「泣き出す」「暴れる」「登校渋り」Q&Aでわかる!年度はじめの困った場面対応法
「イライラして暴れてしまう」「授業中に立ち歩いてしまう」など、新年度に起こりそうな困った場面や行動を想定し、そうした場面での考え方と具体的な対応法について紹介します。
執筆/新潟県公立小学校教諭・近藤佳織
こんどう・かおり。勇気づけを軸にした学級経営に奮闘中。著書に『1年生の学級づくり』(日本標準)、共著に『学級を最高のチームにする! 365日の集団づくり1年』(明治図書)など。
目次
環境の変化による不安定さは起こるもの。まずは安心感を!
学校生活をスタートした一年生、初めて進級した二年生。入学や進級は喜ばしいことですが、環境の変化や新年度という節目に不安を感じ、不安定になる子もいます。大人でも、新しいクラスを担任する、学年団のメンバーが代わるなどの際に、不安を感じた方もいるでしょう。
子供たちの不安な気持ちに気付いたなら、安心感を与えることが大切です。言葉がけ、笑顔、温かさ、見通し、分からないことを聞ける雰囲気づくりなど、さまざまな対応が考えられます。方法はどうあれ、安心できる教室環境、学校環境をつくることを心がけましょう。
また、個人差はあっても、環境の変化や見えない不安をうまく言葉にしたり、一人で解消したりできず、結果的に、困った行動、配慮や対応が必要な行動として表れてしまうことは、起こりうるものと予想しておきます。そうすれば、想定の範囲として対処できます。
ここでは、新年度に起こりそうな困った場面や行動をいくつか想定し、そうした場面での考え方と具体的な対応法について述べていきます。
Q1 すぐに泣いてしまい活動ができない子がいます
自分の気持ちをうまく言葉で伝えられず、泣くことで、悔しい、悲しい、寂しいなどの感情を表現してしまう子がいます。また、泣くことで周りからの注目を得られることを学んだ場合は、報酬として周りの対応を得るために、泣き続ける場合もあります。
状況やその子により、泣く理由や背景はさまざまですが、例えば次のことが予想されます。
- 学校生活や新年度の環境の変化による不安
- 気持ちをうまく表現できない、どうしたらいいか分からない
- 自分の思うようにいかない、うまくできない
まず、その子がどのような理由や背景で泣いてしまうのかをつかみます。そのうえで次のような対応を心がけてみてはどうでしょうか。
A1 泣いてしまう背景や理由をつかみ、対応する
理由①
学校生活に対する不安から泣いてしまう場合、新しいことが度重なることによる不安やストレスからきているのかもしれません。学校生活のきまりや各行事、授業のやり方などは、写真やイラストを活用し、より多くの子に分かるように提示します。
例えば一年生を迎える会のように、学級だけでなく、学年や全校に関わる行事は、趣旨や概要を早めに伝え、あらかじめ練習しておくことで不安の解消につながります。特に一年生は、「昨年もあったね」「ああ、あれね」と想起する経験の少なさからイメージしにくさがあります。
事前に予告し、見通しをもたせることで安心する子もいるため、この時期はていねいに説明します。
理由②
発達段階やその子の性格や特性から、自分の気持ちをうまく言葉で表現できず、泣いてしまう場合もあるでしょう。
子どもがうまく言葉にできない場合は、「心配だったの?」「悲しかったの?」など、こちらが理由や気持ちの選択肢を示し、本人に意思表示をさせたいものです。そのうえで、「小学校では初めてのことだから、心配になるよね」など、その子の感情に寄り添う言葉がけや、必要に応じてスキンシップで安心させることに努めます。
そのうえで、「今度は泣かずに、心配だって先生に教えてね」と笑顔で方法を教えていきます。
理由③
自分の思うようにいかない、できないなど、悔しさや感情の興奮から泣いている場合は、「泣きたいくらい悔しいのかな」と感情を確認し、「落ち着いたら話を聞くね」と話し、危険がなければしばらくそっとしておきます。
一年生を担任したとき、言語活動の一つとして、朝活動で、毎朝対戦相手を替え、ペアで百人一首を行っていました。勝負に負け、札が思うように取れなかったとき、札を机上からすべて床に落とし、「取りたかったのに!」と叫んで泣き、悔しさを表現したAさんがいました。「悔しかったね。でも、札は片付けてね」と言ってその子から離れました。泣いているときに関わりすぎることで、「泣けば、先生がずっとかまってくれる」と不適応行動を助長する場合は、泣き終わってから話を聞くようにしたほうがよいこともあります。そう伝えても感情が収まらず、ペアの子が全部片付けてくれた日もありました。「勝負は時の運」「勝つことも負けることもある」「Aさん、毎日続けていると覚えてきたね」などと声をかけ続けているうちに、負けて泣いても札をまき散らさなくなったり、気持ちの回復が早くなったりしていきました。「勝負は時の運」と自分に言い聞かせ、興奮を自分で収めようとしている姿も見られました。
授業で挙手をしたのに、自分がすぐに指名されないと怒って足をばたつかせ、泣くことで不満を表現するBさんがいました。その子が我慢できる範囲を見極めつつ、指名されなくても落ち着いて挙手する他の子を「Cさんの手の挙げ方はいいですね」「Dさんは姿勢よく聴いていますね」と評価し、よい姿を共有することもよいでしょう。成長を待ちながら、泣く以外の表現や我慢を教えていきます。
Q2 暴れてしまう子がいます
感情の興奮と同時に手が出てしまう子がいます。興奮し暴れてしまうことが繰り返し起きる場合、まず、その行動の直前に何があったか、きっかけとなった出来事を状況の把握や本人からの聞き取りなどでつかみます。
