現役校長が語る!いじめ対応5つのポイント②【シリーズいじめのない学校づくり2】

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【シリーズいじめのない学校づくり1】の続きです。1では、埼玉県公立小学校校長・田畑栄一さんから、いじめ対応の基本①「いじめの定義」を教職員が共有する②組織で対応する、についてお話を聞きしました。

田畑校長の顔写真。
田畑栄一校長

いじめ対応基本3 子ども同士の話合いは要注意

最近、多くの学校のいじめ対応を見ていて、私が気になっているのは、子ども同士で話合いをさせることです。教員が立ち会わず、子どもだけで話合いをさせ、終わったら報告するように指示しているケースです。確かにひとつの対処方法だとは思いますが、「子ども同士で話し合わせれば、いじめ・トラブルが解決する」と考えるのは、非常に心配です。

確かに、子ども同士の話合いが有効な場合もあります。例えば、学級では、日常的に様々なトラブルが起きます。ちょっとしたきっかけで、友だちから気になることを言われたり、からかわれたり、嫌なことをされたりしてけんかになることがあります。このようなトラブルでは、子ども同士が対等の立場であれば、話し合って解決することも可能です。それでも私は、けんかであっても先生が見届けたほうが良いと考えています。それにより、被害者も安心して話合いの土俵に乗ることができますし、その後、先生に相談しやすい関係が構築されるからです。

いじめの場合はどうでしょう。例えば、クラスの子どもから「いじめられている」と相談を受けたとき、担任は「私が解決してあげよう」というつもりで、子どもたちだけで話合いをさせるのかもしれません。これは一見、良いことのように思えるかもしれませんが、絶対にしてはいけないことです。なぜかというと、いじめでは、被害者よりも加害者のほうが、力関係が上だからです。大人がいない中で、話合いをさせるとどうなるでしょうか。被害者はいじめを受け、すでに精神的にダメージを受けているわけです。思っていることを言えるはずがなく、話合いなど成立しないのです。そのような状態では、加害者から「ごめんね」と言われたら、被害者は「分かった。いいよ」と答えるしかなく、非常に形式的な謝罪となります。

では、どんな対応をしたらいいのかと言いますと……。例えば、被害者からいじめの訴えがあり、教職員が被害者、加害者の双方から話を聞き、情報を整理した結果、いじめがあったと、学校として判断したとします。

その場合は、加害者の子ども一人一人に教員から「これはいじめであり、やってはいけないことです」と話し、自省させることが大事です。さらに、ケースにもよりますが、原則として加害者全員の保護者にも学校に来てもらい、「こういう事案が発生し、学校はこのように対応しました」と話します。

そして、被害者に対する謝罪の場を設けるときは、必ず複数の教員が立ち会い、加害者が複数いたとしても、1対1で謝罪させるのです。なぜかというと、被害者1人の前に、加害者の複数の子どもが並べば、その子どもたちの間にマイナスの横のつながりができるからです。加害者が心の中で「私たちは、チクられた」というマイナスの感覚を共有してしまうと、いじめが一層ひどくなる可能性があります。

それを避けるためにも、 謝罪の場には、管理職、担任、両保護者などが立ち会い、 1対1できちんと話し合いをさせ、加害者には心からの謝罪をさせる必要があります。被害者の心理を踏まえると、この謝罪の行為こそ、区切りをつける機会になります。それがあることで安心できる気持ちにつながり、未来に向けて頑張るエネルギーが湧いてくるのです。

また、いじめの訴えがあったときに子ども同士で話合いをさせ、それだけで済ませてしまうと、後々、保護者との信頼関係が悪化することがあります。

例えば、4年生のAさんの保護者から、「Bさんからいじめられている」と担任は電話でいじめの相談を受けました。担任は、AさんとBさんだけで話合いをさせ、解決したと判断し、そのことを電話で、Aさんの保護者だけに報告しました。2年後、6年生になったときに、Aさんの保護者から「Bさんからまたいじめられている」と訴えがありました。Aさんの保護者にしてみれば、また同じことが起きたわけですから、「4年生のときにBさんの保護者は、わが子がいじめていたことを知っているのですよね? それなのにまたですか?」と確認したくなります。ところが、担任は「子ども同士の話合いで解決したので、Bさんの保護者には連絡していません」と答えます。Aさんの保護者は担任に不信感を持ち、協力体制のあるコミュニケーションがとりづらくなり、解決への障害になる可能性があります。

つまり、このケースでは、担任が「けんかである」「この程度なら、連絡しなくてもいいだろう」と安易に捉えていたのが間違いです。4年生のいじめの時点で、Bさんの保護者に対して、「学校でこういうことがあり、Bさんにこのような指導をしました。よろしければ、Aさんの保護者に謝罪をお願いします」などと経過の説明を丁寧にしておく必要があったのです。これは小さなトラブルであっても、です。子どもは、悪意がなくてもいじめの加害者になっていることがあります。保護者間でも、子ども同士のトラブルやいじめに関しては共有しておくことが重要であり、子どもたちの成長には連携が欠かせないのです。

いじめ対応基本4 「いじめの解決」の解釈を間違えない

文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」では、いじめが「解消している」状態についてこう書かれています。

