ICT教育:低学年向けタブレット端末の基本指導

特集
備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術

コロナ禍の影響で、急速に進んでいる学校現場のICT化。教室での授業の他、家庭学習やオンライン授業など、低学年においても、活用の機会が増えています。タブレットの環境整備から子供たちへの使い方の指導、活用の具体例など、低学年向けの指導の基本を解説します。

執筆/滋賀県公立小学校教諭・田中直毅

たなか・なおき。1988年滋賀県生まれ。金沢大学理学部卒業、奈良教育大学教職大学院修了。第52回「わたしの教育記録」新採・新人賞受賞。積極的に研究会に参加し、授業力の研鑽を積んでいる。共著に『小学校ラクイチ授業プラン 低高学年』(学事出版)他がある。

低学年のタブレット指導入門

低学年でのタブレット活用

一人1台タブレットが現実となろうとしている今、低学年でも活用することが求められています。学習効果を高めるためのツールとして、タブレットの活用術を紹介します。

まず、低学年の子供には、「何をどうすることから教えたらいいのだろう」と悩まれる先生も多いと思います。そこで参考になるのが、文部科学省「情報教育の推進等に関する調査研究」で示されている「情報活用能力の体系表例」です。これは、学習者の情報活用能力を五つのステップに分け、各々でどのようなことが求められているかを体系化したものです。タブレットを本格的に使っていこうという低学年は、ステップ1にあたります。ステップ1でタブレットの操作に求められる技能(以下、タブレット技能)は、次の三つです。

  • コンピュータの起動や終了、写真撮影などの基本操作
  • 電子ファイルの呼び出しや保存
  • 画像編集・ペイント系アプリケーションの操作

キーボードを用いた文字入力や、アニメーションを駆使したプレゼンテーション資料の作成までは必要ありません。これを知っておくと、少し肩の荷が下りませんか?

また、これから日常的に活用していこうという学級では、タブレットを使用する際のルールを決めておくことが必要です。タブレットを手にした子供は目をキラキラ輝かせて取り組みますが、画面に夢中になってしまい、本来の学習活用がおろそかになってしまうからです。例えば、低学年であれば次のようなルールがいいでしょう。これは一例です。

〇ねん〇くみ「タブレットのルール」

  • もちあるくときは、はしらない。
  • つかわないときは、ふせておく。
タブレットのルール」

使いながら子供の様子を見て、一緒にルールづくりをしていくことも大切な学習です。

さらに、各々の子供のタブレットに対する状況は、家庭環境に大きく左右されます。そこで、授業で使うために必要なタブレット技能の習得が必要です。私の学級でも、家でタブレットを触ったことのない子供、タブレットを使っていてもOS(コンピュータを動かすためのソフトウェア)が違うため、学校のタブレット操作が分からない子供もいます。

ここでは、タブレット技能を習得するために1時間をたっぷりと使って指導するアイデアを紹介します。体験をともなって教えることで、着実なスキルの習得をめざします。

活動1 友達の考えと比較する

タブレットを一人1台使うことで「簡単に友達の考えと比較できる」というメリットがあります。このメリットを生かした活動を二つ紹介します。

一年生・算数

「これって何文字?」(30より大きな数)

1 活動の目的を提示

大型テレビやプロジェクターを使い、「どんぐりころころ」の歌詞を提示します。

この歌を知らない子供のことも考慮し、一度歌って雰囲気を盛り上げます。歌い終わった後に「この歌の歌詞は何文字ですか?」と尋ねると、「1、2、3……」と数える子供や「2、4、6……」と数える子供が出てきます。このように見通しをもたせてから、「この歌詞の文字数を、工夫して数えましょう」と発問します。

2 ペイントツールで考え方を書く

歌詞の書かれた画像ファイルに、印や線を付けながら数えていきます。ここではロイロノート・スクール(一人1台のタブレット環境での学習に適した授業支援クラウド。意見共有などが簡単にできる。以下、ロイロノート)のペイントツールを使用。このツールで書き込むことで、修正したいときにきれいに消せたり、同じ画像ファイルを複数枚用意しておけば、別の方法で数えたりすることもできます。タブレットを使うメリットですね。

ロイロノート ペイントツール
画面上部のペイントツール(鉛筆のアイコン)を指でタップし、ペンの種類を選べば、指先で簡単に書き込むことができる。

3 提出機能で共有する

個人で考えた方法を、教師に提出します。一人ひとりの考えを教師がスクリーンに提示し、どの考えが気にったかを尋ねると、主体的に友達の考えを理解しようとします。工夫して色を使い分けている子供に発表させることで、他の子供も説明しやすい書き方を工夫するようになるでしょう。

一人ひとりの考えを教師がスクリーンに提示

4 別の歌の歌詞の文字数を数える

ここまでの活動で、より効率的な数え方を理解したら、文字数の多い歌「ゆうやけこやけ」にも挑戦します。よりよい数え方になっていくように学級全体で考えを深めましょう。

一年生 & 二年生・国語

「登場人物の言葉を考えよう」(スイミー)