A2 落ち着くのを待って、本人と解決策を相談し試す
きっかけが「うまくできなかった」というものであれば、A.1で示した対応を基にし、暴れたときは必要以上に関わらず、「落ち着くのを待つ」「切り替えられたら関わる」などの対応が考えられます。このとき、他の子が巻き込まれたり、怪我をしたりすることのないようにします。必要に応じ、職員に応援を頼み、担任としては、暴れず普段通りにやっている他の多くの子たちの対応を続けたいものです。
また、例えばEさんが暴れることが続き、他の子が怪我をする、怖がるなどがあった場合、本人の話を聞いたうえで、「先生は、Eさんがいつも乱暴だなって、みんなに誤解されるのが嫌です。イライラが爆発しそうになったらどうしたら落ち着けそう? どうしたらいいか考えてみない?」と一緒に解決したい、味方だということを伝えます。作戦会議と称して、クールダウンする場所や本人なりの一時解決方法を一緒に考え、試してみることを相談します。
しかし、暴れる子の場合、そのきっかけはほとんどが人との関わりで起きています。「勝負事に負けた」「誰かに嫌なことを言われた」「遊んでいて思うようにいかなかった」など、関わりの中で生まれてくることが多いものです。
Eさんへの指導例としては、発達段階にもよりますが、落ち着いたときに話をし、どうなりたいかを確認します。そして「イライラしても、暴れないで切り替えられるようになりたい」というめざす姿を確認します。もしイライラすることがあったらどうするか、暴れる以外にできそうなことはないかを一緒に考えます。例えば、その場を離れる、すぐに誰か先生に話す、図書室へ行って落ち着くなど、こちらから選択肢を示し選ばせることから始めてはどうでしょう。
そのように自分で決めてやってみたからといって、暴れることがすぐになくなるわけではないでしょう。また暴れてしまったときは、本人が落ち着いたときに、「今日のイライラ度は100点中どのくらいだった?」と感情を数値化して考えさせたり、「どのくらいのイライラ度だったら爆発しないで我慢できる?」と絵や図に描きながら尋ねたりします。感情という見えないものを少しでも見える化し、本人と解決に向けた取り決めを実行する、うまくいかなければまた相談し別な方法を試す、そうした繰り返しで徐々に切り替えられることを期待します。
加えて、もし暴れるきっかけが周りの子からの意図的な言葉がけや刺激などが引き金になっている場合は、周りの子への指導も必要です。例えば、「お友達に注意をするときは、誰か一人が注意するのがいいね。たくさんのお友達に一度に注意されると、イライラが爆発してしまうこともあるよね」「『〜しちゃだめ!』って言われるとイライラして爆発するお友達もいるよね。『〜しないほうがいいよ』という優しい言い方ができる一年生になれたら素敵だね」と具体的な言葉がけや関わりの指導を行います。
Q3 授業中、立ち歩いてしまう子がいます
授業は一般的には机に向かい、読んだり書いたりするものと考えると、低学年のうちに授業に向かう姿勢を身に付けさせたい、学習規律をしっかりさせたいと思います。しかし、中には学習意欲の低い子、一定時間集中できない子もいます。ここでは、いつも座って学習しなければならないわけではない、授業に活動を入れるといった発想の転換をしてみます。
A3 短い時間で活動を替え、動きを入れた授業を行う
特に入学したばかりの一年生は、早く勉強したい!と鉛筆を持って学習意欲満々の子もいれば、椅子に座って一定時間何かをするのがまだ難しい段階の子もいます。同学年でも、発達のペースにより、学び方や力もさまざまです。
45分の授業を10分か15分1セットと考え、活動を変えることで集中しやすくします。
例えば、国語であれば、フラッシュカード、読み聞かせ、教科書を読む、ノートに書く、発表するなど、三つか四つの活動を組み合わせて行います。そのときに声を出す、立って読む、立ち歩いてノートを見に行く、立ち歩いて自由に発表するなど、立ち歩くことを奨励するような活動を入れると「早く座りなさい」と注意しなくてもよくなります。
また、少し動くことで動きたい欲求が満たされると落ち着いたり、次の活動に集中できたりするタイプの子もいます。同時に、静かに読み聞かせを聴く、文字を書く、色を塗るなど、座って行う活動も取り入れ、静かに学習もできるという体験を積むことも有効です。
Q4 登校を渋る子がいます
学校生活への不安、家にいたい、集団生活の経験が少ない、学習への抵抗感、生活リズムの未形成など、理由はさまざまですが、新年度が始まって間もないこの時期は、登校を渋る子が出てくることもあります。
担任として心がけることは、安心できる時間を増やすことだと考えています。
A4 渋りはじめであれば、クラスを安心できる場所に
登校を渋る子がいた場合、身体症状の有無、家から出るときに渋る、学校の玄関までは来る、教室に入れば普通に過ごせるなど、どの段階で渋っているのか、本人の特性により対応は異なります。登校の渋りはじめであれば、その子にも学級の子にも、いつも笑顔で接し、クラスが安心できる場所になるように心がけます。
また、一緒に遊ぶ、おしゃべりをする、ノートへのコメントや花丸など、さまざまな場面で、安心できる一人となれるよう力を尽くします。まずは、担任との関係をつくり、学習、友達関係……と心配事を解決できるように、徐々にアプローチしていきます。しかし、自分一人でできることは限られています。学年や関係の職員、保護者と連携しながら対応していくことも大切です。
イラスト/山本郁子
『教育技術 小一小二』2021年4/5月号より