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高学年女子の心をつかむ2つのポイントと3つの仕掛け

2019/6/16

その場限りの筋の通っていない態度を先生がとれば、高学年女子はすぐに見破ります! 思春期を迎えたデリケートな年代の高学年女子への対応を例に、信頼関係を築くための仕掛けについてお話しします。

執筆/京都教育大学附属桃山小学校 樋口 万太郎

女子の授業風景
写真AC

高学年の女子の心をつかむ2つのポイント

高学年の女子の心をつかむために、気を付けていることは次の2つです。

  • 筋が通った指導を行う。
  • 信頼関係を築くための仕掛けを仕組む。

最近、授業を見せていただく機会や悩み相談を受ける機会が増えました。授業を見たり、話を聞いたりしている中で信頼関係を築くどころか、自分で崩している、築くチャンスを逃していると感じることが多くあります。

また、あまりにもノープランで高学年の女子に立ち向かっている方が多くいます。若手の頃は、「勢い」「若さ」でカバーできるかもしれません。いや、実際はカバーできていないのかもしれません。「勢い」「若さ」がそれを見えにくくしているのです。

苦い思い出が2つあります。ただその思い出が転機になったことには間違いありません。

教職2年目で初めて六年生を担任しました。

この学年は5年生の時に学級崩壊を起こしていました。 勤務校はミニバスケットボールの強豪校でした。 ある女子、秋元さん(仮名)がいました。秋元さんはそのチームのレギュラーでした。そして、前年度学級崩壊を起こした張本人でした。女子のややこしいグループのリーダーと言えば、より伝わるでしょうか。

4月の終わり。秋元さんが、クラスの男子を殴りました。ミニバスケットボールをしていたため、力がとても強い子でした。何が原因だったかはっきりとは覚えていませんが、秋元さんに非がありました。しかし、秋元さんはなかなか自分が悪いとは言えずに、反抗的な態度をとっていました。そこで私は、

「ミニバスケットでは、人を殴る練習をしているのか。違うでしょ?」

「ミニバスケットでつけた力は、人を殴るためにあるのか」

ということを秋元さんに言いました。すると秋元さんは、泣きながら「ごめんなさい」と自分の非を認め、その場は終わりました。ただすっきりとした終わり方ではなく、何か気まずい雰囲気が残りました。

放課後、ミニバスケットの監督であり、学年主任でもある隣の学級の先生に、職員室でこの出来事について話しました。すると、「樋口くん、ちょっとおいで」と別室に呼ばれ、

「どうして、そのトラブルと関係ないことを言うんだ!」

「君のは指導ではない! ただ相手を傷つけているだけだ!」

などと厳しく叱られました。そして、最後に、

「秋元さん自身は納得しているのか」

と言われました。

私はこの時、叱られたかったのかもしれません。厳しく叱られたことで、私自身はすっきりしました。ただ、あの雰囲気からして、秋元さんは納得していません。私は、秋元さん自身がスッキリするためにはどうしたらいいのかを考え、秋元さんに電話で指導の仕方がまずかったことを謝ることにしました。そのことを学年主任に伝えると、

「あの子たちのことを一番知っているのは、担任である樋口くん。だから、樋口くんがそうするのなら、それでいいと思う」

そして、

「これから、1本ビシッと筋を通した指導や授業をしっかりしなさい。そうしないといずれ学級崩壊になるよ」と言われました。

2つ目の苦い思い出は、秋元さんの出来事の数日前にあった懇談会での出来事です。多くの保護者が参加してくれました。今思えば、前年度学級崩壊をしていたことで、新しい先生はどんな人なのかというのが気になったのでしょう。

懇談会の終盤、「先生は2年目でお若いし、経験もあまりないから、学級がうまくいくとは思っていません」とある保護者からみんなの前で言われたのです。数人の保護者もうなずいていました。6年生初めての懇談会です。こんな場面、みなさんだったらどう思われますか。

「ショック!」

「どうしてこんな場面で言うの?」

と思われる方がほとんどかもしれません。が、私は、

(そらそうだ。まだ2年目の先生、信頼できないよな〜。初めての6年生の担任だし。保護者が心配するのも仕方がない)

と思わず共感し、納得してしまったのです。そして気付いたのが、何もせずに信頼関係を築けることはありえないということです。教師と子供、子供と子供、教師と保護者の間に信頼関係を築くための仕掛けを仕組んでいかないといけません。

