クラウドファンディングでモノと人を募る【あたらしい学校を創造する #18】

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。今回は、クラウドファンディングを行うことの教育的効果についてのお話しです。

目次
お金だけではない支援の受け方
8月に行ったクラウドファンディングには、お金とともに仲間を集めるという目的があったことは、前回お話ししました。具体的には「学びの研究所」や「ヒューマンライブラリー」という構想が大きくあるわけですが、それだけではありません。
支援としては、「お金を出すかわりに物を出すよ」という場合もあると思います。そういった方々からは、知育玩具や絵本、使わなくなった楽器や実験器具、地球儀や顕微鏡など、いろいろなものを、お金とは違う形で支援していただけたらと思っています。それは、エコロジカル的によいというだけでなく、教育的な効果があると考えているんです。
例えば、子供たちが使う備品に「○○氏寄贈」と書いてあったりすると、「これは、あの人が贈ってくれたのか」と子供が気付くかもしれない。世の中が善意で回っていることを知ってほしいという気持ちが僕にはあります。出資していただいたお金で購入したり、学校で用意したりする場合には、そのような手がかりとなることは少ないと思います。
前回、特定の人や団体に運営資金を頼るのは、安心な反面、学校づくりという面では避けるべきではないか、という話をしました。一方でクラウドファンディングのように一人ひとりがお金を出してくれると、お金とともにたくさんの物語が集まることになります。「愛知県の方が出してくれたお金でこの顕微鏡が買えたんだよ」「この楽器は近所の誰それさんがくれたんだよ」といった情報やそこに込められた思いが、備品に付加価値をつけてくれます。
贈ってくれた人の気持ちがモノに乗り、この学校までたどりついているということを子供たちに感じとってほしいというのが、僕らの願いなのです。今回のクラウドファンディングには、そんな願望も込められていました。
クラウドファンディングに応募してくださった方々に「○○、ご自宅に余っていませんか」と呼びかけることもできます。ただ、それで顕微鏡が100個集まっても、ちょっと困ってしまいます。そこで、これはまだ検討中のことですが、集まった物については、学校で使うかもしれないし、場合によってはそれを寄付として扱い、お金に換える可能性もあることを予告しておこうかなと思っています。そうすれば、換金したお金で模造紙を買うこともできるし、油性ペンを補充することもできます。
初年度はどうなるかわかりませんが、子供たちの興味や関心に沿って探究学習が進んでいきますから、例えば天体が好きな子が天体望遠鏡を欲しがった場合には、「寄付を募ってみようか」「それを持ってる人がいないか聞いてみようか」という話に発展することも十分あり得ます。天文好きの大人が現れて、「僕の使っていた天体望遠鏡をあげるよ」とか「普通ならあげることはないけれど、この子の熱意を感じたからあげてもいい」ということだってあるかもしれません。
お金がらみの話は公立校では無理かもしれませんが、卒業生という人材とのいい繋がりがあるはずです。自分の母校や地元の小学校に投資したいという人は、少なからずいると思います。
