「地域学校協働活動推進員」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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社会の急激な進展にともなって、学校教育の環境は大きく変わっています。学校だけで対応するのが難しい問題も増えています。そのような問題を解決するためにも、地域と学校がパートナーとなって協働していく必要があります。

執筆/沖縄国際大学准教授・照屋翔大

地域学校協働活動推進員
教育用語

地域学校協働活動推進員とは

2017年3月に改正された社会教育法において、「教育委員会の施策に協力して、地域住民等と学校との間の情報の共有を図るとともに、地域学校協働活動を行う地域住民等に対する助言その他の援助を行う」ための「地域学校協働活動推進員」が法制化されました。

「地域学校協働活動」とは「地域と学校がパートナーとなり、地域全体で子供たちの成長を支え、地域を創生する活動」のことです。具体的には、協働活動(地域人材の育成、郷土学習、協働防災訓練、登下校の見回り等)、体験活動(社会奉仕体験活動、職場体験活動等)、放課後等の学習活動が想定されています。

活動の場としては、学校だけでなく社会教育施設も含まれています。ですから、その活動は児童生徒の学び(学校教育)であると同時に、保護者や地域住民の学びや生きがいづくり(社会教育)という側面ももちます。

今般の社会教育法の改正は、地域コーディネーターなどの名称で学校への支援活動をしている人たちを、地域学校協働活動推進員として教育委員会が委嘱することにより、法的な裏付けをもった存在にすることを企図しています。

地域学校協働活動推進員の役割と委嘱

各種資料などによると、文部科学省は地域学校協働活動推進員に次のような役割を期待しています。

  • 地域や学校の実情に応じた地域学校協働活動の企画・立案
  • 学校や地域住民、企業・団体・機関等の関係者との連絡・調整
  • 地域ボランティアの募集・確保
  • 地域学校協働本部の事務処理・経費処理
  • 地域住民への情報提供・助言・活動促進  等

このような役割は、これまで各学校がその役割を担っていることが多く、またとても労力の要る仕事です。地域学校協働活動推進員がその役割を主体的に担ってくれれば、協働活動が充実し、学校の働き方改革に寄与することも期待できます。

そのため、委嘱にあたっては、教育委員会が地域学校協働推進員の処遇や役割等を明確にし、文書で行うことが適切と言えるでしょう。

コミュニティ・スクールとの関係

現在、学校と地域の関係性を一層強化し、双方の連携・協力の下で教育活動の充実を図ろうとする改革が多岐に展開しています。例えば、「社会に開かれた教育課程」や「地域とともにある学校」、「コミュニティ・スクール」はその主たるものです。

とりわけ、コミュニティ・スクールの中核である学校運営協議会を構成するメンバーに地域学校協働活動推進員が含まれていることは重要な意味をもちます。学校運営の基本方針を承認し、学校運営への必要な支援等について協議する場に地域学校協働活動推進員が加わることによって、そこでの検討・決定事項が円滑かつ効果的に協働活動として実施されるという流れをつくることが容易になるからです。

文部科学省は、学校と地域の協働体制についてコミュニティ・スクールと地域学校協働本部(幅広い地域住民や団体等の参画により形成されたゆるやかなネットワーク)を両輪に据えたイメージ図を描いています。地域学校協働活動推進員は両方の主たる構成員として存在し、学校と地域をつなぐハブとして機能するのです。

地域学校協働活動推進員の拡充を

政府は2022年度までに、全小学校区において地域学校協働本部を設置し、地域学校協働活動の推進を政策目標として掲げてきました。文部科学省の調べによると、2021年5月1日現在、全国の義務教育段階の学校における地域学校協働本部の設置率は65.1%(前年度比4.8%増)、教育委員会から委嘱された地域学校協働活動推進員の数は8,843人(前年度比で1,540人増加)です。未だ目標達成の途上にあり、地域差も大きいというのが実情です。

一方、地域学校協働活動推進員の配置は地域学校協働活動の充実という点で有意義であるとの成果認識はすでに明らかにされており、その配置拡充の必要性は増しています。

そのためには、地域学校協働活動推進員を地域の中から掘り起こし、彼らに対して物的・財政的支援や力量形成を含めた人的支援が欠かせません。例えば、消耗品や交通費、活動に対する報酬を適正に支給し、権限と責任を明確にする工夫が必要でしょう。また、期待する役割を明示したハンドブック等の作成、メンバー同士の情報交換の場の提供なども必要です。

しかし、これらについて各学校のみで対応することは困難です。ポイントは、学校任せにせず各教育委員会が主体性をもって展開するということです。

現在も審議が続けられている「コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議」が公表した「中間まとめ」でも、教育委員会による伴走機能の重要性が指摘されています。

コミュニティ・スクールや地域学校協働活動の充実は、地方創生の推進という方針に基づいています。学校、地域住民そして行政が共に手を携えた学校づくりと地域づくりの一体的推進が求められているのです。

▼参考資料
青木一・前川浩一『コミュニティ・スクールを持続可能にする地域コーディネーターのキックオフ:子どもを育てるまちづくり・子どもから学ぶまちづくり』2019年、三恵社
中央教育審議会「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」2015年
文部科学省(ウェブサイト)「令和3年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査について(概要)」
コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議「コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議 中間まとめ」2021年8月
文部科学省(ウェブサイト)「地域学校協働活動推進員の委嘱のための参考手引き」

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