≪無料≫「気持ちがスッと楽になりました」課題に取り組んだ先生と古舘先生のやりとりを公開!

連載
★毎月25日更新★ 自分もまわりも笑顔にする! 中堅教師のリフレクションタイム

岩手県公立小学校教諭

古舘良純
「自分さえ頑張れば」「あの子さえこうならば」から解放された時、なりたかった自分に出会えるはずです!

古舘良純先生による大好評のワーク型連載「中堅教師のリフレクションタイム」。購読者むけのLINEオープンチャット内では、真剣な学びのやりとりが交わされています。この記事では特別に、【課題4】夏休みは写真で「子どもを見る目」を養い、新学期に備える!に取り組んだ二人の先生のリフレクションと古舘先生のやりとりを無料公開します!

ピザづくりの学習で撮影した写真からリフレクション

一点目は、特別支援学級を受け持つミツ先生のリフレクションです。

ミツ先生のリフレクション

1. 一学期の終わりにおこなったピザづくりの写真です。

2.事実
・自分で具材の量を決めている
・自分のピザづくりに夢中になっている
・スプーンを使って丁寧に具材をとっている
・他の人の作り方を眺めている
・順番を守っている
・1個目と2個目のピザの中身を変えている

3.意欲
・周りのことも考えて量を調節しようとしている
・自分の思い通りのピザを作ろうとしている
・落とさないように具材をとろうとしている
・自分だけでなくお互いが楽しく作れるようにしている
・人のピザづくりを参考にしようとしている
・変化を楽しもうとしている

4.変容
・時間を忘れて学習している

5.指導してきたことや意識したいこと
1学期終わりに行ったピザづくり。学級の6人全員が終始いい表情をしていた。また、「先生2枚目作っていいですか?」「次はチーズ多めにしよう。」「これは〇〇先生にあげよう。」など、私の出る幕はほとんどなく、せっせとそれぞれが作業を進めていく。普段の授業では見られなかったような積極性が何度も見られた。このピザづくりの学習が彼らをそうさせたのか。普段の学習と何が違ったのか。これらを考えることは2学期以降の授業づくりに活きると思う。この機会に考えてみようと思う。

結論、『つながり』『自己決定』『達成感』この3つの要素があったからだと思う。

まずは『つながり』について。この学習では、一緒のテーブルでそれぞれのピザを作った。共同作業ではないが、人のピザと比較しながら作れることで「それ、いいね。」と真似したり、「俺はこうしよう。」とオリジナリティを出そうとしたりする姿も見られた。個人で完結しないという要素が「楽しさ」に繋がり、子どもたちの心に火をつけたのだと推測する。

次に『自己決定』について。この学習では、ピザに入れる具材の内容と量と並べ方を自分で選択できるようにした。自己決定度が高いと幸福度が高くなる、という研究結果もあるように、自分で決めたことが「こうすると味はどうなるのだろう、試してみたい。」といった動機付けになったり、満足感にもつながったりしたのだと推測する。

最後に『達成感』について。この学習では、自分で選択し、自分の手で作り、食べるまでを行った。結果、美味しいというフィードバックが返ってくることで、「自分の力でできた」という達成感を抱くことができた。また、作ったものを担任の先生に食べてもらい、「美味しい!」「ありがとう!」「すごいね。」と言ってもらえたことで、「人に喜んでもらえた」という達成感も得られた。これらは、ドーパミンを分泌させ、快の感情に繋がったと推測する。

『つながり』『自己決定』『達成感』この3 つの要素が、子どもたちの積極性を引き出す学習づくりのヒントになると考える。2 学期以降の単元計画に組み込んでいきたい。

6.感想
無心で写真を撮るという人はいないと思います。人がシャッターを切る時には何かしら心が動いているはずで、カメラロールには自分の大切にしていること(=価値観)が表れているのだろうと思います。だから、学校で撮った写真をもとに「自分は何でこの写真を撮ったのだろう。」と振り返ることは『自分を知る』ために意味があると感じました。

今回の私のリフレクションは「子どもを見る目を養う」という記事の趣旨とは少し外れてしまいましたが、1学期の自分の授業づくりについて省察できたので満足しています。貴重な機会をありがとうございました。

