毎日授業研究などに時間をとっていただき、ありがとうざいます。本日は、困難な課題が山積みの研究会です。課題を明らかにして様々なアイデアを出していただければと思います。ただ今から…。」

【閉会】
「本日はみなさんのご協力のもと、建設的な議論ができたことをうれしく思います。また、講師の○○せんせいのご指導のもと、□□□というテーマについて深く考えることができた貴重な機会となりました。□□□せんせいの的確なアドバイスによって、わたしたちの研究は、より充実したものになりました。たいへん感謝しています。前向きに今後の研究活動に取り組んでいきたいと思います。これをもちまして…。」

「研究会議は協力と共有の場です。みなさんの積極的な参加のおかげで、有益なアイデアや洞察を得ることができました。これらを整理精査し、今後の授業づくりに生かしていきたいと思います。本日はありがとうございました。これで…。」

(学校の雰囲気にもよりますが、こんなユーモアあいさつも…)
「今日の議論は楽しかったです。だいぶ課題解決ができました…と言いたいところですが、ますます頭が混乱してきました。わたしの脳のキャパを超えています! でも、だからこそ校内研究はおもしろいのです! これからも難しい知恵の輪に挑むように、創造的な営みをしていきましょう。これで、本日の授業研究会を閉じます。みなさん、ご協力ありがとうございました」

あいさつのコツはいかがだったでしょうか。自校の実態や雰囲気、メンバーによってアレンジしていただければと思います。
ところで、わたしが若手教員だった頃のことです。全校朝会で校長講話があり、その内容は心に残るいいお話だったのですが、進行役をしていた教務主任が、講話の直後に感想や内容の補足を話したのです。
それを聞いていた他のせんせいたちは、こんなヒソヒソ話をしていました。
「校長せんせいの話は、後で教室で児童たちと話し合うことが多いのに、ここで追加の話をされるとやりにくいよね」
「校長講話はそれだけで意義があるのだから、補足というのはとても失礼なことだよ」
「進行は良かれと思って話したのだろうけど、講話をした本人の気持ちはどうなんだろう」
過ぎたるは及ばざるが如しです。自分の役割をわきまえて、よいスピーチを心がけましょう。

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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