小6 国語科「伝えられてきた文化 古典芸能の世界ーー演じて伝える」全時間の板書&指導アイデア

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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「伝えられてきた文化 古典芸能の世界ーー演じて伝える」(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:伝えられてきた文化 古典芸能の世界ーー演じて伝える(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院准教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大学附属福岡小学校・大村拓也

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、現代にまで伝えられてきた古典芸能の世界を味わい、現代と昔の人の話し方や生活の相違点、ものの見方や感じ方についての共通点を見出すことで、昔の人のものの見方や感じ方を知ることを目指していきます。

2. 言語活動とその特徴

本実践では、昔の人のものの見方や感じ方を知るために、狂言、歌舞伎、能、人形浄瑠璃といった古典芸能の動画を視聴し、部分的に演じてみたり感じたことや考えたことを伝え合ったりする言語活動を設定します。
昔の言葉の意味やその背景にある昔の人のものの見方や感じ方を考えたり、古典芸能独特の台詞まわしや動きを考えたりする学習によって、昔の人のものの見方や感じ方を知ることができるでしょう。
上記の活動を中心にしつつも、興味・関心を深めたいと子供が感じた視点を中心にそれぞれが調べたことをまとめるといった活動を通して、古典芸能のおもしろさを様々な角度から発表するといった活動も考えられます。
また、本実践を次単元の狂言『柿山伏』の導入として扱うことで、児童が学びに向かう力を発揮しながら、古典芸能の魅力を感じ、昔の人の見方や感じ方を深く学ぶことができると考えます。

3. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 映像を見る視点を焦点化する

「さあ、端末を使って自由に古典芸能の動画を見てください。」と伝えてしまっては、主体的な学習になり得ません。
主体的な学びを生み出す上で大切なのは、視聴する視点を明確にし、焦点化することです。
そのために、この後に続く狂言『柿山伏』の映像を視聴し、まずは「古典芸能ならではの独特な言い回しや所作がある場面」を視点に特色を話し合うことが有効です。その土台に上に立って、この視点を様々な古典芸能に広げ、「他の古典芸能でも、独特な言い回しや所作があるのかな」といった仮説を立てて映像を視聴することが大切です。
さらに、ある一場面(山伏が動物になりきるところ等)を演じてみることで、物語の展開についても理解していくとよいでしょう。その中で、「現代の人々にも共感できる考え方」を子供自身が見出せるような学習展開を目指します。
このように、映像を視聴する視点を明確化・焦点化することが、数多くある映像から子供が選んで視聴したり、同じ視点で複数の古典芸能を比べて視聴したりといった自己調整的な学びの姿や、粘り強く追究する姿などにつながると考えます。

〈対話的な学び〉 今と昔の共通点・相違点を見つける

本単元のように古典芸能を教材として取り扱う際には、対話的な学びとして昔の人の見方や感じ方との対話(先哲との対話)を意識付けるとよいでしょう。
具体的には、「古典芸能特有の発声、所作、舞台設定や小道具等からおもしろさを見付けたり、登場人物の会話や行動の背景にある昔の人の生活の仕方や大切にしたい考えに思いを馳せたりすること」だと考えます。それに向けて、「古典芸能を視聴し、昔と今の共通点や相違点を整理し、自分の考えをつくる活動」を設定しました。その活動を通して、昔の人の暮らしや感じ方、現代を生きる私たちにも共感できるものの見方や感じ方を捉えることができると考えます。

4. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

・教科書記載QRコードの活用

古典芸能を実際に劇場に観覧しに行ったり、学校にゲストティーチャーとしてお招きしたりということが難しい場合、様々な古典芸能を動画で視聴したり、子供向けに分かりやすく魅力をまとめているインターネットのページを調べたりするとよいでしょう。
その際、教科書P159に記載のQRコード(www2.ntj.jac.go.jp「文化デジタルライブラリー」内の「舞台芸術教材で学ぶ」等)を活用することができます。
上記3.〈主体的な学び〉に記載した、視聴する視点をもって動画を見ることが大切です。
様々な視点から古典芸能のおもしろさを見つけ、意欲的に調べ学習が進められるとよいですね。
子供たちと以下のような視点を共有することで、古典芸能の特色や多様なおもしろさを見つけることができるでしょう。

子供たちと共有したい古典芸能のおもしろさを追究する視点例 〉
・登場人物の心情や性格、人物同士のやりとり
・古典芸能の始まり方、展開、終わり方
・古典芸能が伝えようとしているメッセージや教訓
・演者の発声や動き方(せりふやしぐさ、表情)
・演者の化粧、衣装や道具・舞台設定、舞台の装置
・劇と音楽の関わり
・多くの人に興味をもってもらうための最近の取り組み(人気アニメの歌舞伎化等)

動画視聴後に「あなたが感じたおもしろさや古典芸能の特徴は何ですか。」と質問したり、「古典芸能同士の共通点や相違点をまとめてみましょう。」と活動を指示したりするなどして、子供一人一人の感じたおもしろさを伝え合う活動や、古典芸能ならではの魅力が見出される話合いを位置付けるとよいでしょう。

5. 単元の展開(1時間扱い)

イラスト/横井智美

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