小5社会「私たちの生活と森林」指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小5社会「私たちの生活と森林」指導アイデア バナー

執筆/札幌市立南月寒小学校主幹教諭・竹村正
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
     札幌市立山鼻小学校校長・佐野浩志

年間指導計画

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・国土の地形と気候の概要 
・低い土地のくらし
・高い土地のくらし
・あたたかい土地のくらし
・寒い土地のくらし
・米づくりの盛んな地域
・水産業の盛んな地域
・日本の工業生産と工業地域の特色
・自動車工業の盛んな地域
・工業生産を支える貿易や運輸
・放送などの産業とわたしたちのくらし
・情報を生かして発展する観光業
・情報を生かして発展する販売業
・情報を生かして発展する運輸業
・国土の自然災害 
・私たちの生活と森林
・公害からくらしを守る

目標

我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について、森林資源の分布や働きなどに着目して、地図帳や各種の資料で調べてまとめ、国土の環境を捉え、森林資源が果たす役割を考え、表現することを通して、森林はその育成や保護に従事している人々の様々な工夫と努力により国土の保全など重要な役割を果たしていることを理解するとともに、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことを基に国土の環境保全について、自分たちにできることなどを考えようとする態度を養う。

評価規準

知識・技能

①森林資源の分布や働きなどについて、地図帳や各種の資料で調べ、必要な情報を集め、読み取り、国土の環境を理解している。
②調べたことを文や白地図などにまとめ、森林は、その育成や保護に従事している人々の様々な工夫と努力により国土の保全など重要な役割を果たしていることを理解している。


思考・判断・表現

①森林資源の分布や働きなどに着目して、問いを見いだし、国土の環境について考え、表現している。
②森林と国土の保全や国民生活を関連付けて、森林資源の果たす役割を考えたり、国土の環境保全について、自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりして表現している。


主体的な学習に取り組む態度

①我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について予想や学習計画を立て、学習を振り返ったり見直したりして、学習問題を追究・解決しようとしている。
②学習してきたことを基に、国土の環境保全について、自分たちにできることなどを考えようとしている。

学習の流れ(7時間扱い)

問題をつくる 2時間

  • 国土に占める森林の割合や日本の土地利用、天然林と人工林の写真の比較などの資料を読み取り、森林の働きを予想し、誰がどのように守り、私たちが森林資源をどのように活用しているのかを考え、学習問題をつくる。

(学習問題)
森林にはどのような働きがあり、森林の多い日本の国土と私たちのくらしには、どのような関わりがあるのでしょうか。


追究する 3時間

  • 天然林の働きや、人や動植物にとっての森林の役割について調べる。天然林に手を加える森林官の意図を話し合う。
  • 林業で働く人の仕事の工夫や努力、人工林の活用の仕方について調べる。
  • 森林の働きや私たちの生活との関わり、森林資源の利用について調べる。

まとめる 2時間

  • 森林の働きや私たちの生活との関わりを調べて整理し、林業の現状や課題、木材利用の在り方について関係図にまとめる。
  • 森林を守り、活用していくことについて選択・判断し、守ることと活用することのバランスの大切さを捉え、自分たちにできることを考え、話し合う。

問題をつくる

国土に占める森林の割合や日本の土地利用、天然林と人工林の写真の比較などの資料から、日本の森林資源について関心をもち、森林の働きや森林資源をどのように活用しているのか、森林を誰がどのように守っているかを予想し、学習問題をつくる。(1、2/7時間)

導入のくふう

森林の写真を提示し、子供たちにとっての「森林」のイメージを共有する。「気持ちがよい場所」、「身の回りにたくさんある木を使った製品」、前単元を受けて「災害を防ぐもの」など、子供たちの森林に対するイメージを膨らませる。世界各国の国土に占める森林の割合、日本の土地利用の資料から、日本が森林大国であることを実感させていく。そして、天然林と人工林の写真の比較、天然林と人工林の面積の変化のグラフから、森林の総面積に大きな変化がないことに気付かせ、学習問題をつくっていく。

 


1時間目 
森林に対するイメージを共有し、身の回りには木を使った製品がたくさんあることを捉える。また、前単元で森林には災害を防ぐ役割もあることを想起する。そして、森林が日本の国土の約3分の2を占めることを資料から読み取り、我が国の国土と森林資源について関心をもつ。

森林と聞いて、どのようなイメージをもちますか。また、私たちの暮らしと森林は、どのような関わりがあるでしょう。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト
小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト
小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

森林の中は、空気がきれいで気持ちが落ち着くよ。

私たちの身の回りには、木でつくられた製品がたくさんあるね。

前の単元で、森林が水を貯え、土砂災害を防ぐ役割があるって学習したよ。

では、日本の国土全体における森林の割合は、どのくらいなのでしょうか。

小5社会「私たちの生活と森林」 図
世界各国の国土にしめる森林のわりあい
小5社会「私たちの生活と森林」 図
日本の土地利用

日本の国土のおよそ3分の2が森林なのだね。

外国と比べても、日本の森林の割合はとても高いよ。

水田や畑地、都市も多いけれど、森林の面積が最も広いことがわかるね。

私たちの暮らしにとって、森林は重要な役割がありそうですね。そして、日本は、世界の国々と比べて国土の面積は狭いけれど、森林の割合が高く、「森林大国」であると言えます。

