役立つ「学校日誌」を書いて、後世に残る財産にしよう! 教頭のおしごと歳時記 2学期編
教頭(副校長)の毎日のルーティンの1つに「学校日誌」の記入があります。最近はパソコン上で書くことが認められ、労力的にはかなり楽になってきました。そこで、せっかく書くのなら、学校の財産になるような、役立つ「学校日誌」にしてみませんか?
【連載】がんばれ教頭クラブ
目次
1 「学校日誌」とは?
学校教育法施行規則第二十八条には、
「学校において備えなければならない表簿は概ね次の通りとする。」として、
一 学校に関係のある法令
二 学則、日課表、教科用図書配当表、学校医執務記録簿、学校歯科医執務記録簿、学校薬剤師執務記録簿及び学校日誌
(以下省略)
と、「学校日誌」について規定されています。
よく間違えられるのですが、長期休業中の日直が書く休業中日誌(日報)とは違います。
保存しておかなければならない公簿であり、管理職が責任をもって記載し、校長の認印をもらっておくべきものとなります。
しかし、「学校日誌」には何を書かなければならないかという明確な文書規定があるものは少なく、ほぼそれぞれの学校(教頭)に任せられています。
また、学校日誌は規定によれば、5年保管すればいいのですが、伝統ある学校だと創立期からの学校日誌が保管されていることも珍しくないようです。わたしの勤務校はおよそ150年の歴史があり、なんと明治期からの学校日誌が校長室に保管されています。日々の出来事が、丁寧に連綿と記載され、何万枚におよぶ記録は圧巻です。一度開いたが最後、時間を忘れて読み込んでしまうほどで、特に戦時中の日誌は興味深いです。
コロナ禍にあった頃、当時の校長が大正期の学校日誌を紐解き、多数の死者を出したスペイン風邪の記録を紹介しながら、今日の危機への処し方を話しました。過去を振り返ることで、人は様々な学びを得たり、共感を得たりできます。未来に残す財産を作るのだという気持ちで、ぜひ皆さんも学校日誌に取り組んでみてください。
2 何のために書くのか(目的)
わたしの勤務校がある市の教頭会の月例会で、あるとき、
●「学校日誌」をどう書くか
というテーマでの研修がありました。メンバーから様々な情報が寄せられ、とても勉強になりました。
まず、何のために書くのかということですが、わたしたちがまとめたのは…。
●校長が書く『学校沿革史』(永年保存)の補助資料
ということが学校日誌の重要な存在意義であるということです。
そして、実際には
●教職員の出勤状況の管理
●教職員の出張業務の管理
●施設設備の営繕修繕の管理
●学校行事等の記録
といったことが主たる目的であると位置づけました。
毎日のルーティンとして、最低限、これらに関することを書いておけば「学校日誌」としての機能を果たすことができるということです。
3 何を書けば役立つのか(内容)
また、「こうしたことを書いておけば、後世に役立つ!」という視点で議論をした結果、次のようなものが提示されました。
① 教科書取扱業者による教科書搬入日時
② 外部団体の会議出席者と学校からの持参物
③ 来客および簡単な来校目的
④ 自然災害への対応(被害状況)
⑤ 児童生徒の事故、受傷の記録
⑥ 学校への寄付の記録
⑦ 教職員の転入・転出・退職・死亡など
⑧ 教職員の公務災害の記録
⑨ 公開研究会・教育実習生・内地留学研修生・研修講師に関する記録
⑩ PTA活動・PTA役員の記録
これらは、後日教育委員会などに報告しなければならない事項をまとめる際の、基礎資料としても活用できますね。
4 過去の「学校日誌」から学ぶこと
勤務校に現存する「学校日誌」は、150有余年もの年月にわたって記録されています。それらを紐解くと、時代時代の教頭たちの感情を、日誌からありありと感じ取ることができます。
例えば次のようなものです。
●戦時中などには、○○氏(保護者・児童)が亡くなったこと
●大きな事故が発生し、○○の対応をしたこと(時系列で)
●警察、裁判所関連の記録(長期にわたって)
●学区内の大きなできごと
●学校に関わる冠婚葬祭に関すること
●創立記念行事や記念事業に関わること
このように、このほか、次の担当者、後世に生きる教職員のために残しておいたほうがいい情報を書いておくというスタンスでいればいいでしょう。
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長い旅をする船に「航海日誌」があるように、「学校日誌」は歴史という広大で果てしない海を進む学校の航海日誌です。それは連綿とつながる教育者たちの、生きてきた証とも言えるでしょう。ぜひとも、今日の航海がどうであったのかを、できるだけ生き生きと残しておくようにしましょう。退勤するとき、必ず「学校日誌」を記入するという習慣づけをすると、書き漏れがないはずです。出張時には、主幹教諭や教務主任などに依頼し、一日のできごとメモを作成してもらうといいですね。
イラスト/坂齊諒一
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。