では、その仕掛けをいつ仕組むのかと言えば、授業です。なぜなら子供たちが一番多くの時間を過ごすのが授業だからです。仕掛けを仕組むうえで大切にしておきたいことが、

  • 女子の発言をそのまま受け取らない
  • 子供として接しない

という2点です。

みなさんは、「先生は〇〇さんを贔屓している」と言われた経験はありませんか。特に贔屓しているつもりはなくても、相手がそう感じてしまっているのです。子供を叱る時、人によって叱り方や叱られる基準が異なると、贔屓をしていると思われがちです。そう思われないためには、筋が通った指導が必要です。

また、私は一学期に、

「先生は贔屓しないけれど、人によってサポートをする量や質は変えます。だって、人によって、できること・できないことの量や種類は違うから」

という話を何度も子供たちにします。

そして、「贔屓している」と言われた時には、その言葉そのままを受け取らずに、「私の話も聞いてよ」「私ともっと接してよ」「もっと構ってよ」「私も助けてよ!」という言葉に置き換えるようにしています。この年代の子供たちの多くは素直に言えません。ただ、言われた時には反省し、今後の指導の仕方について考えるようにしています。

また、子供扱いをして接するのでなく、まだできないことや未熟な部分が多い人(大人)として接するようにしています

これらのことを踏まえ、授業においての仕掛けを紹介していきます。

授業で仕組む3つの仕掛け

① 子供の考えを否定しない

子供が間違えることは仕方のないことです。一生懸命に考えても、間違える時は間違えます。

間違えた時、どのようにフォローするのかを高学年女子はよく見ています。

「秋元さん、今回は間違えてしまったけれど、いつもはできているからね」といった慰めは、子供によってはNGです。「間違えています」「違います」と否定することは、多くの子にNGです。

私は子供の考えを基本的には否定しません。間違えた時には、他の子が「間違えているよ」と指摘します。さらに先生までも指摘すれば、考えや答えを二重に否定することになります。「じゃあ、間違えた時にはどうするの?」と思われたかもしれません。私は子供たちの思考を促すために間違いを活用します

例えば、正しい式が「2-6÷3-4」なのに、生駒さん(仮名)が「3-4÷2-6」と間違えたとします。

その時に、

T「この式で合っていますね」

(子供たちが違うと反応する)

T「え!? 違うの? 先生、生駒さんと同じ考えなんだけれど!?」

と惚けるのです。子供たちは先生の間違いや失敗が大好物です。さらに、

T「どうして違うの?」

と問い返すと、子供たちは正しい式や間違えている理由について発表しようとアクティブになり、考えを深めることができます。

この時、最初は子供たちの視線は生駒さんにいっています。生駒さんは、みんなの視線を感じ、「みんなに見られて恥ずかしい」と思ったり、「こんな恥ずかしい思いをするのなら、もう発表したくない!」と思ったりしてしまうかもしれません。

でも、教師が惚けることで、その視線は教師に集まります。教師が身代わりになることで、生駒さんのダメージは減ります。もしかしたら「先生、私のことを守ってくれた♡」と思ってくれるかもしれません。

樋口学級では答え合わせをする時に、

西野(仮名)「答えは○○です」

他の子供「いいでーす」「違いまーす」

ということを、信頼関係がある程度築けるまでは行いません。

なぜなら、答えを間違えた時に、クラス全員から「違いまーす」と否定されるのは、いわば公開処刑に近いものがあるからです。例えば職員会議で自分が言った意見をみんなから否定されたら、耐えられませんよね。それと同じです。

だから教師が答えを言ったり、答えを配り、班で答え合わせをさせたりします。

授業を進めていくうえで、大切にしたい考えや引き出したい考え方があることでしょう。それらは基本的には子供たちの中にあります。それを引き出すために、正しい答えや考え方からのアプローチもあれば、間違いからのアプローチもあります。その場の雰囲気に合った、その子の実態に応じたアプローチの仕方を選択することが大切なのです。