  


2時間目 
天然林と人工林の写真を比較し、木の並び方等から天然林と人工林の違いを捉える。また、天然林と人工林の面積の変化のグラフを基に学習問題をつくり、誰がどのように森林資源を守り、活用しているのかを予想して、調べる計画を立てる。

この2枚の写真は日本の森林の様子を表したものです。どのようなことがわかりますか。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト
小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

どちらも森林の写真だけれど、木の並び方など、様子が全然違うね。

一方は木の大きさや太さ、並び方がバラバラになっているけれど、もう一方はそろっている感じがするね。

森林は私たちの暮らしにとても大切なものだわ。木の並び方がそろっている森林は、人の手で小さな木を植えて育てた森林なのではないかな。

左の写真の森林のことを、自然のままの「天然林」、右の写真の森林のことを、人が手を加えた「人工林」と言います。人工林において、木を植える「植林」から、木を切る「伐採」まで、およそ50~80年かかるのですよ。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

1本の木が育つには、とても長い時間がかかるのだね。その間、どのような仕事をしているのかな。

天然林も人工林も私たちの暮らしと関わりがあって、とても大切なものですよね。天然林と人工林の面積の変化のグラフを詳しく見てみましょう。

小5社会「私たちの生活と森林」 図

昔に比べて天然林の割合が減って、人工林の割合が増えていることがわかるよ。

森林全体の面積は減っていないね。木を使った製品が身の回りにたくさんあるのに、どうして森林全体の面積は減っていないのかな。森林を守り育てている人がいるからかな。

森林は私たちの生活になくてはならないものだというのは知っているけれど、森林にはどのような働きがあるのかな。

では、みんなの予想をはっきりさせるために、森林の働きや、森林資源を守り育てていく人が、どのような取組をしているのかをこれから調べていきましょう。

 
森林にはどのような働きがあり、森林の多い日本の国土と私たちのくらしには、どのような関わりがあるのでしょうか。

追究する

子供の予想を大切にして調べ活動を行う。天然林の働きと、人工林の育成と活用とに分けて調査活動を進める。天然林は、ただそのまま残しておくだけではなく、人が適切に手を加えることで守り続けることができることに気付いていく。また、人工林の育成と活用について学ぶ際、1人1台端末を使い、苗木を植えて育て、木材として販売するまでの流れをまとめていく。森林の働きや森林資源がどのように活用されているかを考えることを通して、森林が果たす国土の保全や私たちの生活を守る役割について捉えていく。(3、4、5/7時間)

「対話的な学び」のくふう

3時間目の学習では、天然林はそのままの状態で残したほうがよいと考えている子供に、「森林官」が天然林で成長した大きな木を切っている写真を提示する。木を選別し、切る作業をする森林官の意図について話し合うことを通して、天然林を守ることの意味を考えていけるようにする。また、人工林の育成と活用について、調べまとめたことを発表できるように、1人1台端末のプレゼンテーションアプリを使ってまとめ、互いに交流する活動を取り入れる。

 


3時間⽬ 
世界自然遺産にも登録された白神山地の天然林の働きについて、教科書や資料集等を基にして調べ、まとめる。また、天然林に人の手を加える意図を考えることを通して、森林を守り、元気にするねらいに気付く。

自然のままの白神山地の天然林には、どのような働きがあるのでしょう。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

鳥や小動物、熊などの生き物の棲み処や餌を与える生活の場になっているね。自然のままの天然林を、いつまでも守り続けていきたいな。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

森林には、たくさんの水分が染み込み、源流からは養分を含んだきれいな水が流れ出していて、魚の生息地にもなっているよ。

小5社会「私たちの生活と森林」 イラスト

森林官という森林を守る人が、天然林で成長した大きな木を切ることがあります。

えっ、どうして。自然のままで残し、守っていくことが大切なのでは。切ってしまっていいのかな。

問い (自然のままの天然林を大切に守ってきているのに)森林官は、どうして天然林の大きな木を切るのだろう?

大きな木を切ることで、小さな木に太陽の光が当たり、たくさんの木が大きくなることになるよ。

新しい木が育てば、森が元気になり、たくさんの水を貯えることができるようになるね。

天然林をこれからも守っていくためには、人の手が欠かせないね。

対話的で深い学びにつなげるポイント
自然のままの天然林をそのままにしておくだけでは森林を守ることができません。「若い木を育てる」「森林の貯水能力を上げる」という視点で、人が手を加えることの価値に迫るように関わります。

 


4時間⽬ 
人工林を育て利用している林業で働く人について、1人1台端末を使って調べ、教科書や資料集等も活用しながらまとめ、互いに調べたことを発表し合って交流する。

イラスト/栗原清、横井智美

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