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学級崩壊の立て直し 体験教師から学ぶワークフロー

2019/11/12

学級崩壊を体験した小学校教師の体験談から、リアルな立て直しのワークフローが見えてくる貴重な記事です。学級崩壊はどの先生にも起こりうること。もし、あなたの学級が崩壊してしまったら、どのように立て直しを図るべきでしょうか? 実際に学級崩壊を起こしたことがあるという先生が、ご自身の体験談から学べることを教えてくださいました。

執筆/福岡県公立小学校教諭・中雄紀之

学校

私も学級崩壊させました

私は学級を崩壊させたことがあります。精神的に弱りきり、それは体にも表れました。出勤する前に必ず嘔吐します。職員室から教室に上がる前にも嘔吐します。夜は夜で反抗する子供たちが夢に出てきます。あまりの辛さでバッと目が覚めます。体は汗だくです。夜中の2時、3時にベッドの上で途方にくれました。

もはや、立て直しはおろか、私一人で教壇に立つことさえ無理でした。私の教室には、多い時で3名のサポート教師がいました。3名ですよ。いったいどれだけ悲惨な学級だったのでしょうね。でも、その3名の先生方が、私と子供たちを救ってくれたのです。そんなエピソードから始めましょう。

当時は、なぜ学級崩壊したのか、その原因が全く分かりませんでした。私なりに一生懸命にやっていました。最初は私に反発する子は男子1名でした。その子は悪い意味で有名な子供でしたから、まあ、しょうがないと思っていました。しかし、不思議です。1人の反発が2人、3人と増えていくのです。女子に至っては、5人で徒党を組み、冷ややかな目で私を見るようになりました。「えっ、どうして君が?」と思うような子供でさえ、私の言葉に耳を傾けなくなっていきました。それから連鎖のように起こるケンカ、いじめ、クレーム・・・。無力感に包まれる私がいました。

放課後の職員室では、電話器が鳴るたびにビクビクしました。「中雄先生、○○さんの保護者から電話ですよ」この言葉がどれだけ怖かったことか。

どんどん口数が少なくなっていく私を同僚の先生方が気にかけてくださいました。「中雄先生、そんなに落ち込まなくてもいいよ。誰が受け持っても一緒だから」

しかし、学校内で学級崩壊させているのは私一人です。プライドも何もかもズタズタでした。

勤務校は、いわゆる困難校と呼ばれる学校でした。そういう学校でしたので、担任を受け持たず、子供や教師を支援する立場の先生が配置されていました。精神的に追い込まれていた私はついに、その立場である田代先生に次の言葉を吐き出しました。

『田代先生、もうだめです。助けてください』

田代先生は、優しく微笑んで私の肩をたたき、こう言ってくれました。

「中雄さん、心配しなくていいよ。明日から、俺たちが教室にずっと入るから。子供たちの問題行動は俺たちで対応するから。中雄さんは授業だけ進めればいい」

次の日から、私の教室は先述のような4人体制になりました。教室に3人も、4人も先生(大人)がいることで、様々な変化が起きました。

まずは秩序です。離席や私語がなくなりました。時間も守り始めました。おそらく、子供たち自身も、自分たちがよくない行為をやっていたことを自覚していたのでしょう。秩序が保たれることで、子供たちも落ち着いていきました。

次に、私自身の変化です。一言でいうと「肩の荷がストンと下りた」です。サポートの先生方が教室に入る前は、問題行動を起こす子供にかかりっきりになる反面、その他の子供たちに対して手薄になります。それが原因で学級の荒れ-学級崩壊が進んでいきました。

しかし、サポートの先生方が教室にいてくださると、問題行動に対しては、その先生方が対応してくださるので、私はその他の子供と授業を進めることができます。私の肩の重さはすっとなくなり、驚くような軽さを感じたことを覚えています。

サポートに入ってくださった先生方は、子供への接し方が上手でした。怒鳴り声など一回も上げませんでした。今思えば、どの先生方も、凄腕教師だったと思います。

まず、子供を観察する力。些細な表情を汲み取って、子供たちがマイナスの行為に出る前に声をかけていたような気がします。その声かけが温かいのです。愛情をもった言葉づかいでした。子供たちの心の棘が落ちていくのが見えるようでした。私は初めて、子供に寄り添う指導を目の当たりにしたのです。あの先生方だったからこそ、私と私の学級はなんとか崩壊から立ち直れたのでしょう。