2学期以降、写真を撮る回数が減らないようにしていきたいです。そして時々、リフレクションをして自分の価値観に触れる機会をつくっていこうと思います。

古舘先生よりミツ先生へのフィードバック

「学級の6人全員」や「担任の先生に食べてもらいたい」という言葉から、支援学級も通級学級もどちらも大切にしている様子が伝わってきます。
僕の経験上、これは、簡単なようでとても難しいことです。子どもにとって、どちらもホームであるべきだと考える一方、そうふるまうことが難しいケースがあるからです(その多くが大人に問題があると思っている)。
この2つの言葉が出てきた時点で、もう子どもたちは相当恵まれているんだろうなと思いました。いつもありがとうございます。
また、 「 ドーパミン 」 という言葉が出てきたので、先日ミッチーさんの Voicy で学んだことをここでシェアします(笑)。
https://voicy.jp/embed/channel/2629/584242
「ドーパミ5」 でやる気アップ
・動きをつける
・見通しを立てる
・目的を伝える
・高得点をつける
・変化をつける
事実や意欲の部分を読みながら、「動き」があり、子どもによっては遠巻きに見る中で「見通し」を立てているんだろうと思いました。
その「目的」が「◯◯先生にあげよう!」だと感じたし、「美味しい!ありがとう!すごいね!」は、きっと子どもたちにとって「高得点」だったのでしょう。
特別支援教育において、こうした「ピザづくり」は時に「クリスマスパーティ」などに「変化」しながら生活単元として行われていくのですよね。
一つ一つの活動が、それぞれぶつ切りに見えるけれど、「ドーパミン」という言葉一つで全てつながっているとも考えることができます。深い。
リフレクションは「切り口」です。写真を手がかりに、「自分を知る」とか「授業づくり」に思考を飛躍させられるのは幸せなことですね。
・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
古舘のリアクションが遅くなってしまうことだけが申し訳ない限りですが、先生方のリフレクションからたくさん学ばせていただいております。
今後ともよろしくお願いします!

真剣にノートに向き合う男児の写真からリフレクション

二点目は、ジロウ先生がある子にフォーカスしておこなったリフレクションです。

ジロウ先生のリフレクション

1.1学期最後の日、「1学期に成長したこと」をテーマにして、14分間ノートに書いている様子です。今回は写真の真ん中に写っている男の子にフォーカスしてみました。

2.事実
 1 黙々とノートに書いている
 2 左手でノートをピシッとおさえている
 3 下半身が若干斜めを向いている
 4 鉛筆と消しゴムをしっかりと準備している
 5 目線がノートに向いている
 6 1ページの半分を越えた所に差し掛かっている
 7 前屈みになっている

3.意欲
 8「やるべきこと」に真剣に向き合っている
 9「美文字」で字を書こうとしている
 10「夢中」になっている
 11「準備力」を発揮している
 12「自分の心」に向き合っている
 13 最後まで「やり切ろう」としている
 14「やる気の姿勢」で臨んでいる

4.変容
 15 周りの人と一緒にやるべきことに取り組めるようになってきた
 16 相手の気持ちを意識して丁寧な字を書くことができるようになってきた
 17 集中力が伸びてきている
 18 5分間の間に何をするのかがわかってきた
 19 自分の成長・心と向き合えるようになってきた
 20 時間いっぱいまでやり切ろうとしている
 21 やる気を自分で起こそうとしている

5.指導してきたこと・意識したいこと・エピソード
始業式の日、一人おちゃらけた顔で集合写真に写った彼。「どんな子だろう?」と思いましたが、掃除を率先して行ったり、給食準備を自分が係でもないのにやったりと勤労意欲が高くて頼もしいなと感じたのを覚えています。しかし、そんな彼ですが、この1学期一番涙を流した子です。そして、私自身が「どう指導すればいいのか?」「どうアプローチしていけばいいのか?」と非常に悩んだ子です。自分の思い通りにいかないことがあるとすぐにいじけてしまい、やる気がゼロになってしまう彼、テストがわからないとグダっと机にもたれかかってしまう彼、授業で挙手をしても自分だけ当てられないと怒りと悲しみを訴えてきた彼、間違いに対してどうして!?合っているのになぜ違うんだ!と納得がいかずに怒る彼・・・など様々な面で感情的になってしまう姿が目立ちました。叱られることは悪いことではない。大切なのは叱られ方やその後の行動であると指導をしてきましたが、彼の叱られている時の態度は決してよいものだとは言えない時が多々ありました。その度に4・5・6月の初めまで「この態度は許されない!」と感じてしまい強く叱ってしまいました。しかし、なぜか彼の心に響いている感じ、心に刺さっている感覚がありませんでした。「なぜ、伝わらないのだろう・・・」と悩む日々が続きました。

