最後の学校行事「卒業式」までのラスト1か月の活動アイデア
6年生にとっての三学期は、進学という新しい生活の「小学校生活の集大成の学期」です。6年間のまとめ、そして、中学校進学という新しい生活をスタートすることに向けての準備期間であり、自分を見つめ直す3か月でもあります。最大で最後の行事である卒業式までのラスト1か月、しっかりと準備して臨みましょう。
執筆/広島県公立小学校教頭・川原陽子(広島県小学校教育研究会 特別活動部会研究部)
広島県公立小学校教頭・寺戸典子(広島県小学校教育研究会 特別活動部会研究部)
目次
1か月前
一人1日「卒業カウントダウンカレンダー」に込める気持ち
いよいよ卒業の日まで約1か月。担任の先生は、卒業式までの登校日数が何日あるかを数えてみましょう。卒業式の日を「0日」として、前日は「1日」となります。土日祝日は除いてカレンダーに書き入れてみましょう。
3月19日が卒業式であれば、2月3日が「あと30日」の日となります。学級の人数に合わせて、ちょうどその数にあたる日に、次のような授業をします。
学級活動(2)「残りの日々を大切に」
「あと何日で卒業式でしょうか?」とたずねると、「60日!」「50日!」などという声が出ます。「正解は、30日です!」の言葉に「ええ!!」との驚きの声。「1年が早すぎる」「もっとみんなといたい」「ばらばらになるのが悲しい」「中学生になるのが不安」などたくさんの気持ちが聞こえてくるでしょう。
「悲しくて友達と離れたくない気持ちは、みんなと同じだけど、それよりも先生は、みんなが中学生になることがうれしいです。中学生になると新しい勉強もたくさんするし、新しい友達もできます。きっとたくさん楽しいことが待っています。だから、うれしくて楽しみな気持ちももってほしいです」と伝えましょう。
そして、その残りの1日1日を大切に、学級目標達成を意識しながら過ごそうねということと、それが目に見えて分かるようにと、卒業カウントダウンカレンダーをみんなで手作りすることをねらいにして活動を始めます。
ちょうど残りの日数と学級の人数が同じなので、一人が1日(1枚)ずつカレンダーを書くようにします。表には「あと○日」とカウントダウンの日にちを大きく書きます。その裏には、その日の日付と、自分の名前、そして、みんなへ贈る言葉を書くようにします。一人一人ていねいに、思いを込めて書きましょう。そして、教室の壁に1列に並べてはります。少し悲しいけど、とてもカラフルでにぎやかなすてきなカレンダーで教室が飾られ、カウントダウンのスタートです。
毎日がドラマティックな帰りの会に
カウントダウンが始まると、帰りの会で1枚ずつめくっていきます。めくるだけではなく、その1枚を書いた人が前に出て、裏に書いてあるみんなへのメッセージを読み上げます。
「友達になってくれてありがとう。修学旅行での夜は楽しかったね。中学生になってもよろしく」「わたしは別の中学校に行きます。みんなと別れるのは寂しいけど、お互いがんばりましょう」など、改めて口に出して伝えるメッセージは、これまでにできた学級の絆を確認することにもなるし、日ごろなかなか言えない言葉だからこそ、心に伝わります。「あと何日」をどんなふうに過ごすのか。メッセージを聞きながら一人一人が考える時間にもなります。ドラマティックな最後の日を迎えるまで。
2週間前
子供たちの願いをかなえながらクライマックスへ
お世話になった先生たちに特別授業を頼んだり、自分たちが授業をつくったり、子供たちの願いをかなえながらクライマックスへと近付きます。
①校長先生の授業「卒業証書」
「卒業式」は、正式には「卒業証書授与式」といい、校長先生から卒業証書を受け取る儀式的学校行事です。
新型コロナ禍の中、一人一人が校長先生からもらうことはできないかもしれませんが、この「卒業証書」に込められたものは何か。何が書かれているのか。言葉の意味などを教えていただきます。
②教頭先生の授業「あなたに贈るメッセージ~絆~」
用意するものはちょっとしっかりした紙皿と、首にかけるリボン人数分、そして思い出の曲が入ったCDだけ。約束は、「音楽が流れている間は、決して話さずに、だまって活動する」ということです。
限られた時間を使って、子供たちは、その人その人への思いを書きます。音楽が終わり、着席して自分がもらったメッセージを読むときの顔は、本当にうれしそうです。先生は、ドラマティックな場を設定するだけでよいのです。
③子供たちによる授業「自分たちでも授業がしたい!」
子供たちに付けさせたい力の一つが「自学の力」という先生も多いのでは? 卒業前、学習すべき単元が終わったら、子供たちにそれぞれの得意な教科や分野の授業を担当させてみてはどうでしょう。先生が授業をするよりも、友達同士の方がよく話を聞いたり発表したりと、新たな発見があります。
1週間前
小学校生活、最後にしたいことは……思い切り遊びたい!