私も徐々に元気を取り戻していきました。そんな私に、サポートの先生方はこう言いました。

「いつまでも俺たちが中雄さんの教室にいるというのはやっぱり不自然だよね。少しずつ、俺たちが教室から離れていくようにしないとね」

つまり、私自身が教師としての力をつけないといけないというメッセージだったのです。

「誰かに話す」ことが立て直しの第一歩

私の経験から読者の先生方に一番伝えたいことは、「自分の辛さを誰かに話す」ということです。もしあの時、私が田代先生に「もうだめです。助けてください」を言わなかったらと考えると怖くなります。きっと立ち直れないぐらいの傷を負っただろうと予測できます。

以前、コーチングの研修に参加した時のことです。講師の先生がこう言っていました。

「ここにある水の入った1.5リットルのペットボトルを『持ち上げてください』と言われたら、できない人はいませんね。でも、『20分間持ち続けてください』と言われたら、きつくなりませんか。想像してみてください。20分間ペットボトルを持ち上げ続けている自分を。どうしたいです? ペットボトルを放したくなりますね。放すことで楽になりますもの。自分の辛いこと、苦しんでいることを誰かに話すということは、このペットボトルを放すことと同じなのです。人に話すことで楽になるのです」

私たち教師は、あまり弱音を吐かない人種のような気がします。あなたは、自分一人で学級の悩みを抱えていませんか。私は、43歳というこの年齢になっても同僚や仲間にうまくいかないことを口にします。それで解決するわけではありませんが、分かってもらえたり、同様な経験を話してもらえたりすると、楽になります。友人でも家族でも同僚でも、相手は誰でもよいのです。辛いことを話して=放してください。

サポート要請は早く、内容は明確に

話をサポートに戻しましょう。もし学級崩壊の兆しがあらわれはじめたら、きっと先生方も辛いはずです。傷は浅いうちに治したほうが治りは早いのですから、早めに「助けて!」と声を上げましょう。恥ずかしい気持ちもわかります。でも、その声こそが立て直しの第一歩です。管理職にも説明してサポート体制を整えてもらいましょう。

管理職に相談する中で重要なことは、サポートのあり方です。どのようなサポートが必要かを明確に示したほうがよいのです。これをしなかったばかりに、より一層の苦しみを受けた先生方がおられます。学級もよくなりませんでした。

サポート体制は大きく2パターンあります。

A 全体指導→サポートの先生
 個別指導→担任

B 全体指導→担任
  個別指導→サポートの先生

それぞれメリット、デメリットがあります。先生方の精神状態や子供との関係、学級集団の状態に合わせて行うべきです。

また、サポートの内容も学校によって分かれるところです。子供たちに対して強気の統制型がよいのか、柔軟な受容型がよいのか、双方取り入れたバランス型なのか。よくないのは、サポートに入る先生の人柄によって子供たちへの接し方が変わることです。学級の子供たちが落ち着いて過ごすことができるサポートをしないとさらに傷を大きくすることもあるのです。

ただ、一つ心配なことがあります。今や全国的に学校現場は人手不足です。私の勤務する北九州も同様です。私が学級を崩壊させた時は、人手がありました。手厚いサポートが、私と子供たちを救ったのです。そもそも、みなさんの学校にサポートに回る人員は確保されているのでしょうか。もし、いなければ、サポートは成立せず、教師は孤軍奮闘しなければいけません。孤軍奮闘は竹やりで機関銃と戦うことと同じです。命をかけても勝つことはできないでしょう。そんな時には、まず自分を守ることを考えることも必要ではないかと思ってしまいます。

一流教師の追試をする

ごめんなさい。話がまた戻ります。「教師としての力をつけないといけない」についてです。私は、自分の力のなさを痛感していました。力がないのにもかかわらず、自分はできると勘違いしていた「裸の王様」だったのです。そのことを分からせてくれたのは子供たちでした。

「変わりたい」強くそう思いました。正直、悔しくてたまりませんでした。周りの人たちを見返したいと思いました。

学級崩壊が起こる一年ほど前、私には一人の先生との出会いがありました。それが菊地省三先生です。それにもかかわらず、学級経営が正常な状態だったので、私は菊池先生からまともに学ぼうとはしませんでした。しかし、学級崩壊が起こると、藁をもつかむ思いで菊池先生に助けを乞いました。自分の苦しい学級状況と精神状態を話しました。菊池先生は黙って私の話を聞いたあと、『中雄先生、これやってみてごらん』と言って「紙上討論」というものを教えてくれました。学級で何かよくないことが起きた時、あるいはよくない状態が続いた時に行う活動です。やり方は単純です。

①付箋を一人一人に配る
②よくないことについて無記名で思ったことを書かせる。
③付箋を集めて全員分をまとめて印刷し、子供たちに再び配布する。
④読んだ感想を書かせる。

