学級担任の時短術⑦「効率的に授業の腕を上げよう」
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仕事を効率化しつつも、授業や学級経営の質が落ちないような時短術について、毎月22日公開、全12回で連載していきます。第7回は、「効率的に授業の腕を上げる方法」を紹介。 授業力が向上すれば、子供や保護者からの信頼が増し、物事がスムーズに進むようになるため、結果として時短につながります。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
効率的に授業の腕を上げる2つのポイント
新型コロナウイルス感染症による休校時に、一番話題となっていたことはなんでしょうか。多くの報道では、保護者や子供の声として、「学習の遅れ」を挙げていました。当然と言えば当然ですが、学校は学習をする場所であり、教師の仕事の中心は授業だということが再認識されたのではないでしょうか。
授業力が向上すれば、子供や保護者からの信頼が増し、物事がスムーズに進むようになります。結果的に不要な仕事が発生せず、時短につながるわけです。
そこで、今回は、時間のないなかで、「効率的に授業の腕を上げる方法」を紹介します。
①メンターをたくさんつくる
何か物事を始めるときには、独学よりもコーチについたほうが、効率的に学ぶことができます。しかし、教師の場合、初任者ならば指導教官がつきますが、その後は自力で上達するしかありません。研究授業があるといっても、年に1回では上達速度はゆっくりしたものとなります。
そこでおすすめしたいのが、気楽にアドバイスしてもらえる先達、いわゆるメンターを探し、その人にコーチをお願いすることです。
例えば、職場にコンピュータに詳しい人はいませんか。そういう人をメンターにして、ICTを活用した授業のやり方を、どんどん教えてもらいましょう。また、教科のスペシャリストもいるはずです。国語ならばこの先生、算数ならばあの先生と、その時々の必要性に応じて、さまざまなメンターを見付けていきましょう。
授業力向上という面では、子供とのやりとりが上手なメンターも、ぜひとも見付けたいところです。授業力にはさまざまな側面がありますが、小学校で授業が上手な先生は、間違いなく、子供とのコミュニケーションの取り方が優れています。こうしたコミュニケーションは、座学では学べません。
ですので、この先生はと思う方がいたら、ぜひともお願いし、授業を見せてもらうようにしましょう。そして、子供の意見の受け止め方や対応などで、これはよいなあと思うことがあれば、どんどん真似してみるとよいでしょう。
もしかしたら、うちの学校にはメンターになるような先輩はいない、という方がいるかもしれません。しかし、その気になって探せば、自分よりは力量が上の先輩は結構いるものです。また、内容によっては年下の先生をメンターにしてもよいのです。
教師になるくらいですから、多くの方は教えることが好きで、お願いすると快く面倒をみてくれるでしょう。とはいえ、実際に「授業について教えてください」と頼みにくる人はそう多くないというのが実情です。若い頃に、授業名人と言われるある高名な先生と同じ職場になったことがありますが、その先生に助言を求めていた同僚は数人しかいませんでした。こうしたことは、実にもったいないことだと思います。
なお、メンターに何か教えてもらっても、それを実践しなかったり、実践したとしてもなんの報告もしなかったりする人がいます。これでは、メンターも教え甲斐がなく、やがてあなたにアドバイスしてくれなくなってしまうかもしれません。教わったらすぐに実践し、お礼の言葉とともにその様子を伝える。それが最低限の礼儀であり、メンターにとってのフィードバックにもなるのです。
②通勤時間を有効活用する
忙しいときには、自己研鑽の時間はなかなかとれないものです。そこで、おすすめなのが通勤時間を活用して力量アップすることです。
電車通勤の場合は、車内では読書という方もいるでしょう。しかし、自宅から駅までの移動時間なども有効に使うには、音声を活用するという方法もあります。自動車通勤の場合も、当然音声が中心になります。
そこで、授業力向上のためにぜひ取り組んでほしいのが、自分の授業を録音し、それを通勤時間に聴くという方法です。
1日に1〜2時間、自分の授業を、スマホもしくはICレコーダーで録音します。それを、通勤時間に聴くのです。はじめは気恥ずかしさがありますが、次第に慣れ、冷静に分析できるようになっていきます。
例えば、「えー、あー」など無駄な間投詞が多いとか、説明が長いなど、自分の話し方の欠点に気付きます。欠点に気付いたら、そのことを意識して授業をします(録音します)。そして、帰宅時に改善されたかどうかをチェックするのです。そう簡単には直りませんが、意識しなければ、そうした話し癖はずっと続くことになります。
また、話し方だけでなく、授業の組み立ての善し悪しや、子供の意見を聞き逃していることなどにも気付くようになります。こうした地道な作業は、自宅に帰ってから行うのは、なかなかに苦しいものです。それだけに通勤時間に習慣化してしまうとよいのです。
イラスト/バーヴ岩下
『教育技術 小一小二』2020年10月号より