両親が離婚して気落ちして見える子供に教師としてどう接する?|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

独特の実践で子供のやる気を伸ばすカリスマ教師、沼田晶弘先生。
「最近両親が離婚した児童。時々元気がなく、気がかりな様子もあるので、声をかけたいのですが、不機嫌な態度をとるのでどう接してよいかわからない」という質問にアドバイスをいただきました。

撮影/下重修

「離婚が原因」と決めづけずに見守り、さりげなく声をかける

詳しい事情や背景がわからないのでなんとも言えないのだけれど、問題を起こすような行動がないのであれば、そっと見守りながら、しばらく観察してみてはどうだろう。

このとき気を付けたいのは、「離婚したばかりだから気落ちして不機嫌になっているのではないか」と決めつけないこと。もしかすると、他に原因があるかもしれないし、単純に話しかけるタイミングが悪いだけかもしれない。

「両親が離婚をした」というフィルターを外してみると、「元気がないときがあり、声をかけると不機嫌になる」ということだよね。だとすれば、家庭だけの問題ではなく、クラスの中で困っていることを抱えているのかもしれないし、担任である自分に不満がある可能性も否定できない。もし信頼している大好きな先生から、自分が悩んでいるときに、声をかけてもらったらうれしいし、相談したくなるだろう。

原因をすべて子供やその家庭の中に求めるのではなく、自分と子供との関係についてちゃんと見つめ直すことも必要だ。

まずは子供の言動を根気強く見守ってみよう。そして、担任からさりげなく声をかけながら、その子が何か話したくなる瞬間が来るまで、待ってあげてもよいと思う。
もしつらい気持ちを抱えていて、何かの拍子にその気持ちを吐露してくれたら、「いつでも先生は話を聞くよ」という姿勢を見せるべき。そして必要があれば学校全体でサポートをしてあげよう。

日頃から子供との信頼関係を築いておくことが大切

先生は誰でも子供たちがもし困ったことを抱えていたら、なんでも相談してほしいと思っているはずだよね。「何かあればなんでも先生に相談してね」と伝えている人も多いと思う。でも、本当に困っていることを抱えていても、もしそれが他の子にも知られたくないようなことなら、なかなか先生に相談はできないだろう。教室の中で先生と二人きりになるチャンスはあまりないからだ。

ボクが毎日一人ひとりの子供とつながるために、「日記」を続けている話は以前にもしたよね。

二人きりにならなくても毎日全員の子供たちと1対1でコミュニケーションがとれるツールをもっていることで、あまり人には言えない子供の本音を引き出せることもあるし、たまった不満を吐き出させることもできる。

何よりも、日記という「何か困ったことがあれば、安心して相談できるルート」を確保し、毎日コミュニケーションを積み重ねながら、信頼関係の土台作りをすることが大事だと思っている。

先入観を持たず、保護者にもヒアリングを

もし子供の様子が気がかりなのであれば、保護者に電話をしてみるのもよいだろう。

保護者にどんな言葉をかけるかは、保護者のタイプにもよるし、状況によっても変わるだろうけれど、「おうちでのお子さんの様子はいかがですか? お子さんの学校の様子で、お母さんが困っていることはないですか?」など、まず保護者が子供の様子で困っていることがないか、ヒアリングしてみるとよいと思う。 まずは相談にのる姿勢を見せ、深刻な内容であれば、管理職にも相談しよう。

ただし、連絡をとるときには、「離婚直後だから」「シングルマザーだから」 連絡するのではなく、あくまで「子供の気になることについて保護者と連携する」という目的で連絡をする意識を忘れないこと。自分の物差しだけで判断したり、あれこれ先入観をもたないほうがいい

もちろん事実関係から子供の言動の背景を想像することは大事だし、ボクも、「もしかしてこうなんじゃないかな?」とか予想はすることはある。でも問題をよく紐解いていくと「やっぱりあの時の予想とは違っていた」という時もいっぱいある。仮説は立てるけれど、仮説はあくまで仮説であり、事実は違うことがよくあること。決めつけたり、自分の思い込みで対話するのではなく、目の前の子供や保護者の声を受け止めつつ、寄り添う姿勢が大事だと思うよ。

自分の「先入観」というフィルターを外して、子供たちやその保護者を見つめることで、だんだん分かってくることが必ずあるはずだよ。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵

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