第4学年「季節と生物」は4月が大事 【理科の壺】
4年生の植物の単元は、年間を通して観察をします。先生としては、その都度気づいたことを記録するのも大切ですが、前の季節と比較したり、継続的に観察する植物の変化を見たりします。そのため、年間を通して「何を見せることがよいのか」について、あらかじめ考えておきたいものです。また、地域や学校によって観察できる植物が違ったり、見ることができる時期が異なったりしますので、そのあたりも考えておきたいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・三井寿哉
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.1年を通じた問題解決
第4学年「季節と生物」は、その名の通り春、夏、秋、冬の季節と生物の活動の関係について問題解決していきます。よって春に見出した問題と予想について1年かけて調べ、冬が終わる2、3月に結論を出す異例のロングラン単元です。
①「季節と生物」指導あるある
「季節と生き物」は4月に学習計画を立てますが、継続できず、観察が疎かになってしまうことがあります。以下のような結果やまとめになってしまうことがあります。
●4月にサクラの木を観察したが、10月以降はきれいなモミジを観察したため、年間を通じた植物の変化がわかる記録がない。
●4月に気温を計る活動計画を立てた。日直が記録するルールも決めたが、活動が途絶えてしまい、年間の気温の記録がない。しかたなくインターネットで過去の気温を検索した。
●見つけた昆虫を丁寧にスケッチして一つの生物しか見つけられていない。
●まとまった記録がなくても、子どもはこれまでの生活経験で「気温と生物は関係している」と結論文が書けてしまう。そして、誰しもが納得してしまう。
教師は年間の活動の見通しをもち、どのような記録を残して、どのようにまとめていくかというビジョンをもつことが大切です。そして何より、子どもが年間を通して「調べたい!」という気持ちでいられるよう働きかけていくようにします。
②結果をもとに科学的な考察・結論づけよう
子どもは、春になると花が咲き、夏は葉が茂り、昆虫等がよく見られ、秋に葉が落ち、冬は生き物があまり見られないことを生活経験から知っています。子どもにとってはすでにわかりきった学習内容なのです。しかし、その概念は漠然としており、気温の変化と生き物のようすを関係づけて考えたことはなく、科学的に説明することもできません。
本単元は、季節の変化を気温で数値に表し、その変化を読み取ります。また、生き物の数や活動のようすの変化を観察しながら記録に残し、それらを関係づけながら考察することで科学的な結論を見出すことを目的にしています。
2.調べたい “モチベ” を上げよう
①根拠を基にした予想を立てる
この単元は、4月に立てる予想の場面において、生活経験を思い起こしながら想起することが容易になります。予想をして見通しをもつことで、観察の視点もはっきりし、モチベーションを上げることができます。
「春は暖かく感じるから気温が上がり、冬は寒いから気温が下がる。」
「春から夏にかけて生き物を採ったり、植物を育てたりした経験があるから、そのころは生き物が多く見られるだろう。」
「気温が上がると生き物は成長したり増えたりすると思う。」
これらの予想を検証するための年間を通じた観察計画を考えていくようにするといいでしょう。
②夏、秋、冬ごとに予想を立て直す
4月は漠然とした経験による予想の根拠ですが、夏、秋、冬と観察を続けていくことで、これまでの記録を生かした根拠のある予想が立てられるようになります。4月に立てた予想がより詳細なものへと改編されていくのです。予想が詳しくなると、たしかめたくなる気持ちが高まります。予想を見直すことで調べるモチベーションが上がり、活動意欲を持続させることができます。
3.観察が充実するポイント
①気温測定はデジタル化でOK
気温を毎日測ります。日直が決まった時間に棒温度計を使って日々気温を計る方法もありますが、土日や計測忘れがあると疎らな記録になります。そこで、デジタル温度計を購入して定位置に設置し、スマホやPCに連動させることで記録を自動保存することができます。気温のグラフを子どものタブレット端末に送ることも容易になります。
また、スマートフォンには温度を測るセンサーが搭載されています。このセンサーを利用して気温を測定できる温度計アプリをダウンロードすれば、スマホだけでも気温を測定することができます。
②サクラの「葉」に着目させてみよう
学校にあるサクラの木は年間を通した植物の成長や変化を定点観察するのに適しています。しかし、多くの子はサクラの全体像を見て「木」をスケッチします。変化を観察しなければいけないので、全体を見ると同時に細かいところまで観察してほしいです。そこで、「葉」に着目するようにします。4月のサクラの葉は鮮やかな新緑です。夏になるにつれて深緑に変化し、秋になると赤くなり、落葉します。葉の色だけでなく大きさや厚みにも着目するだけでも変化を捉えることができます。枝先に着目した観察を行うことで、葉がない冬でも小さな新芽を見つけ出します。
③動物はスケッチより種類や数を表にまとめる
春や夏に見られた動物や昆虫を丁寧にスケッチする子が多く見られます。時間をかけて姿をスケッチしても、次の季節で同じ生物を見つけることができず、記録をもとにした比較に生かせません。しかも、その子たちは1匹の動物しか見つけていない可能性が高いです。それで夏には動物がたくさんいたと語られては科学的ではありません。
動物は見つけた種類、数、動きを数字や言葉で書き記す程度でよく、タブレット端末で写真に残しておけばOKです。多くの種類の動物を見つけ、それらを表にまとめておくことで、次の季節の観察でそれらの有無をたしかめたり、活動の変化を比較したりすることが可能になります。3学期の考察時も多くの生き物の数やようすをデータとして考えることができます。
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〈執筆者プロフィール〉
三井寿哉●みつい・としや 東京学芸大学附属小金井小学校教諭。理科を中心に日々実践研究を行う。本学教育実習をはじめ、東京未来大学非常勤講師、姫路大学非常勤講師の教員養成にも携わる。理科おもしろゼミ研究会代表、NHK Eテレ『ふしぎエンドレス』作成協力委員、共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書出版)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版社)など。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。