そんなある日、彼が、泣いて訴えてきたことがありました。彼が、お母さん、お姉さんといつも一緒にいることをクラスの女子に馬鹿にされているというのです。彼に気持ちを問うと「僕はお父さんが死んでしまって、お母さんお姉さんしかいないからしょうがないのに・・・」と涙を流しました。この時、はっとさせられました。父親がいないことによる寂しさ、躾の不十分さ。母親も遅くまで働き、お姉さんと二人で家にいることも多い。彼の心はとても寂しく、誰かにすごく認められたいという欲がすごいということに気付かされました。ふざけたり、不貞腐れたりする行動は彼のサインであると。その日から彼に対するアプローチ法を意識して変えてみました。今まで「ちゃんとやる!見逃してはいけない!」という、正直、自分中心の指導に陥っていました。そこを変えて「ちゃんとやれると信じている。あなたはできる人だ!」という信じるという心のスタンスで叱っていきました。そして、迎えた終業式。みんな一緒に真剣にノートに向き合う姿を見て、少しずつ変わってきているなと嬉しく感じました。

彼のエピソードを掘ってみて感じたこと、そして、夏休み中に行われた保護者との個人面談にて感じたことですが、成長に対する事実とその根拠をもっとはっきりと目に見える形で表したいと感じました。(自分の言いたいこと伝わっていますかね。わかりにくくてすみません。。。)子どもに対して「あなたは成長したよ!」「保護者に対して「○○さんは成長していますよ!」と言葉とエピソードで伝えていますが、事実がまだ弱いなと感じます。そして、なぜ成長をしたのかという根拠も。成長の数値化。それができたらわかりやすいですが、なかなか成長というのは数値で測れないものだよなと感じます。「成長の可視化」「成長の根拠」「どんなアプローチが響いたのか」。授業や行事もたくさん入り、日数も一番長い2学期ですが、子どもたちを置き去りにしてはいけないなと。子どもたちの存在と成長を常に1学期以上に意識しながら、2学期を過ごしたいと感じました。そのきっかけになったリフレクションでした。自分を見つめ直す機会と気付きを与えてくださりありがとうございます。

古舘先生よりジロウ先生へのフィードバック

ご丁寧なリフレクションに驚きました。細部にこだわって見取り、奥にもぐって感じ取ろうとする姿勢に本気度の高さを感じました。
課題に取り組んでくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
まず私が感じたのは、子どもたちって強いなということです。学校に来ているだけで十分頑張っている。そこに敬意を払わなければと思いました。そして、その子のことを「わかったつもり」になってはいけないと思いました。
「理解できるわけがない」という前提に立ち、それでも理解し続けようとする姿勢が大切だと、ジロウさんの振り返りから学びました。
次に、そんな「彼」のエピソードを教えていただいた後に「意欲」や「変容」を私なりに考えてみると、
昔の自分を振り切ろうとしている
自分自身に責任の矢印を向けている
自分の底力をみくびっていない
みんなと一緒に成長しようとしている
新しい自分に生まれ変わろうとしている
など、彼の前向きで力強い決意のようなものが見えてきました。
彼、本当にすてきな成長を見せていますね。
最後に、「成長に対する事実とその根拠をもっとはっきりと目に見える形で表したい」というジロウさんの願いについて僕の考えを記します。きっと、保護者面談の際に彼の成長をうまく示せなかったのかなと思いました。でも僕は「伝わっている」と思いました。
ジロウさんの言うように、成長は目に見えません。数値化もできません。そして、3歩進んで2歩下がるようなことも日常です。そんな中で無理に成長を見える化してしまったら、安っぽくなってしまう気がします。陳腐なものになってしまう気がします。
最近彼にはこんなことがあったという事実。それを過去や現在と結びつけてみるとこう考えられるという未来志向。そして、そこにジロウさんがいるということ。それだけで十分じゃないですかね。嬉しそうに語るジロウさんがいる。心から喜んでいるジロウさんがいる。そんな空気感だけで、保護者の方には十分伝わると思います。僕はそう思います。
僕も、2学期の彼の成長が楽しみになりました。素敵なレポートをありがとうございました。

その後も、ジロウ先生と古舘先生とのやりとりは続いていました。

いかがでしたか? 学級が荒れやすいと言われる秋。まだ連載をご覧になっていない先生は、いつからでも遅くありません。トライして、学級づくりの足腰を鍛えてみてくださいね。

来月は、2023年10月25日の配信です。笑顔の多い一ヶ月になりますように!

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