「チーム学校」で成功させる運動会

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人気種目や演出アイデア&指導法がわかる!運動会記事まとめ

元東京都公立小学校校長

清水弘美

「チーム学校」の重要性が言われる昨今、運動会はまさに、学校と地域が協力し合って行うチーム学校の実践の場とも言える行事です。自分の学級や学年のこととして取り組む狭い視点でなく、管理職・各種学校関係者・保護者・地域と大いに連携を図る、チームとして取り組む運動会にしましょう。

「チーム学校」で運動会

地域ぐるみで成功させる運動会をつくる

運動会は昔から人と人をつなぐ行事でした。学校はもちろん、町内会や会社でも行われていました。それだけ、集団の絆を強める力のある行事です。運動会を使って、学校に関わる人たちとの絆を深めていきましょう。

学校行事の考え方

学校行事のねらいは、望ましい人間関係をつくったり、集団への所属感や連帯感を深めたりする中で、公共の精神を養い、よりよい学校生活をつくろうとする自主的・実践的な態度を育てることにあります。そう考えると、教師が意識してしまう見栄えの良さを追求するという視点はないことが分かります。それぞれが自主的に活動して、最後までやり抜く実践力ということが大切なのです。

教師がそれをしっかりと理解して、運動会の中で子どもたちの成長をしっかりと見取っていきましょう。いずれはその中で育った力が地域を支える力になるのです。行事は毎年やっているから当たり前にやるというものではありません。社会に貢献する子どもを育てるという志をもって運動会に取り組みましょう。

社会に貢献する子どもを育てる運動会

ステークホルダー(利害関係者)は誰か

学校は教育活動のねらいをしっかりと情報発信していきましょう。その上で、様々な教育活動への協力を依頼するのです。

では、運動会を支えることで何かしらメリットのある人は誰なのでしょうか。

子どもと教師は当事者ですが、保護者は我が子の成長を確かめる喜びにつながります。近隣の中学校はしっかりと育った子どもたちを引き継ぐことができます。幼稚園・保育園は自分たちが育てた子どもたちの活躍を確認することができ、園児は憧れをもつでしょう。地域に住む人たちは、よりよい地域をつくる次世代の人材を得ることができます。町内会の人たちは学校に貢献することで自己実現にもつながります。

このように、学校行事のねらいにそったステークホルダーはたくさんいるのです。地域の課題をなんでも学校に言ってくる人が多い時代ですが、行事を通して顔見知りになることで学校の外とのつながりも深まります。そのために日頃から、学校を開くということが大切です。

学校だより、学年だより、学級通信やホームページで情報を流すだけでなく、子どもたちが学校の外へ出て体験的な教育活動を行う中で地域の方たちのお世話になることや、学校の中に招いて交流をもったり、授業をサポートしてもらったりすることも効果的です。

子どもを介した日常からのつながりの機会を意識的につくっていきましょう。運動会に使うものを借りたり、準備を手伝ってもらったり、指導の協力を得たりする中で、運動会の練習の大きな音が騒音ではなく、活気として受け取られ、一日だけ自転車や歩行者の混雑ぶりを受け入れてもらえるような学校になるのです。

運動会の成功が子どもたちを育て、地域を育てる、そんな学校をめざしましょう。

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保護者を参画させ共につくり上げる運動会

子どもを中心に、学校と保護者はそれぞれの立場で対等に関わる必要があります。運動会は子どもたちにとって、責任感や連帯感、体力の向上など、多くのものが得られる教育活動です。保護者の立場からもしっかりと子どもたちを支えてもらうことで、より効果的な行事になります。どんどん保護者を巻き込んでいきましょう。

とはいえ、その実践は簡単ではありません。何をやっても苦情を言ってくる保護者はいるものです。しかし、苦情は、自分の子どものことしか見えていないから出てくるのであって、しっかりと全体に関わる当事者にしていけば改善されるのです。すべての保護者が、運動会を一緒につくっているという意識をもつことで、PTA役員だけが義務のように運動会を手伝うという関係から、チーム学校としての運動会になっていきます。

管理職と保護者のつながり

管理職は行事の責任者です。行事全体の苦情を処理しなくてはなりません。そのために、昨年の反省で出てきたことを先に保護者に伝えておくとよいでしょう。決まったことを伝えるだけでなく、判断の根拠などを学校だよりや、保護者会、PTAの会議などで伝えていきます。

