もう通知表やめませんか?教師の負担を減らすための提言
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コロナ禍の中、一学期の評価をどうすべきか? 【新型コロナ緊急アンケート結果】今教師が抱えている不安と困惑の本音からも、現場教師の疑問が見えてきます。通知表を出すか出さないかは学校が判断できるものであり、出すとしても所見文を書く頻度を減らすという方法があります。
こんな時だからこそ、学校で話し合ってみませんか? 通知表所見に苦しむ現場教師を多く見てきた指導主事からの提言です。
執筆/神奈川県立総合教育センター主幹兼指導主事・鈴木夏來

目次
「いわゆる通知表」に発行の義務はない
まず、大前提として押さえておきたいことがあります。
国(文部科学省)が言う「評価」とは、「指導要録における総括的評価」のこと。小学校教員が気にする一学期の評価とは、大きなズレがあります。
「一学期中に成績処理を行い、それを反映させた通知表を発行せよ」
と、国が言っているわけではありません。それぞれの学校が良かれと思って、やっているだけのことなのです。
本稿の主張は次の通りです。
「いわゆる通知表」は、発行する義務がない。学校が任意で出すものである。
今回のコロナ禍は、これまでの「通知表」の在り方を見直す機会。
それでも出すのであれば、所見欄や評価箇所を斜線(/)や※印で対応することも検討すべき。
各学校で配付している「いわゆる通知表」は、公式文書である「指導要録」とは異なり、実は、国が配付を義務づけているものではありません。多くの学校が「子どものため」と任意で出しています。
極端に言えば、「通知表を出さない」ことも可能なのです。
私は業務上、評価や通知表の話をする機会が多々あります。「通知表は任意」であることを知らない校長・教頭、指導主事、保護者、有識者がまだ多くいらっしゃるのが現状です。出すことが当たり前だと思っているから、疑ってみたこともないのかもしれません。
いわゆる通知表は、「通信簿」「あゆみ」「○小っ子」など、学校独自の呼び方があります。各校が独自に出すものなので、呼び方から表記や形式まで異なります。
そして事実、出さないことに決めている学校もあります。
今回のコロナ禍で、「通知表を出さない」と決める学校は、ますます増えてくることが予想されます。
たとえば現在、京都市の市立小中学校では、一学期の通知表を発行しないことを市の教育委員会が決定しています(もちろん学校任意であり、書式や形式も違うのですから、出す・出さないを市町村単位で揃える必要はありません)。
教育課程の編成は国や教育委員会が行うものではありません。学校が独自に編成します。同様に、通知表の発行も国や教育委員会が決めるのではありません。学校が独自に判断していいことなのです。
指導要録の改善を通知表のそれと受け取る
そうは言っても、何らかの指針がなければ、学校は動くに動けないと思うかもしれません。
そこで、一つヒントになるものがあります。
文部科学省が示している「学習評価及び指導要録の改善等について」の通知です。
文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成31年3月)
これを、通知表に関するメッセージとして受け取ることが可能です。
以下、読み解いていきましょう。
総合所見等の枠の大きさが小さく
まず、指導要録の見本を見て、すぐに気づくことがあります。
総合所見等の枠の大きさが、目に見えて小さくなりました。旧指導要録と新指導要録を比較してみれば一目瞭然。(なお、旧指導要録見本は、文部科学省ホームページには、もう載っていません)。
旧指導要録は、紙面いっぱいに引き伸ばしているといいますか、とにかく枠が大きいのが特徴的です。一方、新指導要録は、紙面の下のほうに余白があります。
これは、「紙面いっぱい書かなくてもよい」という文部科学省のメッセージだと受け取ることができます。
要録と共通様式にすることを提案
では実際に、見本のサイズに文字を入れて考察してみましょう。
「要点を箇条書きとするなど、その記載事項を必要最小限にとどめる」としています。
スペースで換算すると、
- 旧指導要録は10行前後を段落表記
- 新指導要録では箇条書きで3行程度
となります。
そして、学校が「いわゆる通知表」を出すのであれば、“要録と共通様式にしてみてはどうですか?”と提案しています。
所見欄を書くにしても、3行程度の箇条書きにしてみてはどうですか?というメッセージであると読み解けます。
学期ごとでなくてよい
「学期ごとの文章記述が大変だ」という声があります。
総合所見欄以外にも、生活科、総合的な学習、外国語・外国語活動等がありますが、これらについても「学期ごとにではなく年間を通じた学習状況をまとめて記載」とあります。
学期ごとに年3回も書く必要はないと文部科学省が言っているのです。
実際、神奈川県内の公立小学校では、一~二学期の文章表記欄を斜線にする学校が増えてきています。
上記はコロナ禍より前の例ですが、今後も増えることが予想されます。