カミングアウトした教員が教えるLGBT教育の心得
少しずつ社会に浸透してきた「LGBT」という言葉。同性を愛するレズビアン(L)やゲイ(G)、両方の性を愛するバイセクシュアル(B)、心と体の性が一致しないトランスジェンダー(T)などのセクシャル・マイノリティの割合は、あるデータによると約8%、クラスに1人~2人いるとも言われています。
平成27 年には文部科学省から、性同一性障害にかかわる児童生徒へのきめ細やかな対応等を求める通知がありました。自分の性に揺れている当事者の子供を救うだけでなく、すべての子供たちが豊かに生きるために、「自分の性や相手の性を大切にする」ということを、先生も子供と一緒に考えていきましょう。
公立小学校の教員でありながら、勇気をもって、自らのセクシュアリティをカミングアウトした鈴木茂義先生に、「LGBT教育」についてお話しいただきました。

鈴木茂義先生●都内の小学校教員退職後に、ゲイであることをカミングアウト。現在は小学校で非常勤講師を務めながら、セクシャル・マイノリティについての教育・啓発活動を行っている。東京都世田谷区男女共同参画センターらぷらす相談員。

目次
自分の性に揺れていた小学校時代「嘘をつくのが辛かった・・・」
クラスの中に、「女の子っぽい男の子」や「男の子っぽい女の子」はいませんか? そして、その子たちがそれを理由にいじめられていたり、悩んでいるとすれば、先生はクラスの子供たちをどんなふうに指導しますか? 「LGBT」や「性の多様性」は、もはや「大人の性の問題」ではなく、小学校からしっかり教えて、みんなで考えなくてはいけない「生き方と在り方の問題」だと、ぼくは思っています。
ぼくはゲイです。自分のことを男性だと認識していて、性的指向が男性である男性同性愛者です。当事者として、自分の小学生時代をふり返ってみると、最初から「自分はゲイ」だと自覚していたわけではありません。ただ柔らかい物腰だったので、男らしさのヒエラルキーにおいては底辺でした。地域のソフトボールチームに誘われるのも嫌だったし、スポ根のアニメも苦手。男の子のコミュニティでフットボールに誘われたりする同調圧力も、しんどかった記憶があります。
でも、同級生の女の子を好きにもなりました。ただ、好きな男の子もいたし、男の先生を好きになることもあって、自分の性は揺れていました。宿泊活動のときなどに、「誰のことが好き?」みたいな話題になると、好きな女の子は当時おらず、男の子が好きだったので、話ができなくてごまかしていました。それが、一滴一滴水を垂らすように、「なんで、嘘をつかなくちゃいけないんだろう」というしんどさとなり、溜まっていきました。こんなふうに、ぼくの小学校時代は、性の芽ばえの時期でした。
小学校でわかりやすいのは、早い時期に芽生える「T」

ごまかせないのは、服装や髪型、思考や言動が、身体の生来の性と逆になっている子供。「LGBT」の「T」であるトランスジェンダーの子供です。トランスジェンダーの子供は、自然にカミングアウトの状態になっていることが多いので、周囲にもわかりやすい傾向があります。また、性的指向と関係ないので、比較的早い時期に違和感を覚えるようです。すでに七五三で、「女の子のかわいい着物を着たくない」という子も現われます。就学前健診の段階で、小学校に相談案件として寄せられるケースも増えてきました。
生まれたときの性別と自分が認識している性別とが違ってくると、本人はそのギャップに苦しむことになります。また、トランスジェンダーは見た目でわかることもあるので、周囲も気が付きます。周りの子供は思ったままの疑問を口にするかもしれません。
そんなときに、心ない言葉を浴びて、心に深い傷を負ってしまうかもしれません。いじめや不登校につながる可能性だってあります。
先生が「あの子、そうなのかなぁ」と気付いたとき、早期にさりげなく「何か困っていることはない?」と声をかけるなど、個別の対応が必要です。「集団の中で適応できているだろうか?」が一つポイントになります。本人に困り感がなければ、ひとまず、見守る姿勢でよいと思います。
「LGBT教育」は、もう「知らない、わからない」ではすまされないのです。