リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #37 あなたはどこで待ちますか?|永井健太 先生(大阪府公立小学校)


子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促す……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。今週は永井健太先生のご執筆でお届けします。
執筆/大阪府大阪市立明治小学校教諭・永井健太
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和
目次
1 はじめに
みなさま、こんにちは。
はじめまして、大阪市で小学校教諭をしている永井健太と申します。14年目の中堅教員として働いております。とはいえ、日々悩むことばかりで、様々な困難に対応していくためには、これからも学び続け、変化し続けていかなければいけないと強く感じています。
そんな中、このような素敵な学びのチャンスをいただけたことを嬉しく思うと共に、本稿を読んでくださった方々ともぜひ学び合いたいと思う次第です。
さて、私は社会科教育に関心が高く、どのようにすれば子供たちが社会的事象を自分事(じぶんごと)として捉え、社会に主体的に関わっていくようになるのかと模索しています。
ポイントになることは複数ありますが、その中でも子供たちが思わず話したくなる、考えたくなる”材”との出会いをつくるということがとても大切だと感じています。
この点は「特別の教科 道徳」にも共通するものでありますし、特にこの「一枚画像道徳」の実践でも意識したいと考えて実践例をつくりました。
ここで取り上げる画像は、素敵な素材はないかとアンテナを伸ばして過ごしている中で見つけたものです。何かの参考になれば幸いです。
2 「一枚画像道徳」の実践例
対象:小学4年
主題名:きまりは何のためにあるのか
内容項目:C-11 規則の尊重
以下の写真を提示します。

発問1 この赤信号をどこで待ちますか?
●今、写真を撮っている位置
●黄色の点字ブロックの手前
●横断歩道の真ん中の白いコンクリートの辺り
●工事のガードレールがある所(車が通らない位置)
どこで待つかという意見に加えて、理由を伝える児童もいました。
「意見が分かれましたね。写真の様子から判断して自分の意見がもてること、伝えられることは素敵なことです。理由も添えて伝えられた人には説得力がありましたね。」
まだ話したそうな様子だったので、ペアトークを取り入れて伝え合うようにしました。その後、少し落ち着いたところで以下のような説明をしました。
説明
●校区にある大きな道路が工事中で車道が狭くなっている。
●ガードレールがある所は車が通れなくなっているので、横断歩道の真ん中辺りまでは、人と車が接触することはない。
そして、説明をした後に児童の意見とその理由を整理しました。
【横断歩道の真ん中で待つ】
→真ん中まで進んでも車は来ない。少しでも前に進んでいた方が早く渡ることができる。
【点字ブロックの手前で待つ】
→元々、横断歩道を待つ位置は決まっているので、前に進むのはルール違反だ。
この二つの意見と理由を板書し、じっくりと個人思考する時間を設けました。そして二つ目の質問を投げかけました。
発問2 ルールは何のためにあるのでしょうか。
●みんなが安全に過ごすため
●みんなが安心して過ごすため
●みんなが気持ちよく生活するため
ルールが何のためにあるのかを考えているうちに、子供たちは「あっそうか」と気付いた様子を見せ、話し合いの内容は次第に「信号をどこで待つのか」に戻っていきました。
「ルールというのはみんなが言うように、自分も含めた”みんな”が安全・安心で快適に生活を送ることができるようにするためにあるよね。」
「では、先ほどの信号待ちの話に戻すと、どこで待つことが安全・安心で快適に過ごすことに繋がるのでしょうか。」
「ルールが何のためにあるのか」ということに立ち返ることで、「どこで待てばよいのか」という問いに対する判断基準を、自分だけの視点から、横断歩道を利用するみんなの視点へと広げることができるようにしました。
●安全に待つことを考えると、横断歩道の手前で待っていた方がいいように思う。
●横断歩道の真ん中で待つ人と手前で待つ人のどちらもいると不安になってしまう。
●みんなが手前で待っていたら安心できそう。
●元々のルールをみんなが守っていたら気持ちよく過ごせそうだね。
発問2によって、子供たちは「自分の判断」から視野を広げ、利用者全員が気持ちよく過ごすためにはどうすればよいかと考え、議論することができるようになっていました。
「道徳には正解はありません。一緒に生活をする人たちで一緒に考えてつくり上げていくものです。判断に困る時や悩んだ時は今日のように『そもそも何のためだっけ?』と考えてみることが解決につながるかもしれませんね。」
と子供たちに伝えて学習を締めくくりました。