ChatGPTを小3国語「モチモチの木」で使ってみたら 【池田修×藤原友和チャット対談#3】


対談/京都橘大学発達教育学部児童教育学科教授・池田修
北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和
話題沸騰の生成AI「ChatGPT」を、教師は教育の現場でどう使うか、どう使えるのかについて徹底的に考えるこの対談企画。 前回の対談での呼びかけに応じて、さっそく樋口万太郎先生が実践レポートを寄せてくれました。それでは今回も、池田先生と藤原先生のチャット対談の模様をご覧ください!
前回記事もチェック!
ChatGPTは教員の仕事にどう使えるのか? 【池田修×藤原友和チャット対談#2】
藤原友和:樋口万太郎先生から、ChatGPTを使った授業実践について報告が届いたようなので、さっそく見てみましょう!
池田修:書ける人はすぐに書くねえ。もう書いてあったんかねえと思うぐらい。
報告者/樋口万太郎(香里ヌヴェール学院小学校教諭兼研究員)
3年生国語物語文「モチモチの木」の実践です。単元の最後に取り組んだゴール問題の実践です。ゴール問題とは、単元で学習してきたことを使い、考える問題のことです。ゴール問題は単元の最初に子どもたちに提示しています。
【ゴール問題】
あなたは20歳になった豆太です。
最後の場面を思い出し、その当時の様々な気持ちを思い出しました。
その思い出した様々な気持ちなどをまとめましょう。
子どもたちは本単元では、
① 子どもたちが問いづくり
② 物語の設定の確認
③ つくった問いをグループでベスト3に絞る
④ グループごとに、③のベスト3の問いについて考え、表現する
⑤ 先生からの課題に取り組む
⑥ 改めて問いについて考える
といった流れで学習を進めてきています。
さぁ、今日はいよいよゴール問題を考えていくよ!という前に、まずはChatGPTについて説明しました。
そして、「子どもたちみんなが取り組む問題をChatGPTに聞いてみた」と子どもたちに伝えました。
子どもたちは、「え!? どんなの?」「どんな回答か知りたい!」と興味津々です。
以下が実際にChatGPTに聞いたものです。
国語モチモチの木の問題です。
次の問題を400字以上でまとめましょう。
あなたは20歳になった豆太です。
最後の場面を思い出し、その当時の様々な気持ちを思い出しました。
その思い出した様々な気持ちなどをまとめましょう。
以下のものが回答です。そして、これを子どもたちに読みました。
「モチモチの木」という物語の最後の場面を思い出し、当時の様々な気持ちをまとめてみましょう。
物語の最後の場面では、林檎を実らせたモチモチの木が豊かな実をつけ、村人たちがその実を楽しんでいる姿が描かれています。この場面を思い出すと、私は様々な感情を抱きました。
まず、喜びや感謝の気持ちが湧いてきます。物語の中で、モチモチの木は小さな木から育ち、林檎を実らせるまでに多くの時間と労力を費やしました。しかし、その成果を見ることができたときには、やりがいや喜びを感じることができました。同時に、木が豊かな実をつけることで、村人たちも満足感を味わうことができたため、お互いに感謝しあう気持ちが生まれました。
また、この場面を思い出すと、自分自身の成長を感じることもあります。私自身も、小さなころから様々な経験を積んできました。そして、この成長の過程で、苦労や挫折を経験することもありました。しかし、物語のモチモチの木のように、自分自身も少しずつ成長していったことを実感できるのです。
一方で、この場面を思い出すと、未来への不安も感じます。物語の中で、村人たちは豊かな実を楽しんでいますが、果物は一時的なものであり、そのうちに食べ尽くされてしまうかもしれません。同じように、私たちも人生の中で様々な楽しみや成功を経験することがありますが、それがいつまで続くかはわかりません。そのため、未来に対する不安や心配が生まれることもあるでしょう。
以上が、私が思い出した様々な気持ちです。この物語を通じて、自分自身や周りの人たちに対する感謝や、成長への意欲、未来への不安など、様々な気持ちを抱くことができました。
読んでいる途中から「え? おかしい」「違う話が混ざってない?」「ChatGPTもたいしたことないな」というつぶやきがチラホラ。
そこで、「どこがおかしかったの?」と聞いたところ、
