「学校インターンシップ」とは?【知っておきたい教育用語】

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「学校インターンシップ」とは、将来、教員を志す学生が学校現場で就業の経験を積む制度です。従来から行われている「教育実習」は、授業を中心とした指導力をつけることを目的としたものですから、区別して捉える必要があります。

執筆/茨城大学教授・加藤崇英

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学校インターンシップの必要

近年は定年退職を迎える教員が多く、若手の大量採用が実施されてきました。新人教員が速やかに学校現場に順応し、実践力を発揮することが求められています。

授業を中心とした指導力についての心配や不安を抱えている教員志望の学生は少なくありませんので、直接的な学習指導の面は主に教育実習で経験するという基本は変わっていません。

一方で、学習指導というよりはむしろ学校や教員であることに対する漠然とした不安や心配を抱えている学生、また昨今は、「教員は忙しすぎるから自分はやっていけるか心配だ」という学生も少なくないと思われます。

このような状況をうけて、2015年12月、中央教育審議会は「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~」を答申し、「国は、学校インターンシップの実施について、教育実習との役割分担を明確化しつつ、受入れ校、教育委員会、大学との連携体制の構築、大学による学生への適切な指導などの環境整備について検討する」ことの必要性を明示しました。そして、学校インターンシップについては「教職課程において義務化はせず各大学の判断により教育実習の一部に充ててもよいこと」として、大学に一定の裁量を与えました。

制度化の意義と課題

従来から行われてきた教育実習の主な目的は、授業の実践力を高めることです。しかし、学生が自身の教育への適性や希望を考える機会を広げるためには、授業の場だけでなく、学校のさまざまな現場で子どもと接したり、教員という仕事をより深く知ることも必要です。

これまでにも教員養成系の学部や学科を中心に、学生が学校での教育活動に関わりながら体験できる取り組みとして、学校における支援活動やボランティア活動などは行われてきました。また、自治体が学生に対して学校インターンシップに類する活動の場を提供している例もあります。

いずれにしても、大学における教職課程上の位置づけや大学と教育委員会・学校の連携や協力のあり方については、地域や大学によって異なり、必ずしも制度としての共通性や一般性はありませんでした。

学校インターンシップの制度化にあたっては、次の2点について検討する必要があります。

第1に、教職課程上の位置づけを明確化することです。特に、学校インターンシップと教育実習との役割の違いを明確にしたうえで履修や科目に関する設定を検討することです。

第2に、学校インターンシップの実施にあたって、学生を受け入れる学校の確保や実施する内容などについて、教育委員会と学校、そして大学との間で連携・協力の体制を構築しながら検討することです。

学校インターンシップと教育実習の位置づけ

学校インターンシップは、学校における教育活動や学校行事、部活動、学校事務などの学校における活動全般について、支援や補助業務を行うことが中心となります。

一方、教育実習は、実習を実施するための組織的な指導体制を校内に構築するとともに、指導教員を専任し、実習生への指導や評価表の作成などが義務づけられます。

学校インターンシップは、教育実習よりも長期間を想定していますが、1日当たりの時間数は少ないことが想定されています。教育実習の場合は、教職課程における必修単位としての位置づけから、小・中学校の場合は4週間程度、高校の場合2週間程度が充てられています。

学校インターンシップでは、大学は学生が行う支援や補助業務に関する指示を行いますが、教育実習のように、学生に対する指導や評価は実施しないことが基本とされています。

教育実習は必修であり、主に大学3年生から4年生にかけて実施されるのが基本ですが、学校インターンシップは1年生や2年生における素朴な学校体験を目的としたり、採用が決まった学生(採用予定者)の現場経験による採用前研修を目的とします。

これらのことを勘案しながら、学校インターンシップと教育実習のそれぞれを教職課程にどう位置づけるかは大学の裁量といえます。

学校現場の理解と支援

学校インターンシップは、学生が学校での経験や体験をすることで、教員という職業や学校という職場に対する理解を深めることがねらいです。

一方で、こうした取り組みが政策的に推進されることは、多忙化が解消されていない学校現場からみれば、さらなる負担が増えると捉えられかねません。制度を推進するうえで、公立学校でいえば設置者である行政と、学生を送り出す大学とが連携して、学校現場を支援する体勢が不可欠といえます。

学校の先生にとっては、支援や補助に入る学生に対して業務の説明を行うことなども負担となってしまうことがありますので、こうした連携体制を充実させることが必要です。そのうえで、教科指導での補助的な役割、学校行事での支援的な役割、提出物などの丸つけ、給食・清掃活動の補助、放課後学習や部活動の指導補助など、学生が経験を積むことができる体制づくりが求められているといえます。

▼参考文献
中央教育審議会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~(答申)」2015年12月
文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」1997年9月、2014年4月・2015年12月一部改正

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