ボクは戦士でワタシは勇者! ジョブを分けて話し合おう~学芸大附属竹早小ロールプレイラーニング実践~

近年、経済産業省が先導して「学びのSTEAM化」を推進しています。総合的な学習の時間は横断的な教科学習の場として活用されていますが、今後は、産学官連携による授業も実施されていくことになるでしょう。今回は、tanQ株式会社が開発したカードツールを用いて、東京学芸大学附属竹早小学校の3年生のクラスで行われた、ロールプレイラーニングの手法を使った話合い活動の授業をレポートします。

ボクは戦士でワタシは勇者!ジョブを分けて話し合おう~ 学芸大附属竹早小ロールプレイラーニング実践~

もっと話合いの質を高めたい

授業が行われたのは2学期の11月。総合的な学習の時間を使って、「得意と苦手を受け入れる~ロールプレイラーニングで話し合おう」と題した授業が行われました。学級担任の早川光洋教諭はその理由を次のように話します。

「1、2学期のさまざまな活動を通して、子供たちは言いたいことがだいぶ言えるようになり、クラスの風通しもよく、他者への共感性が育ってきていると感じていました。そこで、ロールプレイによる話合いの授業を行うことで、子供たちの人間関係やコミュニケーションの質をもっと高められるのではないかと期待しました」

本時のめあては、「自分の与えられた役割を理解し、話合い活動に参加することができる」。

クラス36人が、基本的に男女2人ずつの4人で1つのグループをつくり、9つのグループに分かれました。各グループには、ロールプレイラーニングに使用されるカードとワークシートが配られました。

ワークシート

今回のロールプレイラーニングに使用されるカードは「ジョブカード」と呼ばれ、「戦士」「賢者」「僧侶」「勇者」「遊び人」「召喚士」の6つの役があります。この授業ではグループの人数に合わせて、「戦士」「賢者」「僧侶」「勇者」の4つのジョブカードが使われました。それぞれの役割は次の通りです。

「戦士」仲間の先陣を切って話す役
いけんをいう/もりあげる「がんばろー!」
いつでもコマンド:「オーバーリアクション!」

「勇者」意見をまとめて発表する役
いけんをいう/しつもんする/まとめる「~と発表するね!」
いつでもコマンド:「しきる!」

「賢者」話をよく聞いてメモでサポートする役
パスする/しつもんする/メモをみせる「こんないけんがでたね」
いつでもコマンド:「メモをする!」

「僧侶」仲間の話を聞いて見守る役
パスする/ほめる「〇〇さん、いいね!」
いつでもコマンド:「うなずく!」

ワークシートには、話し合うテーマを書き入れる「今日のテーマ」の欄があり、また、各ジョブの役割についても記載されています。

最初のテーマは「学校のここを変えたい」

担任の早川教諭がロールプレイのやり方を説明して、授業は始まりました。

ロールプレイのやり方を説明して、授業は始まった

「この授業では、グループのみんなと力を合わせて、2つのミッションをクリアしてもらおうと思います。まずじゃんけんをして勝った人からジョブカードを引いて、役割を決めてください。担当する役割になりきって、戦士→勇者→賢者→僧侶の順番でテーマに沿った話をしてください」

ミッション1 学校のここを変えたい!

1番目のミッションは、「学校のここを変えたい」です。それぞれのグループに分かれた子供たちがざわつきました。「えっ、『学校を変える』だって!」と声を上げています。あるグループでは、こんな会話が始まりました。

話し合う子供たち

「ぼくなら、こうするな」

「戦士の役から意見を言うんだよ」

「ああ、そうか」

戦士役 「えーと、給食の牛乳をお茶にしたい。それと学校行事をもっと増やしたい」

勇者役 「私服で登校したい。校庭を広くしたい。教室を豪華にしたい」

賢者役 「そうだよ。たまには私服がいいな。宿題のない日がほしい」

勇者役 「給食はバイキングにしたい」

賢者役 「学校の中に遊園地をつくりたい」

戦士役 「何をつくるの?」

賢者役 「すべり台やぶらんこ」

僧侶役 「それはいい!」

話し合う子供たち

一つ目のミッションを終えて、「話すときは話す。聞くときは聞く。それができるようになると、よりいいクラスになっていくよね」と、子供たちの様子を見た担任からフィードバックがありました。

この日は初めてのロールプレイラーニングだったので、早川教諭は「ルールのことでわからないことはありますか」と子供たちに問いかけました。

子供たちからは、「戦士の『いつでもコマンド』のオーバーリアクションって何?」「僧侶役は意見を言ってもいいのか」「『しきる』の意味は?」などの質問が上がりました。それを解決した後、担任が「もう1回やりたい人!」と呼びかけると、子供たち全員が「やりたい!」と答えました。今回は初めてということで、ジョブカードのロールに徹して話し合うことを確認して、次の話合いに移りました。

次のテーマは「こんな学校があったらいいな」

ミッション2 こんな学校あったらいいな

2番目のミッションは、「こんな学校があったらいいな」です。子供たちはジョブカードをしっかりシャッフルして引き直します。

戦士役 「私は、お菓子でつくられた学校があるといいな」

勇者役 「おれは、仕切り役だ」

賢者役 「100階建ての学校をつくりたい」

勇者役 「どうして?」

賢者役 「校庭も100個あるから遊べるぞ」

全員 「キャハハハ」

戦士役 「学校にフードコートもほしい」

勇者役 「おおっ、何が食べられるの?」

戦士役 「高級ステーキ」

全員 「キャハハハ」

戦士役 「先生がめっちゃやさしい学校。授業がない学校」

僧侶 「いいねえ!」

話し合う子供たちと教師

振り返りとまとめ

授業の終末を迎えても、子供たちの話合いは止まりません。最後に、「自分の役割に沿って話合いができたか」「その理由は何か」「次にやってみたい役割とその理由」「友達の役割でよかったと思うところ」などの項目がある振り返りシートを書いて、授業は終わりました。この授業について、担任の早川教諭はこうまとめます。

東京学芸大学附属竹早小学校
3年担任 早川光洋教諭
早川光洋教諭(東京学芸大学附属竹早小学校)

「この方法は期待通りに、子供たちの話合いを促進してくれました。子供たちは、意見を言うばかりが話合いなのではなく、相手をほめることやうなずくことも話合いなのだということに気づいてくれたと思います。友達の得意なことや苦手なことがわかり、他者理解につながる話合いを重ねていきたいと考えています」

今回使われた話合い用のジョブカード教材は、もともと特別支援学級の子供たちを支援することをねらってつくられたもの。開発元であるTanQ社の滝沢久輝さんは次のように話します。

「話合いでは、意見を言う人が活躍すると思われています。でも実際には、うなずいたり、首を振ったりする子や、メモをとる子も必要です。どんなタイプの子にも役割があること、みんなで協力して何かを実現することの大切さを知ってもらいたいと考えて、このロールプレイラーニング教材をつくりました」。


話すときの役割を決めれば、子供たちは話しやすくなります。そのためのツールに、子供たちが好きなロールプレイングゲーム風の呼び名やキャラクターをかぶせることで、より親しみを持って積極的に話合いを楽しめるようになります。この教材は、話合いの方法をユニバーサルデザイン化したものといえるのではないでしょうか。

取材・文/高瀬康志

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