・モチモチの木 →林檎
・村人たちも満足に味わうことが〜 →村人の話ではない。
・豊かな実を楽しんで〜 →そんな文はない
など、叙述をもとにしたたくさんの意見がでてきました。
そして、最後の文にある「自分自身や周りの人たちに対する感謝」「成長の意欲」などのところに共感はするが、「未来への不満」は違うということを強く言っている子がいました。このようにChatGPTが書いたものに反論ができるということは、モチモチの木を読めているということである。
そこで、「みんなChatGPTに反論できているということは、よく読めているということだよ。でもよく読めていなかったら、この文を知らなかったら、ChatGPTのことを信じてしまうよ。」という話をすると、「確かに……」「なんだか怖くなった」といった子どもの反応がありました。
こうしたやりとりをしたうえで、ゴール問題に取り組む時間を設けました。子どもたちはこれまでの自分の学びの蓄積をもとに、友だちと話し合いながら、そして紹介したChatGPTの文をもとにゴール問題に取り組む姿がみられました。
(以上)
ChatGPTのおかしなところにツッコミを入れるというのは私の授業報告と同じ構造ですね。それを読み取りの確認に使うのが、読書へのアニマシオンの「読み違えた読み聞かせ」のようですね。面白いです。
私は、樋口さんが狙った授業と、実際がずれている気がしました。ゆるいプロンプトで、子供たちにChatGPTの「たいしたことなさ」を伝えたいことが狙いではない気がするのですが。ChatGPTから適切な回答を得るためのプロンプト研究というのも、教材研究の一環になるのかもしれません。
面白く感じた一方で、最終課題が難しいようにも思いました。物語の続きを書くという学習活動の場合、往々にして荒唐無稽な話、設定を無視した話になりがちです。最終的に子どもたちが書いた作品がどのようなものだったのか気になるところです。
このゴール問題の授業は、読解では割と昔からある授業です。走れメロスのその後を書けとか、羅生門の下人のその後を書けとか。
で、これは思考コードの「Cゾーン」を問う問題です。いわゆる 「あらかじめ答えが設定できない問い」です。(世の中では、答えのない問い、と言っていますが、あれは間違いです。答えはありますもの)
※参考リンク:子供の学力の新観点「思考コード」を知っていますか?
で、これは、ブルームのタキソノミーの最上位の「創造」に対応しています。従来、ここはコンピュータには無理な領域と教えてました。2022年度までは。ところがここに、黒船襲来したという訳です。
※参考リンク:ブルームの分類法とは
プロンプトのチューニング次第で、ChatGPTが書き出す答えはかなり幅が出ます。それで、ChatGPTを使うとこのCゾーンの授業が、格段にやりやすくなるわけです。
従来はこのChatGPTがやることを教師がやっていました。しかし、ChatGPTのお陰で、藤原実践が示したように、先生も平場に下りてきて、子供と一緒に検討できるわけです。私はここにかなり魅力を感じています。
これは、句会の時に、作者を隠して教師が生徒の中に入って、平場でガチで選び合うことで体験していたものです。が、このようにいろんなことでできそうなのはとても楽しいです。
樋口実践の「旨み」というか、検討対象をChatGTPに委ねて、教師と子どもで検討するというスタイルは基礎的な活用方法として「あり」だと思います。そして、実際に他の先生が触ってみたときに苦労するのがプロンプトのライティングの部分だと思います。
そして、ChatGTPに精度高く書かせるプロンプトと、子どもの創造性を発揮する余地を残した指示の仕方は、次元が違うようだなとなんとなく分かってきました。 この、「なんとなく違いそう」を感じ取ってもらえれば連載初期の実践例としては成功だと思います。
そして、池田先生の解説のように、思考コードを視点に整理していくと実践も豊かになっていきそうだ、という気がしました。
実践は、仮説を立ててあれこれやりながら進めていくものだと思います。そういう観点に立てば、まず始めてみて手がかりを得ようとすることは、とても意味があると思いますね。
他の人の実践にも良い影響を与えることになると思います。
で、今度は私のほうで樋口実践を延長して、先にあらすじをChatGPTに読み込ませてから、以下のような条件設定をして日記を書かせてみました。