中学生になると、とにかく忙しくなるというイメージをもつ子供たち。「最後にしたいことは?」とたずねると、「思い切り遊びたい!」という答えが返ってきます。
ある日の昼休憩。「全校児童、全員グラウンドへ集合!」という校長先生の声での放送がありました。
なんと、学校の全員で遊ぼう!という提案です。子供たちの笑顔がさく裂しました。学校全員で踊ったこと。学校全員で「だるまさんがころんだ」をしたこと。一生思い出に残ることでしょう。
いよいよ卒業式前日
記憶に残る卒業式へ
廊下の掲示物もお祝いムード
● どれだけ大きくなったかな(保健室前)
● ありがとういっぱい「ぽかぽかの木」
● 卒業式前日に、卒業生から保護者への手紙を「見送りロード」に掲示しサプライズ!
ラストスパート! のアイデア
*1年生の教室で帰りの会
「低い~ ! !」
6年間でずいぶん大きくなったことを実感します。
*思い出の国語の教科書を使って「文学作品イントロ当てクイズ」
「これから、物語の最初の部分を読むので、題名がわかった人は手を挙げましょう」
「おじいさんが、かぶのたねをまきました」
「はい!『大きなかぶ』」
「正解」
卒業式当日
忘れがたい1日にするために
卒業式の朝
確認しておきたいこと
● 卒業式練習でポイントになったところ
● 卒業証書授与時の返事に込める気持ち
● 服装
机上に置いた配付物の確認
卒業式後
卒業式後の最後の学級指導は、最後の授業……素敵な時間にしたい……とは言え、わりと短いので、短時間でも、しっかりメッセージが伝わるように工夫しましょう(子供たちへのメッセージを準備しておきましょう)。
メッセージを伝える方法のあれこれ
● 思い出ムービー上映
● 保護者と一緒に子供たちへ歌のプレゼント(あらかじめ、保護者に協力を依頼しておきましょう)
● 「〇〇で賞」一人一人にオリジナル賞状贈呈(子供たちとのエピソードを、保護者にも聞いてもらいます)
学級指導後
学校によっては、全校児童の見送りを受けて、下校する場合や、その後、思い思いに友達やお世話になった先生と写真撮影をしたり、お礼を伝えたりといった時間をもつことができる場合もあります。
時間がとれるようなら、前もって、「5年生にエールを贈ろう」と黒板アートについて提案しておくと、教室に戻った6年生が、5年生にメッセージを残すこともでき、子供たちにとっては楽しい時間となります。
6年生の児童にとって、小学校の卒業式はおそらく生涯にわたって記憶に残る1日となるでしょう。卒業に関わる一つ一つの活動を子供たちとともに考え、その活動の意味を共有しながら工夫していくことで、一人一人の心に深く刻まれた、ドラマティックロード(卒業への道)となると思います。
卒業生になる自覚と自信をアップさせよう
卒業式練習では、大切なものを受け渡しするときの作法とその意義を伝えよう
社会では、賞状や辞令、重要書類などを取り扱うときの所作が長年大事にされています。いずれも、「大切なものを扱わせていただきます」という誠意を表現 するしぐさで、卒業式の練習でも各学校で少しずつの違いがありますが、卒業式の指導の場面では、基礎的な知識は持ち合わせておきたいものです。また、ていねいに指導することで、学校行事である卒業証書授与式を、厳粛で清新な気分を味わうものとし、新しい生活の展開への動機付けにすることができます(儀式的行事の指導:学習指導要領特別活動編より)。
