理想の授業に出合うには〈後編〉【伸びる教師 伸びない教師 第21回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁
理想の授業に出合うには〈後編〉【伸びる教師 伸びない教師 第21回】

今回は、「理想の授業に出合うには」の後編です。自分の授業の考えの違いに気付いた授業に出合い、さらに多くの授業を見に歩いたという話です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載です。
※本記事は、第21回の後編です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は、理想の授業を追い求め、伸びない教師は、今の自分の授業で満足する

ひとつのテーマで討論する子供たちに感動

F小学校の授業は、私の授業観を180度変えるものでした。

それまでの私は、教科書の内容を一方的に伝えるだけの授業でした。
しかし、F小学校の授業は違いました。

5年生の国語の授業で、子供たちがひとつのテーマで1時間ずっと討論をしていました。教師はその討論の舵取りをしているだけでほとんど前には出てきません。少なくとも私にはそのように見えました。それだけでも、ショックが大きかったのですが、さらにこんなことが起きました。

授業が終盤にさしかかった頃、ひとりの男の子が発表しながら泣き始めたのです。登場人物の置かれた立場が今の自分と似ているのでつらい気持ちがよくわかると、泣きじゃくりながらクラス全体に語りかけていました。

クラスの友達は、黙って男の子の発表を聞いていました。子供が授業中、登場人物に共感して泣くなんて、当時の私の授業では考えられないことでした。

その後の授業検討会では、「あのときに泣きながら発言した子供の意見をなぜもっと広げなかったのだ」「あの場面では教師が介入すべきだった」など、私が思い付かない視点から意見が次々と出されました。私は、「あんなにいい授業だったのに、見る人によってはこんなにも課題が見えるのか」と、これまたショックを受けました。

「授業とはこんなに奥深いものなのだ。教科書の内容を一方的に伝えるだけの自分の授業は、授業ではない」

打ちのめされた気分でした。

自分の理想とする授業は自分の成長とともに変わる

それから数年間、私は、F小学校で見た子供たちが中心となって話し合う授業を目指して教材研究を励みました。

また、小学校に本採用されてからは、著名な教師の授業が見られる機会を探し、全国へ足を運びました。そのうちに自分の理想とする授業がおぼろげながら見えてきました。そして、普段の授業でもその授業を目指すようになりました。

今でも理想の授業にはほど遠いのですが、そこにたどりつこうとする自分がいます。

伸びる教師は、自分の理想の授業があります。

理想の授業は、著名な教師の授業だけとは限りません。自分の学校で尊敬する先輩の授業、地元の研究会で見た授業など、自分の感性に触れる授業であれば何でもよいのです。

そして、その理想の授業は、自分の成長とともに変わっていきます。

大切なことは、今の自分に満足しないことです。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

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※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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