被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは、少なくとも3か月を目安とする。

いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、被害児童生徒がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。被害児童生徒本人及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。

文部科学省/いじめの防止等のための基本的な方針

例えば、9月にいじめとカウントされたら、基本的に、少なくとも3か月間、経過を追います。「その後、どうなったのか」と教育委員会からも問い合わせの電話などが入り、学校は経過を報告します。最終的には、被害者と保護者に「その後、いじめはありますか」と確認して、「ないです」と答えが返ってきて初めて、いじめは解消したと判断できるのです。それまではいじめが解消に至っていない状態ですから、学校は「被害児童生徒を徹底的に守り通し、その安全・安心を確保する責任を有する」のです。

学校の対応が被害者に寄り添い、納得のいくものであったら、もしも引き続きいじめられていた場合、被害者は毎月のアンケートに書いたり、直接相談したりする可能性があります。しかし、納得のいく対応をしてもらえなければ、被害者は次第に学校に対して不信感をもち、アンケートに書く気にならない心理状態になっていくことが予想されます。苦しいときに寄り添えなければ、被害者との信頼関係は構築できなくなっていくのです。

いじめ対応基本5 誰の責任なのか

そもそも学校でいじめ自殺のような事案が起きるのは、誰の責任なのでしょうか。

法律でそれを特定するのは非常に困難なことなのだろうと推測しますが、私自身校長ですので、自戒を込めて校長の責任は重いと考えています。なぜならば、学校教育法の第37条に「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」とあるからです。学校で起きた事案に関しては、校長が責任を負うのです。

例えば、いじめに対して学校が組織として対応してない、いじめの定義がきちんと職員に伝わっていないのは、校長が職員を育てていないことを意味します。校内で起きるトラブルの最終責任者は校長ですから、やはり校長の責任は重いのではないでしょうか。

全国にはいじめに対して、きちんと対応をされている校長先生がたくさんおられることとは思いますが、現実に、全国のあちこちでいじめによる自殺企図などが起きています。このような悲劇を繰り返さないためには、私たち校長がいま一度気持ちを引き締め、「いじめの定義」に沿っていじめに立ち向かう必要があると考えています。

もしも不幸にして自殺が起きてしまったときには、学校は、「いじめがあったかどうか、事実確認をします」という真摯な姿勢を示すことが大事です。保護者にしてみれば、我が子が命を自ら断っているわけです。わが子が安心して学んでいると思っていた学校で、何があったのかを知りたいと考えるのは、ごく当たり前のことです。保護者の心情に寄り添いながら進めることが大事なのではないでしょうか。

しかし、実際はどうでしょう。学校でいじめが起きていたことが外部に知られてしまうと、その学校は地域社会などからマイナスの評価を受けることになります。それを避けたいため、学校関係者は黙っているのだと思います。あるいは、いじめによる自殺を否定したいのだと思います。学校全体として「いじめを認めることは、学校にとって不利益である」と考え、認めたくないという心理が働いているように思います。

心情的には、学校の責任ではない、としたい気持ちはわかりますが、早期に事実確認を丁寧に行い、保護者の気持ちが少しでも穏やかになるように、誠意をもって対応し、何があったのかを明らかにすることが大切です。それと同時に、保護者に謝罪し、墓前に手を合わせることが大事です。それをしないと保護者は、癒されることがないと思います。

学校には、なんのために校長室があるのでしょう。校長室は、校長が様々な職務に思考をめぐらし、よりよい学校を創造するために考え、いじめがあったときにはどのように対応するかを熟考する場なのです。校長は、学校経営の最高責任者であり、それだけの権限を持っています。

ですから、学校のいじめ対応がまずいのは、担任の責任ではないのです。担任の中には、大学を卒業して先生になったばかりの人もいますし、講師として働き始めたばかりの人もいます。未熟な担任がいても当たり前です。それを指導するのが管理職の仕事であり、校長や教頭の責任であると捉えています。

そして、教育委員会は、学校に寄り添い、支える立場であってほしいといつも願っています。

いじめによる自殺という悲劇を生まないためには、文部科学省が個々の事案の問題点を検証して再発防止に努めなければいけないのではないでしょうか。そして、「誰も助けられなかった」ということをなくすための教育プログラムを、各学校が組んで行かなければいけないのではないかと考えています。

田畑栄一(たばた・えいいち) 早稲田大学第一文学部卒業後、埼玉県の公立中学校教諭(国語)となる。養護学校教諭、中学校教諭(5校)、埼玉県教育局東部教育事務所の指導主事などの経験を経て、平成25年4月より小学校の校長となり、現在は3校目となる。平成27年度より教育漫才の実践に取り組む。著書に『教育漫才で、子どもたちが変わる―笑う学校には福来る』(協同出版)、「クラスが笑いに包まれる 小学校教育漫才テクニック30」(東洋館出版社)などがある。

※次回、いじめによる自殺を防ぐために学校がすべき3つのこと 【シリーズいじめのない学校づくり3】に続きます

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いじめ対応5つのポイント①【シリーズいじめのない学校づくり1】

取材・文/林 孝美

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