ギフテッドの現場の声を聴こう!〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回ダイジェスト

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2021年11月~12月にかけて全3回で行われた、みんなの教育技術主催のオンラインセミナー「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」。前回ご紹介した第2回では、「発達障害かどうか」よりも、はなから発達障害という見方をしないで、その子に合った配慮や支援のアプローチは何かを考えることが重要だと学びました。では、「その子に合った配慮や支援」とは、何をすれば良いのでしょうか? 

引き続き今回は、2021年12月10日に行われた第3回のダイジェストをお届けします。第3回では、ギフテッド本人・保護者・支援者など、普段あまり耳にすることの少ない「現場の声」を聴く回となりました。

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※本オンライン研修会の記録映像が以下よりご覧いただけます。

ギフテッドのコミュニティ「ギフ寺」

今回の冒頭で、ギフテッド・LD発達援助センターの小泉雅彦先生は、「ギフテッドたちが求めているのは、学校や相談室のような『縦の関係性』ではなく、時には横になったり、必要に応じて縦になったりする『柔軟な関係性』だと思うのです」と言いました。

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回

そんな小泉先生は、ギフテッドの勉強会や相談会を重ねながら、参加している保護者や子供達の関係性が少しずつ育っていることを実感し、そこに「ギフ寺」(=ギフテッドのコミュニティ)をつくる意味を感じました。

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回

このあたりのことは、書籍『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』の第7章「ギフテッドの個性を伸ばすギフ寺の実践」で詳しく書いてあります。

悩める子供たち

続いて小泉先生より、実際にギフ寺に通うギフテッドの子供たちの声を教えてもらいました。

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回
第3回ギフテッドオンラインセミナーでの小泉先生資料より抜粋

小泉先生によれば、ギフテッドの子供たちは、「教室に入らなくても、別室や保健室でもよいし、校門登校や玄関登校でも出席扱いにするからおいで」と先生に言われても、学校というシステム自体がだめだと考えたり、「学校に行けないのはわかるけれど、進学のことを考えたら少しでも出席してほしい」と親に言われても、なんとか学校に行ってほしいという圧を感じたりしてしまうというのです。

ギフ寺は、何もしないでいてくれる

また今回、小泉先生とともに、ボランティアとして「ギフ寺副住職」という役職を担っている中学3年生も登壇してくれました。(以下「副住職」と称します)

副住職「僕は学校に過剰適応しすぎて、疲れてしまった。ギフ寺に通い始めた当初は、ただゲームをしながら周囲の様子を伺っていた。ギフ寺では、みんなで料理をしたりするアクティビティがあり、(小学生の)子供たちと関わる中で、自分は子供が好きだったんだなと気づき、そういった関わりの中で、だんだん(学校に行けなくなった)傷が癒えていった。

かつての自分を省みると、『こっちだよ、こっちだよ』と大人に言われても、『道はわかっている』『やらなければいけないことは、わかっている』と、かえって意地を張っていた部分があったのだと思う。

土砂降りの中、いくら傘を差し出されても、歩きたくない時はある。傘を差し出されると、自分では自立しているつもりもあるし、能力もあるんだと意固地になってしまう。

ギフ寺では、見守ってもらえた。住職(小泉先生)は、『何もしていない』と言っているが、自分は『何もしないでいてくれている』と感じた。ギフ寺では、傘を差し出されるのではなく、傘を買いにいく勇気をもらった。(自分が必要だと思うタイミングではない時に)傘を差し出されても、一緒に歩いていかないといけないと思う圧迫感、自分が動かないと相手を拘束してしまう不甲斐なさを感じる。自分で何かをしたい気持ちは、誰の中にでもあるのだと思う

セミナーでは、副住職のお話の後に続いて、副住職の保護者も登壇し、幼い頃の様子や、学校に行けなくなった時の様子、学校に行くのをやめるにあたって、どのように学びを担保したのかといったことをお話しくださいました。

ギフテッド応援隊の取り組み

最後に「一般社団法人ギフテッド応援隊」の代表理事、冨吉恵子さんが登壇しました。「ギフテッド応援隊」は、ギフテッドの子どもを育てる保護者がつくる、全国規模の親の会です。

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回

ギフテッドの保護者は、わが子の持つユニークな資質に面白さを感じる一方で、必然的にその生きづらさにも向き合わざるをえず、手探りの子育てです。そんな現状や、応援隊の活動内容、入会者の思い、会員による新たなプロジェクトの始動など、未来に向けたお話も伺いました。

締めくくりとして、ギフテッド応援隊が目指す究極のゴールについての話がありました。

冨吉さん「1人の力では難しいことも、組織の力を借りれば実現できるかも! ギフテッド応援隊のゴールは、ギフテッドを含む全ての子供たちが、イキイキと自分らしく成長できる社会にすることです」

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回
ギフテッド応援隊が目指す究極のGOAL(冨吉さんのセミナー資料より抜粋)

ギフテッドという言葉自体、まだ聞き慣れていない2022年の年初の今、 全てが手探りという状態です。けれども、ギフテッド応援隊が掲げるゴールは、確かに「あっちの方向だ!」という、ほのかな灯のように感じました。

〈みん教ギフテッドセミナー〉第3回

以上、 みんなの教育技術主催のオンラインセミナー「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」全3回の内容を3回にわたってダイジェストでお届けしました。 ギフテッドに特化して研究や教育実践を行っている先生方、ギフテッド当事者、そしてギフテッドを育てる保護者が一堂に会する機会となった本セミナーは、「ギフテッド情報発信のキックオフミーティング」となりました。

クラスの中に、「頭は良いけれど、何となく生きづらそう……」という子は、いませんか?  発達検査に行ってみたけれど「問題はない」と言われたらしいし、確かに発達障害とは何かが違う……。 こんなふうに漠然とした違和感を感じている先生方は、多いと思います。

「ギフテッド」というキーワードを入り口にして、彼らの特性を知っていただくことで、先生も、本人も、そして周りも、楽になるのではないでしょうか?

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取材・文/楢戸ひかる(『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』構成担当)

※本オンライン研修会の記録映像が以下よりご覧いただけます。

『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』(編著/片桐正敏 構成/楢戸ひかる、小学館刊)

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