私は、この方法を半信半疑で行いました。学級でのよくない出来事は日常茶飯事です。その日も、力の強い女子グループの理不尽な振る舞いがありました。勝手に人の物を使う。一人の弱い立場の友達を囲んでからかい、その反応を見てニヤニヤ冷笑する。その様子を見ていた他の子供たちはいたのですが、怖くて何も言えなかったそうです。

私は「紙上討論」を試みました。集めた付箋には子供たちの心の叫びが書かれていました。

「本当はやめてほしいけど、怖くて言えない」
「やられる人の気持ちも考えてほしい」
「どうして、そんなに弱い者いじめをするの?」
「グループ(集団)でやるのはよくない」
「先生、もっとしっかり怒って」
「昔はもっとやさしかったのに」

本来なら、印刷して再配布するのですが、私は思わず熱くなって、その場ですべてを読み上げてしまいました。すると、ざわざわした教室がすっと静まり返ったのです。どの子も友達の心からの言葉に耳を傾けていました。共感する子、ズキッと感じる子、後悔する子・・・。いろんな反応が感想に表れていました。

紙上討論は、あの荒れた学級で初めての手ごたえのある授業でした。この実践で、学級が立ち直ったわけではありません。ただ、その時感じたことは、一流の先生の実践の力でした。

私は、菊池先生の実践を追試していきました。当然、うまくいったり、そうでなかったりするのですが、いつもの私の授業よりも何倍も手ごたえを感じたことは確かです。その手ごたえは、初めて教師という仕事の楽しさを感じさせてくれたといっても過言ではありません。

それからは無我夢中でした。自分で授業や学習活動、学習ゲームをつくる力はないので、菊池先生の話を聞いたり、教育書を買ったりしました。面白そう、できそうと思ったらすぐに実践しました。

私の指導は、少しずつ変わっていきました。教師としての考え方が変わってきたのかも知れません。私が変わることで、不思議と子供たちにも少しずつ授業を受けようとする態度が見られるようになり、学級が立て直しの方向へ向かいました。がらりと変わったわけではありません。私を嫌った子が私を好きになったわけでもありません。しかし、サポートなしでも、授業が成立することが多くなりました。一流の先生の実践をまねするだけでしたが、その実践のもつ力は、私の日頃の授業の比ではなかったのでしょう。

授業が成立すると、授業中の問題行動も減り、サポートの先生も、2人、1人と減っていきました。学級としてはギリギリの状態でしたが、なんとか一年を終えることができたのです。

はっきり言います。一流の先生方に会うべきです。会って話を聞くと元気が出ます。菊池先生は多くの著名な先生方との出会いも与えてくれました。

野口芳宏先生、深澤久先生、鈴木健二先生、陰山英男先生、福山憲市先生、野中信行先生、土作彰先生、石川晋先生、青山新吾先生、俵原正仁先生、中村健一先生、中條佳記先生・・・。今思えば、凄い先生たちばかりです。

このような先生方の話を聞くと、とにかく元気が出ました。希望をもつことができました。だからがんばることができたともいえます。そういう意味での周りからのサポートが、自分を変え、自分に対する子供たちの見方も変えるのではないでしょうか。

「自分が変わるとすべてが変わる」私はこの言葉を実感し、信じています。

なぜ、私は学級崩壊を起こしたのか

私はなぜ、学級を荒れさせたのでしょうか、いや、これからも学級を荒れさせてしまうのはなぜでしょうか。その理由を考えてみました。

①怒りっぽい 
②プライドが高い(強がり)
③見栄えを気にする 
④考え方が雑・短絡的
⑤気が小さい 
⑥不真面目
⑦感謝の念が足りない 
⑧人の話を聞かない
⑨読書量が少ない 
⑩言行一致しない

・・・まだまだあるのですが、気分が落ち込むのでこれぐらいにしておきます。つまり、誰でも学級を荒れさせる因子はもっているということです。だからこそ、自分のメタ認知はやっておいたほうがよいでしょう。よい意味で自己否定しておくと、日頃の子供たちとの接し方に気をつけることができます。

そして、私たちの指導の良し悪しを適正に判断できるのは、私たち自身ではありません。子供や周りの先生、そして、授業のVTRです。自分に対して適切な苦言を言ってくれる同僚、先輩、仲間といった周りの人々が学級崩壊を防止してくれるともいえます。だから、どんどん教室を公開したり、自分の授業をビデオに撮って周りの先生方に見てもらい、血となり、肉となる意見をもらいたいと考えています。

授業のVTRを同僚や先輩などに見てもらい意見をもらう

イラスト/奥まほみ

『小五教育技術』2018年11月号より

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