保護者を味方につけるには?【現場教師を悩ますもの】

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諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
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「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する“現場教師の作戦参謀”こと諸富祥彦先生による人気連載です。教育現場の実状を説くとともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

若手教師にとって保護者は苦手な存在。それゆえ、保護者会を苦痛と思う人も少なくありません。保護者の信頼を得るためにも、保護者会を好印象にする心構えを諸富先生が解説します。

モンスターペアレントを生まないために

若手の担任の先生には、「保護者会が苦手」という人が少なくありません。20代の教師が増えた今、保護者の世代は40代でしょうから、上から目線で見られている感じがするのでしょう。

しかし、「モンスターペアレント」を生まないためにも、保護者と協力関係を築くことが重要です。それには、保護者会を上手に活用することが重要になります。

今回は、保護者会のポイントを述べてみたいと思います。保護者会を楽しみながらできるようになれば、教師として一人前になった証拠です。

保護者会で求められるものとは

▼保護者会に求められるニーズ

  1. 学校や学級での子供の様子がよくわかること
  2. どのような担任であるかが明確であること
  3. 保護者同士が話し合える時間をとってくれること

という3つです。特に①が重要です。具体的にクラスの様子について語られていないと、「この先生は子供のことを見てくれていない」と保護者は思います。

昔も今も、保護者から好かれる教師というのは決まっています。「子供のことをしっかり見取ってくれている先生」です。これは、人気教師に求められる不動の一位といっていいでしょう。逆に「子供を見ていない先生」が一番評判が悪い。

自分の子供に学校のことを聞いても要領を得ない。でも、保護者会に出ると、学校や学級の中で何が起こっているかがよくわかったという感触が得られると、「保護者会に行ってよかった」となります。それが、担任への信頼を生みます。

保護者と教師は横並びの関係

最近私が気になるのは、やたらと腰が低い担任の先生が増えていることです。低姿勢であればうまくいくというものでもありません。あまりに腰が低いと、保護者の方は心配になるものです。

教師と保護者の本来の関係は「協力関係」です。教師と保護者はともに力を合わせて子供を育てていく「パートナー」です。たとえていうなら、横に並んで肩を組みながら歩んでいく関係です。

だからこそ最初の保護者会では、担任のほうから「パートナー宣言」を行うとよいでしょう。「保護者のみなさんと私たち教師は、一緒に力を合わせて、子供たちの心を育んでいくパートナーです。一緒に力を合わせて、子供たちの成長のために頑張りましょう」と、「あるべき関係」を提示するのです。その前に「全員が全員と握手」というエクササイズを行うとさらによいでしょう。

先生の個人情報は教えないで

気をつけておくべきなのは、先生個人の携帯電話番号は教えないようにするということです。毎日5時間も6時間も携帯電話を掛けてくる保護者の対応をしているうちに、うつ病になる先生もいます。

携帯の番号を教えていなくても、「夜10時まで学校にいることも珍しくない」と言ってしまったばかりに、頻繁に保護者から電話がかかってきて、メンタル的にまいってしまった教師もいます。ほとんどの保護者がまともな人でも、1%の悪い保護者にあたる可能性があります。一人の教師がつぶれてしまうのに時間はかかりません。

「学校の職員が電話を取るのは午後6時まで」などと学校単位でルールを決めるのがよいと思います。ひたすら教師が電話番をするのは働き方改革に逆行しています。


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/高瀬康志

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