小学校で「理科を教える意味」とは!?【進め!理科道 〜よい理科指導のために〜】#1
果てしなく長い、よい指導者になるための道。皆さんの道中が、楽しく希望に満ちたものとなることを願い、ステキな伴走者をご紹介します。
小学校において理科を教えるとは、どんな意義や目的があるのでしょうか? 子どもたちに、どんな力を身につけさせるのが目的でしょうか? 理科のエキスパートとして活躍する國學院大學教授の寺本貴啓先生が、小学校理科の指導のキホンについて連載していく、「進め!理科道(ロード)」の始まりです。
執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
どうして理科を教えるの?
1.いろいろな考え方があるけど・・・
皆さんは、理科の授業を通して“子どもに身につけさせたいこと”は何だと考えていますか。例えば、「不思議がたくさん発見できること」「しっかりと物事を調べられること」「理科の知識をしっかりと定着させること」「実験技能を身につけること」「自然に対して感動する心をもつこと」など、様々あると思います。
もちろんそのような力は、とても大切なことですね。でも、それって成績として評価をしていますか? していませんよね。つまり、先生方が理科を通して大切にしたいことが様々あるうえ、評価の観点に関わる学習指導要領の目的もさらに別にあるため、多様な考え方が出てくるわけです。
ここでは、学校の理科の授業を通して“子どもに身につけさせたいこと”について、その優先順位について考えていきたいと思います。
2.学習指導要領解説に書かれている内容が最優先
教科の1つである「理科」において、大切にしなければいけないことそれは、「評価」という点から考えていかなければいけないでしょう。「評価」と聞くと、どこまでできたらいいのか、何点つけたらいいのか、といったことを考える方が多いかと思います。
理科の授業において「育てたいこと」を考える上で、評価の観点を理解することが大切になりますが、結局は「学習指導要領解説に書かれている内容」が評価の観点と正対しているため、学習指導要領解説(理科)を見るとよいわけです。
先ほど述べたように、理科を通して育てたいことは、先生によって様々あるかと思います。しかしそのような力も大切ですけれど、学習指導要領解説に書かれている内容がまずは優先されて育成される必要があることを理解しておきたいです。
評価の観点から考えると、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つになります。「知識・技能」は、理科に関する知識をもつこと、実験や結果の整理などの技能を指します。「思考・判断・表現」は、自然を対象にして自分の力で実験や観察を通して調べたいことを調べられる力である「問題解決の力」を指します。「主体的に学習に取り組む態度」は、人と協力して、自分自身で目的をもって解決まで取り組む力を指します。このように、小学校理科では「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つが身につくように指導していく必要があるわけです。
3.知識の暗記より、科学的に自ら問題を解決できることが重視される
上述の「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つは、自然事象に対する問題(自分が不思議に思って、理科の授業で解決したいこと)に対して、自分自身で解決できる力をつけることが大切にされていると言えます。つまり、「問題解決の力をつける」ことが大切にされていると言えるでしょう。
しかしながら、理科では「科学的に」ということも大切にされます。勘やなんとなくといった曖昧な考え方ではダメで、より正しい結果を求められますし、誰が見ても納得いく判断が求められるわけです。つまり、「科学的に物事を見たり、判断したりすることができる」ことが大切にされていると言えるでしょう。
以上のような場面で、ICT端末を活用することで、子どもはICT端末のよさを実感できるはずです。いずれは、子ども自身がICT端末の活用について選択できるようにしていきたいですね。
4.どうして理科を教えるの?
どうして理科を教えるの? その答えとしては、理科の授業を通して、「問題解決の力をつける」「科学的に物事を見たり、判断したりすることができる」力がつけば、社会に出てより正しい判断ができる可能性が増えると言えるでしょう。また、自然を愛し、科学技術の発展に貢献できる人も増えていけば、私たちにとって過ごしやすいよりよい社会が目指せるかもしれませんね。
「進め!理科道」は、隔週金曜日の更新です
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
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<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。
イラスト/兎京香