1 活動の目的を提示

「スイミー」(教育出版や東京書籍一年生・光村図書や学校図書二年生)のお話を読んで、スイミーがどのような魚なのかを話し合います。

この物語には、登場人物であるスイミーの挿絵がたくさん使われていますが、スイミーの言葉は、物語後半まで出てきません。そこで、「挿絵に吹き出しを付けて、スイミーの言った言葉を考えよう」と発問します。

2 写真に吹き出しを書く

教科書の挿絵をタブレットで撮影したものに、スイミーが言ったと思う言葉を想像して書き込みます。挿絵画像は、あらかじめ教師が撮影し、ロイロノートで子供たちに配付できるように準備しておく(送る機能を使用)と、スムーズに活動に入れます。クラスの実態に応じて、吹き出し枠を書いておいてもよいですね。そして、吹き出しの言葉は、本文を基に考えるように促します。子供の書いた作品を見て、「どの部分を読んで、この言葉だと思ったのかな」と声かけすると、本文を何度も読み返すきっかけとなります。

一つ目が早くできた子供には、他の挿絵に取り組ませることで、活動が終わっていない子供との時間差をもて余さないようにします。

3 提出機能で共有する

複数の挿絵に書き込んだ場合は、矢印で画面をつなぎ、一つにまとめてから先生に提出(提出機能を使用)。みんなの言葉を並べて、友達が本文からどのような印象を受け取ったのかを共有します。場面ごとのスイミーの言葉を並べることで、スイミーの心情の変化も読み取ることができます。

また、「簡単に友達の考えと比較できる」というメリットを生かした活動は、算数の「数の表を見て気付いたことを書き込む」授業などでも活用できます。

提出機能
表示された黄色い矢印を指で引っ張り、複数の画像をつなげると、まとめて提出できる。

活動2 持ち運べないけど、持ち寄れる

タブレット一人1台のメリットには、他にも「教室に持ち込めない物も、写真にして持ち寄れる」ということがあります。ここでは、このメリットを生かして、校舎の周りにある図形を集める活動を紹介します。

二年生・算数

「見付けたよ! こんな形」(丸と三角形と四角形)

1「まる・さんかく・しかく」の概念を確認

それぞれの図形の大体の形を確認します。学校の周りには、それらの図形がどこにあるのかを予想すると見通しが立ちますね。

2「まる・さんかく・しかく」探し&撮影

タブレットでの撮影方法を確認してから、校舎の外へ出ます。見付けた図形を撮影して回ります。そのときに、探し歩いてよい範囲を決めましょう。また、「持ち歩くときは、走らない」というルールの確認も必要ですね。

図形を見付けた子供は「ここにあったよ。見て見て〜」と、大喜びで先生を呼びますが、全員の対応はできないので、「写真を撮っておいて教室で見せてね」と声かけをすれば、先生の行動に余裕ができます。

3 提出機能で共有する

教室に戻ってから、ロイロノートを使って「まる」「さんかく」「しかく」の図形ごとに、先生のタブレットへ提出。友達の発表を通して、自分では気付かなかったところに図形が隠れていたことを発見できます。

「まる・さんかく・しかく」探し

この写真の授業では、「さんかく」は他の二つに比べ見付けにくいが、屋根に関係するところに多く使われていることに気付きました。

今回の活動のように「教室に持ち込めない物でも、写真にして持ち寄れる」というメリットを生かした活動は、他にも次のようなものがあります。一年生の生活で「通学路にある安全の工夫をしている場所を見付ける」授業(例えば、ガードレールや路面標示、標識)や、二年生の算数で「校舎の中にあるかけ算を見付ける」授業(例えば、ロッカーの数、下駄箱の数)などでも活用できます。

身近なものでタブレットに慣れよう!

1 文房具をタブレットで撮影

文房具が生きていたら、どんな姿だろう。そんなイメージをもたせて、文房具を撮影します。後にペイントツールで描き込みやすくするために、コピー用紙の上で撮影します。背景が単色のほうが色が映え、最後に大型テレビやプロジェクターで映したときに見やすくなります。

文房具をタブレットで撮影

2 ぺイントツールで顔を描く

写真にロイロノートのペイントツールで顔や手足などを描き加えます。文房具の形を生かして生き物を描くように指示します。1枚できたら、他の文房具でも挑戦。何枚でも撮影、制作できるところがタブレットのよいところですね。これを繰り返していくうちに、撮影時の焦点の合わせ方やペイントツールの新たな表現方法を習得できます。

ぺイントツールで顔を描く

3 提出機能で共有する

作った作品は、発表会で共有すると盛り上がります。ロイロノートを使うと、描いた作品をまとめて先生のタブレットに提出できるのでおすすめ。また、作品を並べることもできるので、友達の作品を見て「もっとやりたい!」と思えば、先生の思惑通りですね。

学級で育てている野菜や、校舎内のそうじ道具などにも発展できるので、さまざまな教材にアレンジしてください。

イラスト/コダシマアコ

『教育技術 小一小二』2020年12月号より

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