夏休み明けの「荒れない学級づくり」ケース・スタディ
夏休み明けは生活習慣や学習習慣が乱れ、クラスが荒れやすいと言われます。荒れを防ぐために、中学年二学期の学級経営の留意点と、この時期にありがちな不安についてケース別に対応策を紹介します。
監修:東京都公立小学校主任教諭・佐々木陽子
目次
荒れを防ぐ、二学期の学級経営のコツ
二学期は友達同士の喧嘩やトラブルが増える時期です。高学年に向かうこの時期に、まず教師がアメとムチを上手に使い分けることが大切です。
子供たちは優しいだけの先生を望んでいません。叱るべき時にちゃんと叱ってくれる先生がいることで安心して過ごすことができるのです。叱ることは勇気がいることですが、叱った後にちゃんと心のフォローができれば大丈夫です。
また中学年ならではの、有り余るパワーの発散方法を考えることも重要なポイントです。二学期に行われる大きな行事(学芸会、音楽発表会)や2分の1成人式等は、基本的に児童主体で進め、それぞれの活動リーダーや実行委員会を立ち上げるとよいでしょう。
子供たちを中心に計画や立案、進行していくなかで、リーダーを育て、そのリーダーをみんなで支えていくことがカギとなります。目の前に自分たちが目指すものがあることで、そこに全力を尽くすことができるため、子供たちの心やエネルギーを健全な方向に向かわせることができます。
ケース別:荒れを防ぐ学級づくりのポイント
子供編 ケース①
授業に集中できない
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OK! 思い切ってお昼寝させる
休み明けは生活習慣も乱れがちで、授業に集中できないのは当たり前です。だからこそ「クラスみんなで寝る」時間を設けましょう。
授業前後に5分間程度の時間をつくり、「机の上にうつ伏せになっていいよ」と伝えます。「今から5分間寝てもいいよ」と言ってあげるとなおよいでしょう。寝ながら少し先生の話を聞いてもらったり、本を読み聞かせしてあげるのもお薦めです。
子供編 ケース②
夏休み気分が抜けない
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OK! 気持ちを発散させる活動をする
初日の声かけは、子供に夏休みのことを話させて発散させてあげるとよいでしょう。まずは、先生の夏休みの話からスタート。その中に子供たちも行きそうな「夏祭り」「海」「花火大会」「キャンプ」「祖父母の家」などの話をします。子供たちは、先生の話に触発されて夏休みのことを話したくなります。
個人差はありますが、子供たちにとっては様々な夏休みの思い出があります。それを思い出させるのがねらいです。
人の話をしっかり聞くことが難しい夏休み明けです。このようにゲーム感覚で夏休みの思い出を交流させるとよいでしょう。最初の3日間は、できるだけゲームやクイズ形式の授業を取り入れることをお薦めします。
気持ちを発散させる活動例
★「夏休みにどこで何をした」ゲーム ★
長い夏休みにクラスのみんながどこで何をしていたかを当てるゲームです。
【ルール】
下の図のように5人くらいのグループになり、1人を囲んで夏休みのことをインタビューします。答える人は、夏休みの一番の思い出を一つ選びます。例えば、「川でキャンプをしたこと」が一番の思い出なら、それが答えになるので、答えを話さないようにし、質問の内容が当たっていたら頭を上下に振り、質問が当てはまらない場合は頭を左右に振ります。決してしゃべってはいけません。
進行例
今から3分間インタビューをします。用意スタート!
海に行きましたか?
( 頭を左右に振る)(当てはまらない)
カレーを食べましたか?
花火を見ましたか?
( 頭を左右に振る)(当てはまらない)
お祭りに行きましたか?
( 頭を左右に振る)(当てはまらない)
川に行きましたか?
( 頭を上下に振る)(当てはまる)
川で泳ぎましたか?
( 頭を上下に振る)(当てはまる)
テントを立てましたか?
( 頭を上下に振る)(当てはまる)
それでは3分経ちました。質問をした人一人ずつ答えを紙に書いてください。せーので見せて発表します。せーの!
川でキャンプをした!
同じです。川でキャンプをした、だと思います!
川でカレーライスを食べた!
川に泳ぎに行ってカレーライスを食べた!
正解は、「夏休みに川でキャンプした」です。
合っていた人は手を挙げてください。みんなの質問をよく聞いて答えましたね。
子供編 ケース③
時間が守れない
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OK! 子供が楽しみになる時間をつくる
登校の後や学習のスタートが楽しいものであれば、子供は自然と時間通りに集まります。朝の会は子供主催の係活動を日替わりで入れるとよいでしょう。例えば、月曜日は「お笑い係の時間」、火曜日は「クイズ係の時間」など。短時間でも子供たちが楽しみに思えるような時間を確保すると、子供の着席率が変わります。
子供編 ケース④
おしゃべりして話を聞かない・授業のルールを守れない
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OK! 人権的な視点で指導する
休み明けは人の話を聞くことが難しい場合が多いものです。頭ごなしに叱るのではなく、これから高学年に向かうことを意識し、人権的な視点で話をするとよいでしょう。
子供編 ケース⑤
体の不調を訴える子がいる
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OK! おでこを冷やして気分を変える
おでこを冷やすと気分が変わるようです。保健室から、おでこに貼る冷却ジェルシートなどをもらい、対応します。本人が了承するなら、座席も風通しがよい窓側に移動するなど、環境を変えるのもよいでしょう。
子供編 ケース⑥
友達と上手に関われない子がいる
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OK! 無理に関わらせない
無理に関わることはありません。まず、担任がじっくり本人の話を聞いてあげましょう。また、本人がいないところで周囲の友達にこっそりと様子を聞いてみるのもよいでしょう。友達と喧嘩した、家族との関係が悪い、単に一人が好きなど、何かしら原因がわかるかもしれません。その上で、協力できそうな友達にさりげなく声かけしてもらうとよいでしょう。
子供編 ケース⑦
掃除、係活動などにやる気が見られない
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OK! 特別な道具+役割を与える
やる気のない子をあえてリーダーにします。例えば、「掃除リーダー」に任命。その子にお願いするのは、普段の掃除ではありません。例えば、黒板をきれいに拭くことができるマイクロファイバータオルやメラミンスポンジなどを使って掃除をさせます。
特にさぼりがちな子には、新しい道具を持たせ、クラスのみんなにその道具を使った掃除の仕方の説明をさせるのもよいでしょう。自分が仕事を任せてもらえる喜びと、アイテムの新鮮さがやる気を促します。
教師編 ケース①
疲れが取れない
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OK! 無理をせず休む
行事の多い二学期は教師の疲労も溜まります。1時間単位で休暇も取れるので、しんどい時は早退したり、定時で帰るようにしましょう。ダラダラ残業をするよりも、体がつらい時にはちゃんと休むほうが健全に過ごすことができます。
教師編 ケース②
モチベーションが下がっている
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OK! 生活習慣を変えてみる
夜型の人は朝型にするなど、生活習慣を変えてみると気分も変わります。私の友人には3時起床の人が2人います。
ちなみに私は4時30分くらいに起きますが、起きる時間を早くすることで、テレビなどの娯楽や通信機器などの邪魔が入らないため、進めておきたい仕事や自分の好きなことに集中できるのがメリットです。
気分転換も重要です。おいしいものを食べたり、インターネットでお取り寄せしたり、食べログで検索して話題のお店に行ったりするなど、幸せな気分になることをしてリフレッシュしましょう。
構成・文/出浦文絵
イラスト/山本郁子
『小四教育技術』2018年9月号より