② かかわり合う機会を増やす

子供同士を繋げ、信頼関係を築くために一番簡単な方法があります。それは、子供同士がかかわり合う時間や機会を増やすことです。

例えば、算数「場合の数」で、白石さん(仮名)が落ちや重なりがないように調べる方法を発表したとします、

「全員立ちましょう。今から、白石さんの方法を確認します。話し合えた二人組から座りましょう」

とペア活動を取り入れます。話し合ってすぐに座る組もあれば、ずっと立っている二人組もいるかもしれません。なかなか座れない二人組がいた時には、

「座った子は、アドバイスしてあげよう」

と伝えることで、二人組を越えたかかわり合いが生まれます。

問題を一人で考える時間には、一人で考えることができない子がいることでしょう。そこで、

「一人でしっかり考えて、分からない時には周りの人にアドバイスを聞こう」

と全体に伝えておきます。

先生が近くに行ってアドバイスをすることは、嫌がられます。「先生が来る=分かっていない」をアピールしているようなものだからです。だから、早くに解決することができた子がいた時には、その子をアドバイザーに認定します。そして、アドバイスを聞きたい子はその子の周りに行きます。アドバイスをする子には、

「答えや考え方を教えるのではなく、その子が考えるためのキッカケづくりとなるようなアドバイスをしてあげよう」

と伝え、どんどんかかわり合わせます。

多様な考え方が出てくる時には、

「今から立ち歩いて、自分の考えを話しましょう。話すことができたら、相手からサインをもらいましょう」

と伝えることで、多様な考えを交流し合うことができます。

プリントをする時には班編成の形にしておき、

「分からないところがあれば、班のメンバーに聞いて、しっかり学び合います」

と伝えることで、かかわり合いが出てきます。プリントの答え合わせをグループで行い、間違え直しをみんなでしたり、テスト前には、グループでテスト勉強をする時間をとるのも有効です。

ただ、いつもかかわらせることがうまくいくとは限りません。トラブルもあります。最初はうまくいかないことの方が多いかもしれません。でも続けることで、子供たちはよりかかわり合うようになります。

③ 学級通信で授業の様子を伝える

私は学級通信を毎日出します。それだけ出していて「大変だよね〜」と言われることがありますが、私は大変だとは思いません。なぜなら、

  • 保護者にも学校の様子を知ってもらえる。
  • 間接的に子供をほめることができる。
  • 子供のモチベーションが上がる。

という効果があるからです。

高学年の女子は、人前でほめられることを嬉しいと思う子もいれば、周りの目を気にして嫌がる子もいます。だから、学級通信で授業中の頑張りをほめるのです。保護者の目にもとまります。ただ、ほめる回数に差があると嫉妬する子もいます。だから全員同じ回数、ほめます。

学級通信を出し続けると多くの保護者に

「先生って、熱心! 」

と思ってもらえます。それだけで、教師と保護者の信頼関係を築くことができます。

学級通信は隙間時間に書くようにしています。1枚10分もかかりません。多くの場合は、通勤中にスマホのメモに書いておき、そのデータをワープロソフトに貼り付けて完成といった具合です。

学級通信を毎日出すのは……という方もいることでしょう。別に毎日出さなくてもいいのです。大切なことは、同じルーティンで出すことです。毎週金曜日、第2・第4月曜日、なんでも構いません。同じルーティンで出すと、その日が近づくと子供たちは「もうすぐ学級通信だ」とワクワクすることでしょう。ルーティンを決めたら、遅れることなく、必ずその日に出すのです。約束を破ると、高学年女子は冷ややかな目で見ます。他の学年では誤魔化せたとしても、高学年女子は無理です。

どの教科でも取り組めそうな3つの仕掛けを紹介しました。その場限りの指導ではなく、筋を通して指導していくことが大前提です。いつもブレブレでは効果は薄くなります。

もうお気付きだと思いますが、これは別に高学年の女子の心をつかむだけの仕掛けではありません。男子と女子といった子供同士の関係を繋ぐためにも有効です。今から取り組んでも遅くはない仕掛けです。ぜひ、参考にしてみてください。ちなみに私が持っている仕掛けはまだまだあります。それはまた別の機会に。

樋口万太郎先生
樋口万太郎先生

ひぐち・まんたろう。「子供に力がつくならなんでもいい!」がモットー。小五教育技術にて「構造的板書」を連載中。著書に『クラス全員をアクティブな思考にする算数授業のつくり方』(明治図書)など。他にも共著多数。

『小六教育技術』2018年7/8月号より

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