「キャリア・パスポート」って何?~しっかり理解し確実に取り組もう~
令和2年度から全国の小・中・高等学校で「キャリア・パスポート」が導入されました。これは児童生徒が「キャリア教育」の活動について記録し、蓄積していくものです。しかしまだあまり耳慣れず、「キャリアパスポートって何? と思う人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、「キャリア・パスポート」がどんなものかを、詳しく見ていきましょう。
執筆/東京都公立小学校主任教諭・佐藤あすか
目次
1 キャリア・パスポートの目的は?
①小学校から高等学校を通じて、児童・生徒が自らの学習状況やキャリア形成を見通したりふり返ったりして、自己評価を行うとともに主体的に学びに向かう力をはぐくみ、自己実現につなぐ。
②教師はその記述を基に対話的に関わることで児童・生徒の成長を促し、系統的な指導に役立てる。
2 キャリア・パスポートの内容は?
大きく分けて、次の3つです。
- 教科学習について
- 教科学習以外の学校内での活動について
(学校行事、児童会活動、クラブ活動、係活動、友達との関わり、生活面について、など) - 学校外の活動について(ボランティアなどの地域活動、家庭内での取組、習い事、など)
この内容が盛り込まれているものなら、各学校で自由にカスタマイズしてもよいことになっています。
しかし、ある程度の「前提」は決められています。では、その具体的な内容を見ていきましょう。
3 キャリア・パスポートを書くにあたり、「前提」として決められている内容
1.小学校の入学から、高等学校の卒業まで、記録(キャリアパスポート)をためていく
2.小学校では、入学から卒業まで、長期的なふり返りと見通しがもてる内容とする
3.学年・学校が変わるときは必ず引き継ぐ
①小学校で、学年が上がるとき
→原則、教師間で引き継ぐ。
②小学校から中学校へ上がるとき
→原則、児童生徒を通じて行うが、六年生担任が、指導要録の写しなどといっしょに、中学校へ渡してもよい。
4.転校時も、必ず学校間で引き継ぐ
5.保護者や教師は対話的に関わる。コメントを書く欄を設けるなど、子供が書いたものに対し大人も返すようにする
6.各シートはA4判(両面使用可)に統一。各学年での蓄積は5枚以内
7.キャリア・パスポートの表紙は、その市区町村の教育委員会が作る
各学校は、配付されるのを待ちます。
大切なのは、「活用すること」
「キャリア・パスポートを書いたけど、そのまま次に書くまで金庫にしまっておこう」。これではまったく意味がありません。
大切なのは「活用すること」です。
例えば「めあてカード」の代わりにクリアファイルに入れて教室に掲示するなども、方法の一つです。そうすることで子供たちは、ふとしたときに自分のめあてを改めて目にし、確認することができます。また、学期末や年度末、行事後のふり返りをするときなど、必要なときにさっと取り出し、書き足すこともできますね。
キャリア・パスポートに取り組むにあたり、教員側の負担が過度にならないよう配慮することも大切です。そのうえで、しっかりと子供たちの生活に生かせるものにしていけるとよいですね。
イラスト/佐藤雅枝
『教育技術 小一小二』2022年2/3月号より