例えば、「暑いので全校児童席にテントを張ってほしい」という意見が出てきた時、

  1. テントの数が少なく、借りに行ったり、テント設置をしたりする労力が足りないこと。
  2. テントは風で飛んでしまう危険があること。
  3. 帽子や水分補給などの工夫で熱中症を避けられること。

などを伝えます。それでも、PTAで全てやるというのなら、喜んでお願いしましょう。学校ができることとできないことをはっきりと示して、改善策を一緒に考えてもらうのです。

担任と保護者

担任は、一人ひとりの児童を通して保護者と連携を取ります。児童への指導内容を保護者にも伝えます。大事なのは運動会の意義です。単なるイベントのつもりで見ると、面白さばかりを保護者は望みます。教育活動としての視点を保護者にも伝えましょう。

児童が家庭で、運動会に向かって頑張っている様子を伝えると、保護者は応援したくなるものです。表現で使う衣装や小物の作成は保護者にお願いします。踊りの定着も、九九を家で練習するように、家で見てもらえるように指導のポイントを伝えておきます。一緒に踊れるようになった保護者には、子どもを通して合格シールなどを渡すと楽しい取り組みになります。

保護者も協力的

運動会用のリーフレットの最初に、運動会に向けた自分のめあてを子どもたちに書かせます。保護者にも始めに、保護者からの応援の言葉や保護者としてのめあてを書いてもらうのもよいでしょう。保護者も子どもと一緒に参加する、参画するそんな運動会にしていきましょう。

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地域の関心を引きよせ巻き込む運動会

学校行事は地域とつながるチャンスです。子どもたちを中心に家族が楽しい時間を過ごすことができる、特別な行事といえるでしょう。地域の方が関心をもって見に来るような運動会をつくりたいものです。地域と学校をつなぐのは、学校運営協議会です。地域運営学校になっていない場合はPTA組織がそれに代わることになります。

地域の方も楽しめる種目をつくる

1.地元の伝統文化や、地域に根付いた盆踊りなどを取り入れる

地域の町内会の方たちを招いて踊りを教えてもらったり、一緒に踊ったりすると、地域の方たちと子どもたちが顔見知りになり、地域の方の参加が増えます。

2.地域の保育園・幼稚園と連携した踊りを踊る

国体やオリンピック、市制○○周年など町ぐるみのイベントに関係した取り組みでキャンペーン用に使われた踊りなどを取り入れると、地域全体で盛り上がります。時には市長が顔を出してくれることもあり、地域の方たちが喜びます。

地域の教育機関と連携する

1.中学生にお手伝いを頼む

連携している中学校に頼んで、中学生に運動会運営の仕事をしてもらうこともできます。卒業生が受付などをしていると、話がはずみます。中学校の教職員ものぞきに来ます。

2.保育園・幼稚園に協力してもらう

未就学児が楽しめる競技については、地域の保育園・幼稚園などから意見をもらったり、道具を借りたり、手伝ってもらったりすると、関係が深まります。先方も教え子が活躍している姿を見て楽しんでいます。

学校運営協議会の活躍の場をつくる

物品販売をする

学校運営協議会は職員ではないので、運動会の会場でジュースやお茶などの飲み物販売をしたり、おそろいのTシャツをつくって販売したりすることができます。学校運営協議会の存在はあまり知られていないことも多いため、のぼりを立てて飲み物販売などをしてPRするとよいでしょう。さらに、当日の様子を学校運営協議会だより等で保護者に伝えることも効果的です。

学校運営協議会の販売ブース

見たくなる子どもの演技をつくる

地域の方の関心は、「騎馬戦、○○小の合戦」など、わが子が小学生だった時にもやっていたような種目にあります。また、毎年五・六年生は集団行動を見せるなどと決まっていると、楽しみにする地域の方も出てきます。

学校運営協議会を中心に、地域を学校教育に巻き込んでいきましょう。地域との連携を進めるには、毎年の継続と、情報発信がよいでしょう。よく知ってもらうことが大事です。

執筆/東京都公立小学校 清水弘美
イラスト/山本郁子

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『小四教育技術』2017年9月号より

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