理科の授業で「教科書」とうまくつきあうには 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#29


皆さんはどの程度、理科の教科書を使っていますか?
一般的には教科書通りに授業をするのではないかと思います。しかし、途中の流れが飛ばされているところもありますし、方法や教材に違和感があり、使いづらいな…と感じられる方も多いのではないでしょうか。また、教科書には「答え」が載っているから使いたくない(または)使わない、という声もよく聞きます。
今回は教科書の使い方について考えてみたいと思います。教科書と、どんなふうに付き合っていくのがよいのでしょうか。
執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.教科書は「1つの授業事例」
自分が授業をする、という立場で教科書を読み込んでみると、何だかやりにくい方法をとっていたり、市販の資料や教師用の参考書などとは異なった授業展開だったり、違う教材を使ったりしていることがあります。問題や実験、まとめの部分は丁寧に書かれていますが、具体的な授業の流れについては、大雑把にしか書かれていなかったりします。
また、理科の教科書は複数の会社から出ており、会社によって教材や授業の展開が異なっています。
実は理科の授業展開や、それに伴って使用される教材は1つに決まっているわけではなく、1つの事例として紹介されているに過ぎないのです。学習指導要領に書かれた学習内容を達成するために、各教科書会社の制作陣が「これがよい」と考えた授業展開が書かれているわけです。
同じ単元でも、教科書会社によって使っている教材や学ぶ順番が異なりますし、授業展開も異なります。
ということは、つまり私たちが授業をする際も、学習指導要領さえ達成できれば、必ずしも教科書の内容に沿わなくてもよい、ということです。
ただし、業者テストをする際は、教科書の内容に沿った問題になっているので注意しましょう。
2.授業の進め方は「吹き出し」を参考に
教科書には、問題、予想、実験…と、問題解決の過程に沿って、授業の流れが書かれています。
しかしながら、それぞれの段階において「押さえること」や「やること」と言った目印が書かれているに過ぎず、それらの目印に至るまでに、どのように話し、どのように授業を進めるのか、という具体的なことは、詳しく書かれていません。
そこで参考になるのは、教科書内に書かれている「子どもや先生の吹き出し」です。吹き出しをよく見てみると、授業を進めるために参考となる「先生の発言」や「引きだしたい子どもの回答例」が書かれていると思います。教科書の制作陣が想定している授業の展開が、キーワードのようにして書かれているわけです。
授業をする先生の個性や、重点を置く方針、子どもたちの学習状況などによって、その通りにしてもうまくいかないことがありますが、どのように授業を進めていけばよいか分からないときは、まず、ここを手がかりにしてみましょう。