根幹となる作法
大切なものの扱い方
①両手で取り扱うこと
受け取りのときは、まず右手、次に左手というように片手ずつ出し両手で受け取る。そのまま1歩下がり、書状を目の高さに掲げて会釈する。このとき、手が下がらないようにお辞儀することを〈押しいただく〉と言います。
②上から見たときに大きな球を抱え込むように持つこと
この形は“円相”と呼ばれ、物を扱うときに、〈衝撃の吸収〉と〈美しさ〉の双方を備えた理想の形とされています。
多くの学校では、卒業証書を卒業式後、教室で改めて担任が渡す場合もあります。その際も、大切に取り扱うために、卒業証書は机などに直接置かず、お盆などを用意しておくようにしましょう。
指導のポイント!
日ごろ慣れていない所作をするのは、緊張も伴うので、あらかじめ、学級で二人一組になって、練習を何度かしておくとスムーズにできるようになります。この練習も卒業生になるという自覚を高めます。
参考文献:『礼儀・マナー教育概論』柴崎直人著(培風館)
引継ぎを通して5年生をサポート、自己有用感につなげよう
1年間、児童のリーダーとして、いろんな場面で活躍してきた6年生。そのまとめとして、5年生から相談を受ける場面や活動のこつや秘訣をまとめて披露する場面があると、いっそう自己有用感や自信が高まります。3月には、委員会活動、クラブ活動、通学部会等々のリーダーの引継ぎがあるので、あらかじめ学級で、自分の1年間を振り返って、それぞれの立場で、下学年に伝えたいことをまとめておくのも子供たちにとっては楽しい活動です。
5年生の担任の先生と連携し、合同学級会を開き、新入学児童入学説明会での5年生の役割や活動などを相談し、アドバイスを受けると活動が充実します(6年生が書いたまとめは、6年生を送る会で披露するのもいいですし、冊子にして学校に残したり、プレゼントしたりするのもアイデアです)。
次の最高学年、5年生の育て方
みんなとの絆を深め、一人一人の力を高め、ドラマティックな卒業への道を歩んでいる6年生を間近で見ることができれば、次に6年となる5年生も、おのずと育つはず。そういう意味では、6年生の姿をどう価値付け、伝えていくことができるか、5年担任の先生の力も問われています。本当の意味での6年生には簡単にはなれません。それなりの準備と指導があってこそ、最高学年になった瞬間から、「6年生」の顔になるのです。
入学説明会で来た子供たちと5年生がペアリング
入学前に行う入学説明会の日は、次に6年生となる5年生が、就学児童と交流会をします。おうちの人がお話を聞いている間に、あらかじめ決めておいたペアで教室へ案内し、絵本の読み聞かせをしたりお絵描きをしたりして遊びます。単学級の学校などで可能であれば、この時のペアを次年度に引き継ぐことで、入学直後の小1プロブレムを防ぐことができます。
送る会や卒業式は僕ら5年生で盛り上げる!
「お世話になった6年生のために、最後の花道は僕たちがつくる!」そんな気持 ちで5年生が活躍すれば大成功! 式当日の胸花も5年生がつけに行きます。
構成/浅原孝子
『教育技術 小五小六』 2021年3月号より